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プロローグ

【主要登場人物】

高橋真

 主人公。小柄だが運動神経がある。

清水

 クラス委員長。長身でサッカー部の部長。

岡本

 高校生。

 ヒロイン。美貌だが無口で感情を表に出さない。

伊藤弥生

 高校生。もう一人のヒロイン。男勝りのポニーテール娘。

中村早苗

 高校生。若くして兄弟の死を体験している。

小野翼

 幼稚園児。

野田直人

 政治家。選挙活動のために平塚市にいた。


 大柄な少年は後ろ手で縛られた小柄な少年を交番の隅に立たせておいて自分は安い回転椅子に座り込んでリボルバーを指で回りながら両足を机の上に乗せる。そして無線機のスイッチを入れた。

 ボス、交番で捕まえましたよ。最後に見たよりもボロボロの姿で。そりゃあもう、ボスの言った通り拳銃を求めてノコノコ交番にやってきました。思い出すだけでも笑っちまう。だって、入口に隠れている俺に気づかずに入ってきて、後ろから拳銃を構えると目をぎょっと開きましたからね。本当に……愉快な光景でしたよ。手を縛って後に大笑いしました。では、そちらから迎えに来るわけですね? 了解、こっちでマスでも掻きながらゆっくりと待っていますよ。では。

 椅子から立ち上がりズボンのポケットから鍵束を取ると引き出しの鍵を解除して中にあるはずの手錠を探し始めた。

 大柄な少年が身を屈んでいる間に小柄な少年はゆっくりとしゃがみ縄で縛られた両手を膝の後ろへ下ろしていく。それからまず右脚を腕の輪に通し続いて左脚も通した。両手が腹の前に移動するとゆっくりと立ち上がった。

 小柄な少年は手首の縄を大柄な少年の首にかけ飛び上がった。両膝を背中に当てるのと同時に縄を強く引っ張った。

 二人は倒れ込んだ。大柄な少年は首にくい込む縄の下に指をこじ入れようとしたが無駄な努力だ。例え成功しても全体重を利用して引っ張られている縄を両腕の力で引き離すのは至難の業だ。慣れていないとできない芸当であり、不幸にもこの少年はこういった場面に遭遇した経験はなく、ただ必死に縄をはずそうとした。小柄な少年は横向きになり両膝を両腕の間に入れ顔を背けるように強く引っ張った。大柄な少年は痙攣を起こしたように震え溺れたように両足をばたつかせて縄から逃れようと身体をひたすら回転させた。大柄な少年は唾液を口から流し始めた。喉が締め付けられ唾液が飲み込めずそれどころかそれで窒息死かけている。やがて血を吐き始めた。小柄な少年はそれを確認するとさらに力を込めた。縄が首の骨にくい込んだ。顎動脈が引き裂かれると同時に大量の血が流出し壁や床を赤黒く染め上げた。大柄な少年は細かい痙攣を起こした。それでも少年は決して力など緩めなかった。やがて大柄な少年は動かなくなる。数分間力を込め続け、やがて立ち上がった。死んだ少年の腰からリボルバーを抜き取ると自分の腰に差し込んだ。

 生き残った少年は洗面所の冷たい水でひたすら手首についた血を洗い流した。

 小さな窓から外を見渡し危険が迫っていないかと確認する。交番から出る前に死んだ少年の姿を見た。口からは唾液と血液が流れ出、白目をむいていた。死体から無線機を取る。他に何かないか調べた。ポケットに財布があり、中から大切そうにしまってあるものを取り出した。それは家族写真だった。家族写真を丸め、死体に向かって投げ捨てる。

 生き残った少年は交番から荒廃した世界に出た。


 道路を歩いていると年代物のベンツを見かけた。

 ドイツ製の双眼鏡で覗き込み中に人間がいることを確認する。

 人間で良かったと安心した。人間以外なら大変だからだ。

 少年はゆっくりとベンツに近寄った。運転席に座っているニキビが多い顔をした少年はサイドミラーで近寄る少年の姿を確認すると、目を見開いた。

 生きてたか、良かった。ニキビ面は言う。

 何が良かっただ、クソ野郎。生き残った少年は首をかしげた。

 遠藤はどうした?

 遠藤は死んだ。

 奴らに殺されたのか?

 いや、俺が殺した。

 冗談だろ……?

 本当だ。車から降りろ。

 ニキビ面は車から降りた。少年の手に拳銃が握ってあることに気づくと、弱々しく微笑んだ。両手を上げ戦意がないことを相手に伝えた。

 なぁ、助けてくれないか?

 もちろん、助けるとも。

 ニキビ面の顔は明るくなった。

 ここでは、死ぬことが究極の救済だ。

 この言葉を聞いたとき、ニキビ面の笑顔は崩れ去り、目から大量の涙を流し始める。両手をあわせ神に願うような仕草と声で叫んだ。

「助けてくれよ! 頼む、俺たちが悪かった!」

 少年はリボルバーの銃口をニキビ面の額に押し付けた。引き金を引き軽い銃声と反動があった。ニキビ面の額に小さな穴が開き、後頭部が避け、脳と血をまき散らしながら倒れこむ。脳無しになった死体を眺めながら、少年は唾を吐いた。


「お前たちを悪魔には殺させない」


 少年は感情のない声で言った。


「お前たちは俺の手で殺してやる。絶対に」

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