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はるばる来たぜマクリアへ

 俺たちは移動を終えて、カレンの故郷にやってきた。


 彼女の風魔術を応用したアイデアは画期的だと感じた。

 しかし、まだ実用性に問題がある。


 百メートル以上地上から離れたところを進んできたので、とても寒かった。

 それに風除けがないことで、風が直接当たり続けた。


 快適性はいまいちだが、馬よりも何倍も速いのは評価できるだろう。


 飛行中にずいぶん進んだらしく、彼女の故郷は見知らぬところだった。

 途中から目を開けられなかったので、どれぐらい進んだのか正確には分からない。


「ああっ、寒い。とんでもない速さで移動してたから、相当進みましたよね」


 シモンが肩を震わせながらいった。


「興味深い魔術だったね。また運んでもらいたいよ」


 クラウスはアンコールをお望みのようだが、俺はご免だ。


 寒さも落ち着いたところで、街の様子を眺めた。

 中心に集会場か何かの大きめの建物があり、その周りに広がる道がいくつかの方向へ伸びている。


 素朴な作りの民家、小さい商店や食堂。

 そこまで人口が多いように見えなかった。


「ようこそ、マクリアへ。フォンスやウィリデとは交流がありませんから、あなたたちが初めて来たことになります」


 カレンはにこりと微笑んでいった。


 行動がところどころアバウトなので、適当に的を絞ってフォンスに下りてみて、そこからウィリデにたどり着いたみたいな感じだと予想した。


「とりあえず、町長とか村長的な人に会った方がいいですかね?」

「私に一任されているので、特にそういったことは必要ありません」


 とりあえず、手間がかからなくていいか。

 そもそも、まずは偉い人に挨拶って日本人っぽい考え方だよな。


 ドラゴンについての情報をもう少し知りたいところだが、この街の勝手が分からないので、カレンの指示を待つことにしよう。


「すぐにでも向かいたいところですが、私と皆さんで一つの手順を踏みたいと思います」

「えーと、一体何を?」

「ドラゴンが眠るのはここから少し離れたところにある山の頂上です。上空から向かってもいいですが、実力が足りなければ返り討ちにあうだけです。道中の魔獣が強力なので、まずはそこで腕試しをしましょう」


 おそらく、RPGでいうところの強いモンスターが出る場所みたいな感じか。

 

 そこでやれるようならドラゴンとも互角に戦える、そういうことだろう。

 魔術の実力を試したかったところなので、望むところだ。


「自信を持っておれたちを選んだと思ってましたけど?」


 シモンが自然な様子でカレンにたずねた。


「私の目に狂いはないと思っています。ただ、失敗することは皆さんの命が失われることと直結するので、万全を期したいのです」

「うれしいこと言ってくれるじゃないですか」


 シモンは実力を認められたことにご満悦のようだ。


「当たり前ですけど、ドラゴン相手だから命がけですよね……」


 今更ながら何だか怖くなってきた。


「大丈夫です。命に危険が及びそうになったら、風の魔術で逃げます」

「へえっ、仕切り直し可能なんですね」

「はい、ドラゴンが完全に目覚める前なら」

「なるほど、条件付きっと」

「完全に目覚めてしまえば、逃げ切ることは不可能みたいです」


 カレンはさもそれが当たり前のことのようにいった。

 それは、けっこう深刻なことだと思うが。


「そんなの関係ありません。倒せばいいってもんです」


 シモンは話の流れを無視するように笑い飛ばした。

 一方のクラウスは何かを考えているようで黙っている。


「クラウスは心配にならないんですか?」

「うーん、心配はないけど、気になってることがあって……」


 珍しく歯切れが悪いと思っていると、カレンが彼の様子に気づいた。

 

「もしかして、何かお困りですか?」

「戦って眠りに戻すのは分かったけど、血を抜くにはどうしたらいいかと思って」

「ドラゴンの血ですか? 例えば、カナタの氷魔術で動きを止めて、その間にナイフか何かで傷をつける方法は可能なはずです」

「鱗はそんなに丈夫じゃないかな。普通の刃物じゃ通らないとか」

「それはないと思います。ご心配でしたら私も手伝います」


 カレンは親しみを感じる様子でいった。


 即席の質疑応答が終わると、早速モンスターのいるところへ向かうことになった。


次話から強力なモンスターと戦いますが、はたして彼らの実力は通用するのでしょうか。

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