第1章 : 生まれ変わった
私が彼女のおかげで生まれたということは事実であり、彼女を責めるつもりはないが、あの人間たちが私に何をしたか、そして他の者たちに何をしたかということは何も否定できない。だからこそ私たちは、奴らを滅ぼすことに決めたのだ。
石と淀んだ水の匂いが、私の嗅覚が真っ先に捉えたものだった。
しかし、私が水だと思っていたものは、実際にはそうではなかった。
やっとの思いで目を開けると、私を取り囲んでいたのは、黒く、粘り気があり、何よりも悪臭を放つ液体だった。
刺すような痛みを引き起こす四肢の片方を持ち上げて支えようとしたところ、ある物に滑ってしまい、その直後に私は倒れてしまった。
倒れた後、私の目の前でその物体は、指が本来の位置とは反対の方向に曲がった手の形をとった。
体のあらゆる部位が、自分の意志に反して不自然な形に変形させられているのを見て、驚きから私は荒い息を吐き始めた。
口の一部がその液体に浸かり、黒ずんだ物質の中でいくつかの空気が膨らんで泡立ち、雲の隙間から差し込むわずかな月の光をその中に映し出した。
起き上がろうとして柔らかくゼリー状の何かを踏んだことで、重力により私は再び床へと倒れ込んだ。
私の顔は完全に水没し、口の中は鉄の味と腐敗臭で満たされた。
息をしようと乱暴に頭を持ち上げると、私の顔からその物質が滴り落ち、視界が開けて、新たな四肢が目の前に立ちはだかっているのが見えた。
——「アアアアアッ………アアアッ!!」
私の声は、あちこちに散らばった脚、腕、手、そして皮膚が裂け、夢から遠ざけられたまま長い時間が経って骨が腐食し血管が剥き出しになった足を見て覚えた絶望によって、鋭く掠れてその場所を満たした。
さらに何度か試み、痛みが努力によってさらに強くなるのを感じながら、私はどうにか立ち上がった。
今や立ち上がった状態で私の目が捉えたのは、自分が大きな穴(窪地)の中にいるということだった。
そして周囲をよく見渡すと、この場所にいるのは私一人ではないことがわかった。
ひび割れ、ざらざらした、死んだ石の上で、あの黒い液体に覆われた場所には、あちこちに体と、あの四肢の持ち主たちが散らばっていた。
体に痛みを抱えながらも頭を動かすと、場所の隅の方で、体同士が上に重なり合うようにして山を築いているのが見えた。
——「アア……スケ……テ……」
その体の山から、疲弊した気力のない声が漏れた。
私はといえば、倒れないようにゆっくりと、痛む体を動かしながら、その声の主の場所へと歩いた。
よろめきながらたどり着いたときには、助けを求める声は消えていた……かのように思えた。
しかし、私が再び膝をついてからしばらくして、その声が聞こえてきた。
——「アア……スケ……テ……」
傷口がまだ生々しい私の両手は、その声の主を探し出すために差し出された。
あまりの状況に、声の主は近くに誰かいることに気づくと、発する言葉のボリュームを大きくし始めた。
——「アア……スケ……テェ……!! お願……い、ここか……ら出して……!!」
発せられる言葉一言一言には、恐怖と絶望のあまり喉を擦る鋭い震えが伴っていた。
すがりつく場所を探すように、一本の手が波打つように動いた。その一方で、彼女を押しつぶしている他の体たちを、苦労しながらどかそうとしていた。
——「アアスケテェェェェ……!! いや、いや、死にたく……しにたく……ない……っ!」
何かにつかまるたびに、私の手は場所中にあるあの黒い物質で滑った。
しかしよく見ると、この黒ずんだ液体は、ここにいるすべての者たちの傷や手足、そして体から流れ出ているのだった。
夜の経過と、風が通り過ぎるかすかな音が相まって、ついに私はその声の主が誰であるかを目にしたのだった。
多くの者は薔薇を目にするとその美しさに目を奪われるが、今のその姿を見れば、多くの者が嫌悪感を抱くだろう。
打撲や傷による緑がかった皮膚は灰紫へと変化し、全身のあらゆる痕跡はネクロフィリア(壊死したような)色で終わっている。
生命に満ちた赤色であるはずだった花弁は、今や泥まみれで、しおれ、色あせている。
このしおれた薔薇を見れば、誰もがその時間と美しさは終わったと言うだろう。
ほんの少し前まで絶望の中で手を振っていた少女が動きを止めたままなのを見ながら、私が考えていたのはまさにそのことだった。
反応がないまましばらく待った後、私は全身の痛みから困難を伴いながら、その場で振り返った。
足を引きずりながら遠ざかり、十分な距離をとったと思った時だった。
——「アアアア……スケ……テェェェェ……!!!」
