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第10話 思いつき

「へへへ、そういうことか」ジョンはしたり顔でステファンに言った。

「何だよ?」ステファンは見透かされて、はっと我に帰った。

「どうやら、お前もあの噂を耳にしたんだろ?

リリアンとネイサンが付き合ってるって話をさ。

道理で最近、ネイサンの話をお前がやたらとするはずさ。お前、リリアンに気があるんだろ?え?」

「別に。お前にはカンケーねぇだろ」ステファンはつい格好つけて、そうつっぱねた。

「ま、ま、ま。お前の気持ち、わからねぇこともねぇけどな。

リリアンはクラスの中じゃ、結構、人気が悪い方でもないしな。

学校にいる男共の何人かは、これまでにちらほらアプローチかけてるらしいっていうからな。

まぁ、精々、頑張れよ。

俺はお前の友達だから、応援するぜ」

ジョンはステファンの首に自分の腕をかけて、ステファンの頭を抱え込むようにして言った。


「・・・お前もあの噂、聞いたのかよ?」そう言われて、ステファンはたまらずに聞いた。


「まぁな。でも、本当かどうかは知らねぇけどよ。

リリアンの家がネイサンの家に近いっつうから、幼馴染ってぇこともあるし。

・・・そういや、ネイサンが日曜には真面目に教会に行くって話からして、もしかして、もしかしたらリリアンが現れるんじゃねぇのか?

だったら、お前も行ったらどうだ? 教会に」

「・・・行けるわけないだろ。そんな急に」

ステファンは自嘲気味につぶやいた。


「お前って、ホント、気が弱いんだな。

行けよ、日曜。俺も一緒に行ってやろうか?」

「面白がってるだろ?お前」ステファンはジョンのからかいにムッとして言った。

「へへへ、まぁね。お前にしちゃ、やたら、純情だな、と思ってさ。

でも、まぁ、友達としちゃ、助けてやる気は満々だぜ。だから、行けよ」

「・・・車がないんだよ」ステファンは思わずつぶやいた。

「へっ?・・・ああ、そうか、確かにな。そりゃ、まずいよな。うーん、こりゃ、JFKより話は厄介だな・・・。どうすっべ?」

「それをずっと考えてるのさ。

親父に貸してもらうなら、理由を話さないといけないし。

第一、宗教嫌いの父さんが教会に行くなんて言ったら、貸してくれる訳ないしな」

ステファンとジョンは頭を抱え込んだ。

「うーん。・・・あ、そうだ」ジョンは急に思いついたように言った。

「何?」ステファンは目を丸くした。

「まぁ、俺に任しておけって。車、何とか手配してやるからさ。

こりゃ、面白くなってきたぜ」ジョンは手をこすり合わせて軽くウィンクした。

ステファンはちょっと不安だったが、とりあえずジョンを信用する事にした。



二人はとりあえずテーブルに着くと、早速ランチを食べ始めた。

ジョンはさっきの話を忘れたように、覆い被さるようにして皿の中の食べ物にパクついている。

ステファンも食べながら何となくフッと、さっきのベティーの話が頭に浮かんだ。

-だから、最後に殺されたんじゃない

 彼女は何か知ってはいけない秘密に触れてしまうくらい、ケネディの政治的な部分に参入してたわけよ 


マリリン・モンローがJFKの愛人だったことは、公然のスキャンダルだった。

もし、その彼女がJFKと同じように暗殺されていたとするなら、彼女は一体、何を知ってたと言うんだろう?

だが、妻のジャクリーヌは殺されもせずに何年も生き長らえた。

一番、JFKに近い存在だったのに。


しかも、政治的に関わっていたというなら、モンローよりもずっとジャクリーヌの方が政治的に知っていることが多いはずだ。

にも関わらず、あのパレードではJFKと知事のコナリーだけが撃たれた。

ジャクリーヌは殺されず、モンローは殺された。

一体、どういうことなんだろう?

もしかして、あの銃撃の時、「No、no、no!彼らは私たち、全員を殺そうとしている!」と叫んだのは、ジャクリーヌなんじゃないだろうか?

妻のジャクリーヌはJFKの暗殺を事前に知ってたんじゃないだろうか?

なんとなくではあっても・・・。



「おい、どうかしたのか?」その時、ジョンが声をかけてきた。

「・・・いや、別に。ちょっと気になって」ステファンは自分の考えがなんだか突拍子もないように思って、まごまごと答えた。

「何が?」

「さっきのベティーの話だよ、JFKとマリリンの話さ」

「それがどうかしたのか?」

「いや、マリリンが暗殺されてたとしたら、ベティー達が調べたことってのも、俺達の方にもなんか役に立ちそうな気がしてさ」

「そうか、マリリン・モンローも変な死に方してんだよな。なんだったっけ?自殺とか、何とか?」

「うん。睡眠薬の飲み過ぎだって言われているけど、どうも怪しいらしい。それに、あながちベティー達の言っている事は当たっていると思う」

「何が当たってるって?」

「モンローが何か知ってたんじゃないかってことさ。

モンローはJFKだけじゃなくて、JFKの弟のロバートとも出来てたって噂らしいから、そこら辺で何かつかんでいたとしても、おかしくはないしな・・・」

ステファンは考えがはっきりとまとまらず、言葉尻を濁した。

「JFKの暗殺に関わるような何かを知ってたってことか?」

「かもな。犯人の見当ぐらいはつくかもな」

「でも、その線から調べたら、直接、手を下した奴は出てこないだろ?」ジョンは鋭くそう返してきた。

「・・・お前の言うとおりだな。

その線から調べたら、またlabyrinth(迷宮)入りだな。

動機の線から調べるのよそう、って言ってたお前の言う通りだな。

また別んとこから調べ出したら、うじゃうじゃ他の人間どもが入り込んで来て、ややこしくなりそうだしな」ステファンはそう言って、顔をしかめた。

「でも、面白そうジャン。それ、調べる分には、俺、結構、気になるけどな」

「俺が気になっているのは、JFKだけじゃなくて、何で弟のロバートまで殺されなくちゃいけなかったってことさ。モンロー、JFK、ロバート・ケネディ、この3人が絡んでたってところに何かヒントがあるのかなって・・・」ステファンは顔をしかめたまま、考えをはせるようにして遠くを見つめた。


その時、一瞬、何かを思い出した。

リリアンをさっき見かけた時の目の動きだ。


「あっ!」ステファンはちょっと大きな声を出した

「何だよ?びっくりさせるなよ」ジョンはその声にちょっととまどったように言った。

「お前がさっき言い出した、教科書ビルからの発砲が本当にあったのか、ってことでいいことを思い出したんだ」

ステファンはうれしそうに目を輝かした。

「いい事って?」ジョンも期待に目を輝かせる。

「証人だよ、証人。

最初に読んだ記事を思い出したんだ。

確か、ライフルが教科書ビルから見えたって証言した奴がいたんだ。

そいつを調べりゃ、発砲場所についちゃ、どれが本当の話でどれが単なる噂話か、確定できるはずさ。

証人は何も一人だけじゃない。

あれだけの人がいたんだ。何か見てるはずさ。すっごく小さいことでもね」

「そうか、そこから調べりゃ、実際に殺った奴が狭まるわけだ。いいね、いいね。こりゃ、ホントわくわくするぜ」そう言って、ジョンはグビっとコーヒーを飲みこんだ。


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