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アイエル様の最強執事 ~魔道を極めた元殺し屋は、それでもお嬢様の執事です~  作者: にぃ!
第三章 メルトレス帝国学院 入学編
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第七十七話「シュエの軌跡 フリッツ司祭と皇国学 後編」


「話が逸れましたが、この国の近隣諸国についてお話しましょう」


 フリッツ司祭様は咳払いを一つすると、本来の流れに話を戻す。


「今、シュエ様の居られるこの皇国の北には、十九の小国が連合を組み、西方連合国として一つの巨大国家を形成しており、それぞれの国がそれぞれの代表を決め、議会を持ちまわって国家連合を形成している新しい国家です。 そして、この皇国の東の地にはドゥール王国。 ここがシュエ様のご両親のご出身国だと聞き及んでおります。 そして南東には二大帝国の一国、サンチェリスタ帝国が隣接しており、それぞれの国家共に、我が皇国は友好関係にあります。 これもシュトレーゼ神のお導きの賜物でしょう。

 後は西と南に海が広がるだけですので、隣接した国は以上になります」


 小国の大連合国が北にあって、南東には二大帝国の一つが面しているっと……

 

「フリッツ司祭様、何故シュトレーゼ皇国は他国からの侵攻を受けないのです? 大国に挟まれているのに、隣のドゥール王国も……」

「それには我らが国教、シュトレーゼ神教があるからに他なりません。 この地は先代勇者様が降臨された神聖なる地。 西方連合国にもサンチェリスタ帝国にも一定数の信者が居ります。 彼らがその様な事を許さないのです」


 宗教の力恐るべし……


「では問題です。 我らシュトレーゼ神教の他に、いくつの教派があるかご存知ですか?」


 いきなりの質問に、私はこれまで読んできた本の記憶を掘り起こす。 しかし、宗教的な事が書かれて居た本に心当たりは無かった。 私は正直に答える。


「えっと… 知らないですね……」

「ではご説明致しましょう。 この世界には大きく分けて三つの教派が存在します。 その一つが我らが信仰するシュトレーゼ神を絶対神とし、それ以外の神はそのシュトレーゼ神から力を授かったに過ぎない、いわば神の使いと定義する、唯一シュトレーゼ神のみを信仰する教派。

 そして二つ目はその神の使いも神と認め、絶対神をデウスとし、幾多の神々を崇める、戒律も何もない、ただ御伽噺として、漠然と信仰する教派。 敷居が低い事もあり、もっとも信仰されている教派です。

 そして三つ目は我らが魔王と呼び、シュトレーゼ神に力を授かりながら、この世界の神になり替わろうとした、魔王を絶対神と崇め、その邪神を封印したシュトレーゼ神とその使徒を、邪なるモノと定義し、我々と対立する教派です。 勿論事細かく言えば、他にも大小、様々な教派は存在しますが、他は知る必要は無いでしょう」


 なんか世界は違えど、どこの世界も似たようなもんなんだね……


「それで、魔王を絶対神とする教派は、何故自らを滅ぼしかねない魔王を神と崇めるんです? 私には理解できないのですが……」


 私は素直に疑問を投げ掛けた。


「これには、我々が扱う魔術に関連しています。

 元々我らがシュトレーゼ神が与えた奇跡の力は、マナを使って人々を豊かにする為だけの、簡単な魔術に過ぎませんでした。

 生活魔術と呼ばれるものが、それに当たります。 そして人々が、与えた力以上に力を行使できない様、世界のマナを管理しする為に、魔を司る使いをこの地に使わしたのです。

 ですが、管理するはずの魔を司るモノは、魔術こそが人類の繁栄に必要な物として、戦う為の魔術や、神の所業とも呼べる自然を操る魔術を、シュトレーゼ神の意向に従わず、勝手に教え広めて行きました。 それが切欠で、次第に人々から信仰の力を得た魔の司るモノは、神を自称し、己が眷属を増やし、自らを主とする、邪神の教派が誕生したのです」


 確かに、目に見える力は、人にとってとても魅力的に写る。 私がかつて、先輩の力に魅せられた時見たいに、その力が人々を魅了し、一つの大きな組織となっても不思議ではない。


「なんか、納得しちゃいました」


 フリッツ司祭様はそんな私に、その話しを前提として忠告をする。


「シュエ様、そう言った経緯があり、勇者様であられるシュエ様を良く思わない者達も居ます。 最悪命を狙われる危険もありますので、一人での外出は控えて頂きたいのです」


 この話しを初めにしたのは、私にその危険性を教える為だったのかな? 勇者となった今、私はその言葉に素直に従う事にした。


「分かりました司祭様。 忠告、有り難う御座います」


 ◆


 それから私は他にも、色々とフリッツ司祭様から教わった。

 中でも、女神レーゼからのヒントにあった、帝国についての話しは、特に興味がそそられた。

 なんと、この皇国にはない、メルトレス帝国学院と言う、子供達が通う学校が存在していたから何だけど、なんでも魔法も教えてくれる由緒正しい学院なんだって。

 思わずハリー◯ッターを思い浮かべてテンションが上がってしまった。

 女神レーゼのヒントの件もあるし、私はその学院を目指す事に決めた。


「あの…… フリッツ司祭様、私が学院に通う事って可能なんですか?」


 私の質問に、フリッツ司祭様は淡々と答える。


「学院は実力主義と聞き及んでおります。 確か入学には、試験があったかと思います。 そこで実力を示せば学院に通う事は可能でしょう。 ですが、シュエ様はわざわざ学院等に入学せずとも、我々がお教え致しますので、ご安心下さい」


