携帯が死んだ。
携帯が死んだ。
それは、いつものように休憩中にスマホを触ろうとした時だった。ぎゅっと電源ボタンを押し、真っ暗な液晶に光が灯るのを待った。しかし、いくら経てども、スマホは起動しなかった。
「おいおい、待ってくれよ」
朝、たっぷりと充電してきたはずだ。確かに満タンにしてきたはずなのに――。スマホのカバーを外し、内蔵されているバッテリーを確認する。
「バッテリーがおかしいのか? 」
バッテリーを抜き差しし、再度電源ボタンを押す。しかし、再びスマホに光が戻ることはなかった。
「嘘だろ……」
焦る気持ちを抑え、浮かんでくる不安をつぶしていく。
同僚のバッテリーを貸してもらい、再度試してみるも、スマホは押し黙ったままだった。
「どう? ついた?」
机に項垂れていると、同僚が話しかけてきた。
「駄目そう……。あ、バッテリーありがとね」
礼を述べ、バッテリーを同僚に返す。
「なんでかなあ」
そう呟いたとき、ふと朝にスマホを思い切り足で踏んだのを思い出した。
「あー」
水筒のお茶を口に含みながら、近場にある携帯ショップを思い出す。やるせない気持ちを抱えたまま、時計の針は進み、刻々と午後の業務の時間がやってくるのであった。