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セイレーン

 わたしが歌で人を殺せるのは、ご先祖様がセイレーンの末裔だからだ。


 セイレーンはギリシア神話に登場する人魚。

 海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる。

 わたしのご先祖様はこの伝説のモチーフとなった人物である。


 このご先祖さまのおかげでわたしは常に歌の衝動を抱える。

 その旋律はすべからく、ヒトを死や昏睡に(いざな)う。


 客観的に見てかなり迷惑な因果(ちから)だ。

 でも、この因果のおかげでわたしは村でもかなりの実力者と目され、結構な優遇を受けている。どんな強者でも、わたしの歌が鼓膜に届いた時点で、その彼または彼女は『終わる』からだ。


 ちなみに村には色んな怪人、神話や民話の末裔が集まっている。


 というか、人とは異なる力と衝動を抱える者たちが、人類による駆逐を回避するために、悠久の時の中で集ったのが、村なのだ。


 だから村の目的は2つある。

 1つは血統の保存。

 もう1つは能力の改良を目的とした交配。


 おそろしく長い時をかけて、村人たちの能力は向上が図られてきたし、おかげで村人は能力に差はあれど、全員が超人である。


 鉄もねじり切る事ができるし、脚力は豹を超える。目はとても良いし、1000桁くらいの数字ならすぐに暗記できるくらい記憶力も良い。


 つまり、恐ろしく遠い昔、古代に結成された村という組織は、永い時の中で人類と対抗しうる(かいじん)を育てた。 

 まあ、育て方も色々と問題はあると思うし、維持の仕方や価値観も人類とは真逆に突っ走っている。なんせ、力こそが全ての組織なのだ。弱者は強者の(さだ)めに従う。


 内輪ですらそうなのだから、外部にはもっと容赦がない。敵は根こそぎ殺す。これが村の基本姿勢である。それは跡形もなく。


 そういう訳で、村という悪の組織によって、いくつもの集団、宗教団体、武装組織、集落、企業、昔なら国が滅ばされてきた。おかげでわたし達村人の存在を知る者は少ない。


 都市伝説として語り継がれるくらいだ。

 でもその伝説も、人類の科学の発達とともに、薄れ消えていくのかもしれない。


 電子計算機は村人の処理能力を大きく超える。

 新幹線は村人の足より(はや)い。


 今は1997年。

 後4年たったら21世紀になる。

 22世紀のネコ型ロボット誕生まで100年を切るようになるのだ。

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