再び声が響き渡り、私の意識はもう一度奪われた。
彼女がいる場所へ戻ろうと考えたが、その意図はすぐに断ち切られた。なぜなら、彼女が立ち上がったからだ。
彼女の身体を目にして、彼らが彼女に加えた惨状の恐ろしさに、私の体に冷たいものが走った。
腹ばいになって背中を見せている今、腐敗した肉からは骨が見え、肩甲骨は本来の位置から外れて砕けていた。
そのまま脊髄をたどると、その椎骨の一つ一つに、測り知れない大きさの針が突き刺さっていた。
そして背中の中央下に達すると、そこには大きな開口部が存在していた。
この場所から内臓が逃げ出そうとしていたが、お互いが複雑に絡み合い、さらに脊椎もそれを阻んでいたため、脱出することはできていなかった。
そのような状態にある者が生きているとは、到底思えなかった。
——「アハアアア……」
疲労と痛みを帯びたため息が、その場に響いた。
一瞬、自分がそうしたのかと思ったが、そうではなかった。
それは、死体の上に横たわっていた少女から発せられたものだった。
そのため息は、直後に荒い呼吸へと変わった。
それにより彼女の身体は震えるように動いたが、まさにその動作によって、私の目はさらに彼女の下半身へと誘導された。
腰があり、それに続いて脚や足があるはずの場所には、そのようなものは存在しなかった。
その場の液体に浸かった暗く棘のあるつるが互いに巻き付き合い、本来腰であるはずの場所から伸びていた。
それらのつるの先端には根が見え、周囲にあるものを吸収しながらあちこちへと動いていた。
その根は、彼女の下にいる他の死体たちの皮膚、肉、そして骨を突き刺していた。
これを見て、私は一歩後ずさりし、衝撃で悲鳴を上げてしまわないよう、震える手で口を覆った。
——「言……言えない……っ!!」
言おうとした言葉は途切れ途切れになったが、それ以上考える余裕はなかった。その瞬間、何かが私の右脚を掴んだからだ。
このような極限状態において、自らの存在が感じ得る恐怖をどう表現すればよいだろうか。
身体は緊張し、逃走か闘争かのモードに入り、その反応は一瞬のように思える。
しかし時に、身体はどちらにも反応せず、完全に硬直してしまうこともある。
それこそが私が示した反応、あるいは非反応であったが、それはほんの一瞬のことであり、数秒後には自分のかかとを掴んだものへと視線を向けた。
私の視界に入ってきたのは、不気味な姿となった存在だった。
ここで一つの疑問が生じる。より残酷なのはどちらだろうか? 無意識で無関心な「自然」か、それとも自覚を持ち、自らの行う全てに完全な意識を向ける「人間」か?
私の観点から言えば、後者だ。
人間が地球上の他の生き物に対して加え得る残酷さは、比べるものがない。
自分自身で出したこの答えにより、あの恐怖の感覚はさらに大きくなった。
繰り返し emphasized(強調)するが、身体が想像を絶する方法で形作られ得るというのは、真に信じがたいことだ。
ガラスで作られた花に似た半透明の皮膚は、本来あるべき姿とは完全に異なっていた。
自らの全てをさらけ出し、これを見る者を驚愕させ、苦悩させた。
私の脚を掴んだものを見た後、私はそのような状態におちいった。
透明であることは美徳とされるはずだが、この瞬間における透明さは、その身体に刻まれた苦しみを示す標識でしかなかった。
この少女の顔を見れば、完全に空洞となった二つの眼窩だと思うだろうが、実際に起きていたのは、彼女の眼球が完全に黒いということだった。
それらは、その場所のわずかな、あるいはほぼ存在しない光を吸収していると言えた。
また、彼女を見つめると、あたかも二つの巨大なブラックホールが目の前に立ちはだかっているかのように、自分の eye の光まで奪っていくようだった。
——「ウヒェェェ!」
彼女たちに何が起きているのか理解できず、どうやって動くことすらできるのか分からなかった。
私は心の中でそう呟きながら、強引に足を振り払った。
ただ、そうした瞬間、 me を掴んでいた者の手が引きちぎられた。
こんなことが起きるとは思わず、私はすぐに自分にしがみつき、まだ動いている手を振り払おうとした。
一瞬強くしがみついていたが、数瞬間後、それは枯れた花弁のように落ちた。
——「アアアアアアアアアッ!」
あの半透明の姿をした少女は、夜の静寂と同時にこの悲鳴を上げた。
一瞬、私は茫然とし、それによって生じた強い風の吹き荒れによって視界を失い、とっさに耳を塞ぐことができなかったためによろめいた。
