第六十話「剣術試験 後編」
放置していたツイッター復活させました。
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久々すぎて使い方忘れた。
「では行ってくるのじゃ」
そう言って軽快に前へ出ようとするセシラ様。
「くれぐれも目立たない様に手を抜いてくださいね」
「分かっておるのじゃ」
僕の言葉に笑顔で返しながら木剣を手に前へと出る。 僕達と一緒に居る事からグローリア家に関係があると思われたのだろうか、相手はまた騎士団長さんだった。
「セシラじゃ。 宜しくなのじゃ」
セシラ様はそう言うと他の者たちの真似をして木剣を構える。
木剣を持ち替えた騎士団長さんは、僕達と一緒にいるセシラ様を警戒して、しっかりと構える。 しかし、セシラ様は言っても剣術素人だ。 その構えは隙だらけで、とても強そうには見えない。
「剣術は素人か?」
「うむ、今日初めて剣とやらを握ったのじゃ」
その言葉に安心したのか、騎士団長さんは警戒を緩める。
「分かった。 胸を借りるつもりできなさい」
「そうさせてもらうのじゃ」
準備が整った事を確認した試験官が、再び「始め!」の合図を送る。
セシラ様は「それでは行くのじゃ!」と気合を入れて木剣を振り抜いた。 型も何もないただのスイングだ。 騎士団長さんはそれを危なげなく木剣で受け止める。 しかし、手を抜いているとは言え、セシラ様の正体は龍神だ。 人がその力を受け止めきれるはずもない。 まして身体強化もしていない油断した状態では、力負けするのは当然と言えた。
騎士団長は自分が受けた木剣に押し込まれ、身体が浮く。 そしてセシラ様が振り抜いた勢いそのままに、なす術なく身体ごと防壁へと吹き飛ばされた。
流石に誰もこの事態を想定していなかったのだろう。 一瞬の出来事に何が起こったのかわかっていない見たいだ。
轟音と共に防壁に激突して意識を失う騎士団長さん。 完全にこれダメなやつだ… 皆の視線がセシラ様に集まり、今まさに手合わせしてる受験生達も騎士達も手を止め、その光景を唖然として見つめている。
「うむ、ちぃーと力を入れすぎたかのぉ…」
そう言ってセシラ様は頭を掻く。
「セシラすごい! やっつけちゃった」
楽しそうに喜ぶアイエル様。 問題はそこじゃないんですが…
慌てて騎士団長さんに駆け寄る試験官達。 魔術の女性試験官は治療魔術を発動させて応急処置を行っている。 そんな空気を無視してセシラ様は呟く。
「妾はもう良いのかの?」
その呟きが聞こえたのか、男性試験官は列に戻るように告げる。
「あ… ああ。 合格だ。 列に戻りたまえ」
試験官、思わず合格とか言っちゃってるよ… 良いのかそれで…
それから騎士団長さんは担架に乗せられ、皆に見送られながら医務室に運ばれていく。 後でセシラ様を連れて謝罪に行った方が良いだろう。
場が落ち着いた所で、試験官は手を止めていた騎士と受験生に続ける様に言う。 そしてその組みの手合わせが終わると、いよいよアイエル様の番となった。
「どうしようロゼ! 私の番がきちゃった」
少し取り乱した様に急にオロオロとしだすアイエル様。
「頑張って来てくださいね」
「ロゼも一緒に来て。 ダメ?」
今まで平気だったのに、こと人前に出るとなると、尻込みしてしまうアイエル様。 相変わらず人に見られるのが苦手の様だ。 本人の気付いてない所で結構見られてたりするんだけど、いい加減この人見知りする性格は、なんとかしないといけないかも知れない。
「アイエル様。 僕は一緒には行けませんよ。 それでは試験になりませんから」
「むぅうう…」
「ほら、木剣を持って前に出てください」
「ロゼのいじわる」
半泣きで訴えかけるアイエル様。 何時もならここで助け船を出すところだが、今回ばかりはそうは行かない。
