第四十四話「闘技場での闘い」
ブックマーク有難う御座います。
そろそろ第二章も終盤に向けてラストスパートと言った所です。
文字数も20万字突破し、PVも50000を突破ました。 有難う御座います。
まだまだ至らない点が多々あるかと思いますが、今後とも宜しくお願いします。
◆
僕とアイエル様は、高位竜ヴィオルに連れられて、竜達が闘うに相応しい、立派な闘技場へと連れて来られた。
闘技場は、竜達が闘うのに狭く無いよう、かなりの広さがある。
観客席もビックサイズで、そこに色とりどり、サイズも大小まばらな竜達が犇めいていた。
アイエル様はそんな闘技場に「わぁー」と目を輝かせて声を漏らす。
「ねぇーねぇロゼ。 凄くおっきい!」
「はい。 凄く広いしおっきいですね」
僕はそんなアイエル様に笑顔でそう返す。
そんな僕達に高位竜ヴィオルは言う。
「お主達ににはこの闘技場で力を示して貰う事になる。 どうだ? すごいだろ」
「はい。 もっと簡易的な場所だと思ってました」
「我等の唯一の娯楽だからな。 竜王様も心血を注がれたのだ。 さぁ、お主達は受付があるから、そのまま我に着いて来い」
「分かりました」
僕とアイエル様は高位竜ヴィオルと共に、出場の手続きを済ませ、控え室で出番を待った。
◆
控え室で待って居ると、羽の無い小型の地竜が僕達を呼びに来た。 どうやら出番の様だ。 小型の地竜に案内されるがまま、僕とアイエル様は闘技場のゲートから、中央へと案内される。
会場からは盛大な歓声とも罵倒とも取れる、竜達の雄叫びが木霊する。 僕達には何を言ってるか分からないが、恐らくこの場に似つかわしくない僕達の登場に驚いて居るのだろう。
どうやら審判らしき中型の翼竜が、何やら会場に向けて何かを言っている。 恐らく僕達を紹介しているのだろう…
そして反対側のゲートから、黒光りする見た目強そうな翼竜が登場すると、会場の歓声が更に響き渡った。
その翼竜は地響きを立てながら僕達の前まで歩み寄ると、高位の竜なのか僕達に合わせて人族の言葉で語りかけて来た。
「おうおう、今日の獲物は人族のガキ二人か…
なんで人族のガキがこんな所に居るのか知らねぇが、死にたくなかったらさっさと引っ込みな」
そう言ってその高位竜は口からブレスを漏らし、僕達を威嚇する。 言動や会場の空気から察するに、それなりの実力のある高位竜なのだろう。 高位竜は終始僕達に殺気を向けている。
僕はその殺気を軽く受け流し、礼儀正しく礼を返す。
「これはご丁寧にご忠告頂き、有り難う御座います。 ですが、僕達も目的があってこの場に立たせて頂いてます。 どうぞお気になさらず」
「ガキ… どうやら死にたいらしいな…」
そう言うと、高位竜は更に殺気を強める。
アイエル様も流石殺気に当てられ、怖かったのか僕の後ろに身を隠す。 ちょっとアイエル様が怖がってるので止めてもらえますか? いくら高位の竜とは言え、ちょっとやり過ぎです。
僕はそんな高位竜に怒りを覚え、笑顔でその言葉に返す。
「死ぬ気はないですけどね… まぁ、殺す気で来られるなら、僕もそのつもりで行きますので、死んでも恨まないで下さいね」
そして、高位竜発する殺気を上回る殺気を高位竜に向ける。 久々に本気の殺気を向けたので、高位竜背後に居た観覧席の竜達まで黙らせてしまった。
高位竜が息を飲むのが分かる。
「おいガキ… てめぇ、ただのガキじゃねぇな…」
高位竜は、僕から実力を感じ取ったのか、冷や汗を流しながらもそう言う。
「いえいえ、僕なんてまだまだです。
お互いに悔いを残さぬ様、全力で戦い合いましょう」
僕が笑顔でそう言うと、高位竜は身構える。
「良いだろう、おもしれぇ… さぁお前も武器を抜きやがれ」
高位竜は言いながら爪と牙を剥き出しにする。
