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がらくた小噺  作者: miyuri
6/7

影絵

1年前に書いた短編。

お題「6フィート下」「影絵」

 あるよく晴れた日の午後。外で洗濯物を干していると、娘が家から出てきて、私の前でしゃがみ込んだ。 


 「パパ、そこから動かないでね」


 そう言うと、足元の下で娘が影絵遊びをしはじめた。言われるがままにしていると、自分の影から、にゅっと3つの影が出てきた。


「それはなんだい?」


「ママとパパとわたし!これからピクニックに行くの」


「……そっか。楽しんでおいで」


 どうやら娘には、私の影が自宅のマンションに見えているらしい。


「いってきます!」


 そうして3つの小さな影は、どんどんマンションから遠ざかっていく。離れていく娘の小さい背中に、たまらなくなって、思わず後ろから抱きしめた。

 

「わっ!なに? どうかしたの?」


 娘は驚いたように振り返る。

 

「今日、ママに会いに行こうか」


「日曜日じゃないのにいいの?」 


「今日はいいお天気だから、良いんだよ」


「やったー!本当のお出かけだ!」


 娘は楽しくなったのか、何度もかえるのようにぴょんぴょんと飛び回った。


 妻は今、6フィートの下、冷たい土の中で眠っている。

 1年前、妻が職場で倒れたと連絡があった。すぐに病院に搬送されたが、意識が戻らない。脳出血との事だった。数日奮闘したものの、そのまま帰らぬ人となってしまった。


 時を止める能力があれば良かったのに。そうすればずっと、あの影たちのようにいられたのに。

 

「さ、花屋さんに寄って、ママの好きなお花でも買っていこうか」


「うん!」


 マンションの外に出て、教会へ向かう。

 道路には、私の影と娘の影だけが、くっきりと映っていた。


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