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序章

序章


 弟が病に倒れてからというもの、それまで穏やかだった家庭の雰囲気が一変した。

 母は弟につきっきり。父は朝な夕なと仕事に奔走した。八人もいた使用人達も、弟の治療費の為に次々と暇を出され、家の中から会話が消えた。

 姉は弟に付き添う母に代わって家事を引き受けることにした。

 既に使用人もいなくなり、何からすれば良いかなど皆目検討もつかなかったけれど、日頃の好奇心からこっそりと観察していた使用人達の行動を思い出しつつ、一つ一つをこなしていくようになった。

 そうすればいつかは弟の病も治り、すっかりやつれた父や母も、いつかは笑ってくれると信じていたからだ。

「どうして跡継ぎのジャスティンがこんなことに。いつか家を出すシャーロットならまだ良かったものを」

「あなた、何てことを! あの子も私達の大事な娘ではありませんか!」

「嫁に出せる歳ならば嫁ぎ先の援助も見込めたというのに。あれでは食い扶持が増えるだけではないか」

 父にとって大切なのは、跡継ぎの弟だけ。その現実を思い知らされるのに、そう時間はかからなかった。

 可愛い弟。父に吐き捨てられずとも、代わってあげられるものなら代わってやりたいと願っていた。

 だから彼女は選んだのだ。その命のすべてを捧げてでも、弟を救う道を。

 数年前に近くの森にやって来たという名高い魔術師の噂は有名だった。

 確かにそこに住んでいるのに、多くの者がその屋敷には辿り着くことも叶わずに引き返してくるという、不思議な魔術師の噂。

 国中の医師が匙を投げた奇病でさえも、彼の手にかかればたちまち治ってしまうという、そんな噂。

「私の弟を助けて下さい。その代わりに、私の命を差し上げますから」

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