その言葉に甘えて、僕はマナを操作し、両手にマナの拳銃を生成する。 何もない空間から現れた、光り輝く見たこともない武器に、高位竜も客席の竜達も目を見開いた。
「何だそれは? 武器… なのか?」
「ええ、僕がオリジナル魔術で造り出した、銃と言う武器です。 当たったら死ぬかも知れないんで、気を付けて下さいね」
僕はそう言って高位竜に忠告する。
「……まぁ良い… ガキ、覚悟は良いな」
「何時でもどうぞ」
僕はアイエル様を庇いながらも、笑顔で高位竜にそう答える。
高位竜は審判と思わしき中型の翼竜に何かを伝えると、中型の翼竜は何かを叫ぶと空高く舞い上がって僕達から距離を取った。
「では行くぞ!」
高位竜はそう言って殺気を放ち、咆哮を上げると容赦のないブレス攻撃を僕達に向けて放った。
僕は結界を多重に張り重ね、高位竜のブレスを迎え撃つ。 このまま怯えたアイエル様に結界を張らせるのは不安が残る。 案の定僕が生成した多重結界の何枚かは貫かれ、飛竜とは比較にならない程の威力を誇っていた。
流石に高位竜も自らのブレス攻撃をこうもあっさりと防がれるとは思って居なかったのか、信じられない目で吹き飛んだ地面の中に立つ僕達を見つめる。
今の一撃で勝負を決めるつもりだったのだろう。 僕はそんな高位竜にお返しとばかりに言葉を返す。
「今度は僕の番ですね」
僕は笑顔で銃口を高位竜に向け、容赦なく発砲した。
小手調べのつもりで放った銃弾は、視認する事を許さず高位竜のその立派な角を吹き飛ばして見せた。
一番硬そうな所を狙って撃ったのに、あっさりと貫いてしまった。 どうやらこのマナ銃は思ってたよりも高威力な様だ。 今後人に向けて放つ時は力を制御しないと跡形も無く吹き飛ばしてしまいそうだ…
僕のその攻撃の威力に驚いた高位竜は、慌てて翼をはためかせて空へと避難し、そして僕に叫び聞く。
「なっ… なんなのだ、その武器は!」
「さっき説明したじゃないですか… 銃と言う武器ですよ」
「そうじゃない! どこでそんな武器を手に入れた!」
「これは僕がマナで作り出したオリジナルの魔術武器です。 それから空に逃げたところでこの武器は遠距離武器なので意味ないですよ?」
僕の説明に、焦った様に取り乱す高位竜。
「ひっ 卑怯だぞ!」
「空を飛んで逃げておいて卑怯と言われましても…」
僕は溜め息をつくと、アイエル様に魔術を見せてあげる様に促す。
「アイエル様、大丈夫ですか? できればアイエル様の実力も他の竜達に見せ付けてあげたいのですが…」
アイエル様は僕の袖を掴みながらもコクリと頷く。
「ごめんねロゼ… 凄く怖くて動けなかった…」
「いえ、あれだけの殺気を始めて浴びたのです。 動けなくなっても仕方ありませんよ」
そう言って優しく頭を撫でてあげる。
「アイエル様、あの高位竜に全力の一撃を叩き込んであげてください」
「うん、解った…」
アイエル様は頷くと、上空に退避してこちらの様子を覗う高位竜に向け、膨大なマナを操作して魔術を発動させる。
空中には幾本もの巨大な氷の杭が浮かび上がり、高位竜を取り囲んだ。
その数ざっと見積もっても千本くらいはありそうだ。 どれも鋭く尖った尖端を、高位竜へと向けて居る。 高位竜は自分を取り囲む氷の杭の多さに焦りを覚え、息を吸い込みブレスの準備する。 ブレスで迎え撃つつもりなのだろう。
アイエル様はそんな高位竜を気にする事なく、浮かべた千本の氷の杭を一斉に高位竜目掛けて放った。
アイエル様が放った魔術は特急魔術のイムベル・スティーリアと言う氷柱の攻撃魔術だ。 ただの氷柱と違い、高い貫通力を誇る氷魔術で、氷の尖端がマナによって強化されている、非常に制御の難しい魔術だ。
高位竜はブレスを吐き、その氷の一部を吹き飛ばし回避を試みるが、全方位から氷の杭が飛来し、溶かしきれなかった氷の杭が次々と高位竜に襲い掛かる。
