みつばちの園
※百合に近い表現があります。
主人公は美しいもの以外に対してやや差別的です。
私には、高校生の時、美香というかけがえのない親友がいた。
彼女は、あの花園の中で女王蜂だった。彼女が笑えば皆笑うし、是といえば是となるのである。 私は最初、彼女の取り巻きのひとりに過ぎなかった。席が隣ということで、自然とそうなった。
最初は周りの流れに合わせただけ。でも、だんだんと彼女本人に惹かれていった。
蠱惑的な二重、シャープでくっきりとした滑らかな顔のライン。美香は、私が夢見ていた女の子そのものだった。
私が心酔するにつれて、彼女も心を許してくれた。 私は嬉しくて、彼女のためになることは何でもした。
でも、彼女の蜜蜂の王国が崩壊するのはあっという間だった。オオスズメバチがやってきたのだ。
転校してきた、朱里という女。その女は曲がったことが大嫌いで、真っ直ぐ尖った正義の針で巣をひとつずつ刺していった。
彼女の王国は、形が綺麗なだけで、正論の前では容易に崩しやすかったのだ。
「みんなが困っている」「弱いものいじめはよくない」
それにみんな同調して、ひとり、またひとりと取り巻きが減って言った。 私は最後まで残るつもりだった。彼女あの、瑞々しい薔薇のような、棘を持ち、そしてあでやかな姿を愛していたから。
でも、彼女はある日突然学校に来なくなった。私の目の前から忽然と姿を消したのだ。
「あの時、どうして何も言ってくれなかったの?」
だから、大人になって繁華街でキャッチをしている彼女を見て、いきなり問いつめてしまったのも無理はないだろう。
美香の濁った水面のような両眼の球が、ゆらゆら揺らめいた。
「……」
美香は押し黙ったまま、俯いている。
「美香、この人誰?」
常連であろう豚が、美香の美しい……美しい肩にぽんと手を置いた。私は耐えきれなくなり、彼女の小さな手を引いて、思い切り走った。
「ちょっと、さな!いきなりなんなの!?」
美香は驚いた声を出しつつも、抵抗する様子はなかった。すんなりと着いてきてくれてる気がする。
「どうして……?」
私はあなたの忠実なる働き蜂だったのに。瑞々しい、高粋な花だったあなたが。 男なんかに、汚されて欲しくなかった。