 私はただ、学院に興味があるだけなんだけどなぁ…… 教会としては私を側に置いておきたいだろうけど…… お父さんとお母さんの事もあるし、今はその時じゃないかな……


 そして、その日はフリッツ司祭様の授業が終わり、何事もなく夕食を済ませて就寝したのだった。


 ◆


 翌朝、私は誰に起こされる事なく、日の出と共に起床した。

 朝の澄んだ空気が、大聖堂を包む。 こんな早朝から起きるなんて、前世での剣術の稽古以来だから、何だか不思議な気分。 稽古って言うだけで、身体が勝手に目が覚めてしまった。

 私は自室の窓を開け、外の空気を取り入れる。 ひんやりとした風が頬を撫で、気持ちいい。

 窓の音で私の気配を察したのか、部屋の外に待機していた護衛の騎士が、部屋の扉をノックして、扉越しに私の様子を伺う。


「シュエ様、おはよう御座います。 お目覚めですか?」


 私は慌てて返事を返す。


「あ、はい。 おはよう御座います。 見張り、ご苦労様です」

「お心遣い、有り難う御座います。 今、騎士長と世話人を呼びに行かせます」


 護衛の騎士がそう答えると、慌てて駆け去る足音が聞こえる。


「今しばらくお待ち下さい」


 残った騎士はそう言うと、静かに任務に戻る。 私は特にする事も無いので、取り敢えずウォークインクローゼットで適当に服を身繕い、朝の訓練がしやすい、動きやすい服に着替える。

 昨日寝間着に着替えた時にも思ったけど、わざわざ私の為に、いつの間にか大量の衣装が用意されていて、最初に見た時よりもクローゼットが充実している…… いったいいつの間に用意したんだろう。

 私が着替え終わって暫くすると、ラフィーク、プリムラ、セレソの三人が、慌てて私の部屋へと駆け付けた。 そんなに慌てなくても良いのに…

部屋の扉がノックされ、扉越しにプリムラの声がする。


「シュエ様、お目覚めと聞き、今参りました。 お着替えを用意致しますので入室しても宜しいですか?」

「あ、えっと、どうぞ……」


 私の返事を待って、プリムラとセレソが入室する。 ラフィークは空気を読んで、部屋の外で待機してるみたい。


「「失礼します…」」


 そして、私が着替えを済ませている事に気付き、二人揃って「「ぁあ!」」と声をあげ、「着替えられてたのですね……」とセレソが残念そうに、悲しそうな表情を浮かべる。


「あ、ごめんなさい。 待ってる間、暇だったので、つい……」

「いえ、私達がシュエ様が目覚められる前に、準備して居なかったのがいけないんです……」

「明日はシュエ様よりも早く起きて準備します」


 そう言って意気込むプリムラとセレソ。 なんか、そこまでしてもらわなくても良いのに…


「あの、二人共。 無理はしなくて大丈夫なので… たまたま目が覚めちゃっただけだから」

「そうは行きません!」

「シュエ様の身の回りの世話が、私達の生き甲斐なんですから」


 何その生き甲斐…… もっと他にあると思う。 それに、そんなに無理して私に合わせられたら、私の方が気を使ってしまう。


「あの、本当に無理しなくて良いので…… それで二人に倒れられたりしたら困りますし……」

「シュエ様は気になさらないで下さい。 それが私達の役目ですから」


 なんかこのままだと本当に、毎朝私が起きるのを睡眠時間を削ってでも二人は待っていそう。 もういっその事、二人を部屋に泊めておいた方が、良いんじゃないかと思えてきた……


「分かりました。 今度から二人がここで寝泊まり出来るよう、フリッツ司祭様に提案してみます」

「いえ! そんな恐れ多い事。 私達はシュエ様のお世話ができるだけで幸せなんです」

「これ以上は罰が当たってしまいます」


 プリムラとセレソは慌てて辞退する。 

 

「二人は私と一緒が嫌なの?」

「滅相もないです!」

「むしろ、シュエ様の寝顔を見れるなんて、願ったり叶ったりで……」


 私は聞いてはいけない、プリムラの本音を聞いてしまったのかも知れない…… プリムラがハッとして口を押さえてるがもう遅い。


「じゃあ決まりね。 私も二人の寝顔を楽しもうかなぁ」


 冗談っぽく言うと、二人は顔を真っ赤にしていた。

 中の会話が聞こえて居たのか、ラフィークが扉をノックして話しに割って入る。


「あの、シュエ様…… 準備が出来ていらっしゃるなら、そろそろ朝の訓練を始めたいのですが……」

「あ、そうだ。 ラフィークも一緒に寝る?」

「お許し頂けるのなら是非……」


 私の冗談を、苦笑いしながら冗談で返すラフィーク。 これが大人の余裕と言うやつですか…… プリムラとセレソが、その話しを真に受けて、「男の人と?」と、四人一緒に寝るのを想像して、顔を真っ赤にしている。


「変態…… 教皇様に言い付けてやる」

「シュエ様?!」


 私の言葉に、ラフィークは慌てて声をあげる。


「そ… それだけはご勘弁を!」


 どうやら私の方が上手だったみたいだ。 図らずしてラフィークの弱みを握ってしまった。 大人の余裕なんて見せて、私達をからかうからいけない。


「じゃあ貸し一つね」

「シュエ様には敵わないですね……」


 ラフィークは苦笑いしながら了承した。

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