高位竜は硬い鱗に覆われているが、強化された氷の尖端はその鱗を貫くには十分な威力を誇っていた。
血を流しながらもなんとか耐え忍んだ高位竜は、そんな僕達に呟いた。
「ココまでコケにされるとはな… くそガキどもが…」
そう言いながらも目は血走り、戦意は失っていない様だ。
そして、高位竜の身体が光ったかと思うと、アイエル様の特急魔術で傷ついた傷口が、見る見るうちに治って行く。 流石高位竜と言った所か… 自己再生能力も持っているみたいだ。
「二人掛かりで遠距離攻撃とは卑怯な…」
高位竜はそう言って愚痴をこぼす。 て言うか、自分の事を棚に上げて良く言えたものだ…
「そうですね… 開始早々遠距離からブレス攻撃して、状況が不利になった途端、人族が空を飛べない事を良いことに、本気で空に逃げて言う台詞ではないですね…」
「うるせぇ!」
僕は溜め息をつき、「解りました」と高位竜に告げると、銃身から刀の刀身をマナで生成し、拳銃から銃剣へと形状を変化させる。
「遠距離が卑怯だと言うのなら、今から近接戦闘でお相手しましょう」
そう言うと僕はアイエル様に全力で結界を張って待機する様に告げる。
「アイエル様、全力で結界を張ってここで待っててもらえますか?」
「私は戦っちゃ駄目なの?」
「二人掛りだと、負けた時の言い訳にされそうなので、ここは僕に任せてください」
僕がそう言って説明すると、アイエル様は「解った…」と頷いて自身の周りに結界を構築して行く。
僕はそれを確認すると高位竜に向き直り、剣を構えて言葉を投げかけた。
「高位竜さん、お望み通り一対一の勝負です。 僕はこの剣のみで戦いましょう」
「ふざけやがって…」
「あと、人間が皆空を飛べないと思わない方が良いですよ。 これは忠告です」
僕はそう言うとゆっくりと空へと舞い上がった。
あえて空中と言う高位竜のアドバンテージを潰す為の演出のつもりだったのだが、浮き上がった僕を見て高位竜は焦りを露にした。
「き… 貴様! 本当に人族か!」
「失礼な、これでもまだまだ修行中の執事にすぎないんですよ」
そう言うと僕は一気に高位竜との間合いを詰めて、銃剣で斬りかかる。
高位竜は爪を強化して僕のその剣戟を受け流し、攻撃に転じる。
しかし僕はその攻撃をかるく回避し、高位竜の身体に傷を確実に刻んでいく。 接近戦になった所で体格の差は僕に有利に働く。 だって相手は大きな的にすぎないのだから… 逆に僕の小さな体は相手からすると狙いを定めにくいはずだ。 確かに一撃は重たいが、当たらなければどうと言う事はない。
高位竜は必死に僕を捕えようと爪を振り回すが、飛行できる僕を捕える事はできない。 僕は避けながら斬りつけ、高位竜の体力を奪っていく。 一撃で首を刎ねれそうなんだけど、あえてそれはしない。 やはり殺してしまうのはまずいと思うしね…
目の前で繰り広げられる一方的な闘いに、客席の竜達は唖然としていた。
人族の、それも年端も行かない少年に一方的にやられる高位竜の姿に、皆目を疑っていた。
ある程度斬り結んだ所で、僕はそろそろ良いかなと、一気に方を付けるべく、高位竜の両翼を斬り飛ばして見せた。
そして、浮力を失い落下する高位竜を追いかけ、仰向けに地面に叩きつけられた高位竜の首元に両の剣を突きつけて降伏を促した。
「降参してください。 このまま首を刎ねれば流石の貴方も死んでしまいますよ」
その言葉に僕を睨みつけ、歯を食いしばって悔しそうに動けずにいる。 まだあきらめきれてない様だ。 隙を覗っている様に見受けられる。
お互いに動かず、膠着状態が続く。
そんな僕達の前に、高位竜ヴィオル突如として割って入り、客席と僕達に向かって「そこまで!」と高々と戦いの終わりを宣言したのだった。