「今のアイエル様の姿を、イリナ先生が見たらどう思うでしょうね。 せっかくお墨付きを出したのに、ここで逃げ出したなんて知ったら、イリナ先生は悲しんでしまうかも知れないですね」
「うぅ… それはヤダ…」
「では勇気を振り絞って行ってきてください。 クロは僕が預かってますので」
アイエル様は僕にそう言われ、しぶしぶ木剣を持って前に出る。
「全員そろったな。 それでは始め!」
アイエル様の相手は騎士団長が退場した事で、部下の騎士が務める事になった。
「よ… 宜しく… です」
上目遣いで恥ずかしそうにそう言うアイエル様。 構えすら取ってない。
アイエル様は剣術は得意ではないので、少しでも善戦できると良いのだが…
相手の騎士は、急遽アイエル様と模擬戦をする事になり、どう対応していいか分からず「あ… ああ…」と呟くように答えると「さぁ、 構えなさい」と促す。
アイエル様はコクリと頷くと木剣を構えてじっと騎士を見つめた。
相手騎士は、アイエル様のその神秘的な目に見つめられ息を呑む。 そしてアイエル様は木剣を振り上げて騎士に斬りかかった。
相手騎士はその型もなにもない切り込みと、アイエル様の容姿に気を抜き、軽く受け止めるつもりで木剣で受け止めようとしたのだが、アイエル様は振りぬく直前で木剣をすっぽ抜かし、手から放してしまう。
騎士は受け止めるはずだった剣が宙を舞った事で受け止める事が出来ず、油断していた騎士の顔面に思いっきり木剣が突き刺さった。
アイエル様は目がバツの字になりそうな程、必死に目を瞑って振りぬいて居たので、自分の手に木剣がない事に気付いて困惑する。
「ふぇ?」
相手騎士は顔面に木剣が直撃した事で意識が跳び、そのまま後ろに倒れてしまう。
状況が理解できずオロオロするアイエル様。
騎士団長に続き、二人目の医務室送りに、他の受験生から何者なんだと注目が集まる。 最初から見ていた人は偶然の出来事だと認識しているが、その場を見ていなかった人たちは状況的にアイエル様が騎士を倒した様に映ったのだろう。
アイエル様は皆に見られて恥ずかしいのか、顔を伏して真っ赤になっている。 可愛いなぁアイエル様は… アイエル様は試験官に必死の涙目で戻って良い? と視線で訴えている。 多分、僕以外にそれが通じるとは思えないんですが…
僕は仕方なく試験官に提言する。
「試験官の先生、アイエル様はもう宜しいのでしょうか?」
試験官も一瞬の出来事で、状況をちゃんと把握していなかったのか、僕の言葉に「ああ、戻っていいぞ」とアイエル様に告げる。
アイエル様はそそくさと僕達の元へと戻って来た。
それでも皆の視線がアイエル様に突き刺さるので、凄く居心地が悪そうだ。
そして、それからは何事もなく、他の受験生達の手合わせが全て終わった。
「剣術の試験はこれで終わりだ。 次は魔術の試験に移る。 剣術の試験で思わしくない成績であっても落ち込まず、魔術の試験で取り返せば十分合格できる。 精一杯挑んで欲しい」
剣術の試験官がそう言うと、今度は魔術の女性試験官がその言葉を引き継いで説明を始める。
「それでは皆、これから魔術の試験を始めます。 少し的の前まで移動しますよ」
そう言うと同じ訓練場内にある、的が設置されたエリアに受験生達を誘導する。
「これから貴方達には、今自分ができるもっとも得意な魔術を見せてもらいます。
あの的に向けて全力で魔術を使用してください」
魔術の試験官の言葉に、受験生達は「「「「はい!」」」」と返事を返す。
さぁいよいよ魔術の実技試験だ。 今度は何事も起こらない事を祈りたい。 そう思いながらセシラ様と、未だに真っ赤にして顔を伏せるアイエル様を見つめ、無理だろうな… と思い、僕は溜め息を漏らした。




