プロローグ2
22:00
(そろそろ来る頃かなぁ。)
そう思いつつ最終調整のために机の上に出しておいたエネルギーセンサーのスイッチをいれた。
‘ピーッピーッピーッピーッピーッ’
(もう反応してるよ。ヤダねぇ。間違いなくあいつだよ。怒ると駄々漏れになる癖どうにかならんのかねぇ。)
‘ピッピッピッピッピッピッピッピッピッピピピピピピピピピピピピ’
ブザーの音の間隔がどんどん短くなっていく。
「クワ大尉。失礼します。」
ノック無しで部屋に鬼女が入ってきた。
もっともノックをする鬼などいないのだが。
「クワ大尉、無礼を承知でお尋ねします。今回の任務から私の第三分隊を外したのは大尉の私情からだと私は思っているのですが違いますか?」
冷たい声ではあったがその言葉のところどころから怒気と何かがにじみだしていた。
「はぁ、レイナ准尉・・。ほんとに無礼だよ・・・。まずその駄々漏れのP・Eをしまってくれるかな。そんでもって君の分隊を外したのは全然全く私情からじゃない。」
「ではな「もし、万が一我々小隊全員で出撃して帰還できなかった場合にはっきり言って連合軍は最大戦力の一端を失うといっていい。そうなると今は黙っている反政府勢力が動き出してくる可能性はある。だが、君達残りの二分隊が残ればその不安もない。我々は安心して裂け目の調査に行けるわけだ。わかるな?」
反論を抑えて溜息交じりにクワは答えた。
「し、しかし、私だけでも加えていったほうがいいでしょう!行方不明になってる部隊がもう既に三つも、彼らだって我々よりは力は劣りますが同じ特務隊なんですよ!!いくら隊長が強いといっても限界があります。」
「貴官一人を加えても現状では綻びになるだけなんだよ。今回は待機組で頼むよ。」
「で、ですが!」
「いい加減にしなよ。この部屋からたたき出されたいかい?」
クワの声のトーンが急に低くなる。
「ッ!」
レイナは恐ろしいほどの寒気を覚えると同時に、まるで訓練の時に着るスーツを今突然身に着けたかのような重量感を感じた。
「し、失礼します。」
わずかに震える声でそう答えるとレイナは部屋から出て行った。
「ふぅ。任務に連れて行かないといつもああなるのはどうしてなのかねぇ。俺も疲れるから勘弁してほしいよ。」
「それは隊長が大切だからでしょうあの子はまだなんだかんだでこどもですから。」
目の前に突然コーヒーが置かれる。
見上げると筋骨隆々の巨体がにこにこほほえみながら立っていた。
「俺が大切って言ったって。っていうかノックしろよ。アルベルト」
「二人して馬鹿みたいなエネルギーを放出するからまたドアが動作不良になってたからノックするドアもありませんでしたけど・・・・。」
「あ」
そういわれて部屋の入口を見ると自動ドアがエラーを起こしてアラートを弱弱しく鳴らしていた。
「いくらかかる?」
「さぁ・・・、もういい加減日常的に動作不良を起こしていたんで、ドアを丸ごと交換しなきゃいけないでしょうからそうなると、司令に・・」
「なんとかならない?」
「なるとは思えませんね・・・、残念ながら・・。」
(こうなることは明白なのに、力でしか押さえつけられない俺も未熟だよなぁ)
「任務から戻ったらその話を司令のところにしに行くから、とりあえず整備に応急処置を頼んでおいてくれ」
「了解しました。」(任務から帰ってきても多分いかないだろうなぁ)
コーヒーカップを返しながらクワはアルベルトに頼んだ。
「じゃあ俺は裂け目の状態の更新データをもらいに行ってくるから、アルベルトも準備しておけよ。」
「了解!!」
そのときは確実に迫っていた。