しかし私の身体は屈し、重力がその仕事を実行したことで、私は再びあの黒ずんだ、悪臭を放つ粘り気のある液体の中へと倒れ込んだ。
奇妙な理由から、自分の身体が掴まれ、沈められていくのを感じた。
今や、自分の全身が掴まれ、引きずられているのを感じていた。
そして不思議なことに、これが起きるにつれて、私の中で何かが変化し、成長し始めた。
すでに感じていた痛みが十分でないかのように、背中の右側でさらに恐ろしいものを感じ始めた。
その中で、先ほどの少女に起きたことが脳裏に浮かんだ。彼女のイメージが非常に鮮明に現れ、この状況において恐怖だけでは足りない感情となった。
この痛みによって、自分も同じ目にあうのだと感じた。
そしてある意味で私は間違っていなかった。なぜなら、何かが飛び出してくるのを感じたからだ。
この感覚は、種が土を押し分けて芽を出し、土の暗闇の中で生まれた小さな葉が光を求めるのを見るかのようだった。
ただ私においては、自分の中に芽生えた正体のわからないものが背中で発芽する間、肉と筋肉が引き裂かれていたのだった。
それが私の皮膚を突き破り、成長し続ける瞬間、最初に思ったのは「苦悶」だった。
だからこそ私は、光も音も通さないその物質に沈んだまま、声もなく叫んだ。
それが成長し終えた時、これで終わりだろうと思ったが、そう考えることこそが私の最大の過ちだった。
先ほどと同様のもう一つの感覚が現れ、今度は背中の左側だった。
そして何より最悪だったのは、自分に起きていることを制御できないということだった。
自分の身体が自らの意志に反応しないと知ることは、絶望によって私を物理的にも精神的にもさらに破壊していった。
起きている全てのことから、これ以上何を期待すればいいのか分からなかった。なぜなら、これほどの痛みを感じ、これほどのことが起きているにもかかわらず、私の身体は倒れないからだ。
——「なぜ私は死んでいないのか?」
この問いで命を責めたかったが、命というものは無関心であり、誰のことも何のことも気にかけはしない。
私の背中で成長していた何かの苦難が、これで終了したと私が思った場所に達した時、私はこれ以上ないほど間違っていた。
再び筋肉の繊維が無理やり引き伸ばされたが、今回のこの感覚は背中の両側からやってきた。
肉が限界を超えて力任せに引き伸ばされ、それは引き裂かれ、そこで私はこれが永遠に終わらないのではないかと思った。
そしてまさにその通りだった。なぜなら今や、背中の下にさらに二つの刺すような痛みが加わったからだ。
唯一の違いは、今回の刺すような痛みは一瞬もかからず、バターに浸された温かいナイフのように私の皮膚を突き抜けたことだった。
もし誰かがこの暗い水たまりに沈んだ私の状態を見たら、私の存在は混沌だと言うだろう。
これまでにないほどこれが終わることを basket(願い)し、だからこそ今、私はこの場所の最も深いところへと身を qualitative(委ねて)沈んでいった。
そしてそれにより、他者によって、そして自分自身によって拷問されたこの身体の中で、自らに問いかけた。
——「生きることに、何の意味があるというのか。」
まばたきの一瞬の行き来によって、何千もの繊維で形成されていると言えるような、鮮やかに光る赤色がかった球体が現れた。
強い風に巻き込まれた髪の毛のように、それらは互いに渦を巻いていた。
無意識のうちに私はすでに片手を伸ばしていた……そう思ったが、その球体を掴んだものは全く異なるものだった。
その球体を掴んだのは、手に近いものではなく、枝に近い何かだった。
一瞬、意識的に手を球体の近くに動かし、伸ばすと、緊張と損傷を感じることができた。
——「これは何?」
そしてこの問いに対する答えは、自分の背中で成長したものが動いているのを感じることだった。
背中から生えたそれらのものに掴まれた球体が、少しずつ私の方へと近づき始めるほどに。
私の背中に存在する何かによって。
鮮やかな赤色の光は、その場所の深い暗闇との間に大きなコントラストを描いていた。
こうして今や、この虚無の中で消えることの難しい光を球体が提供している領域を見ることができた。
奇妙なことに、この球体がもたらす温もりは、自分が置かれている状態と状況にもかかわらず、私を不思議なほど穏やかな cluster(気持ち)にさせた。
球体が手で取れると感じる距離に来た時、その手が伸ばされた。
中くらいの大きさの球体が、私の胸の上に放たれた。
光が自分の瞳に反射しているのを思うことができた。
そしてより近くにあることで、その物体の内部がずっとよく見えた。
内部の繊維は、数え切れないほどの量で存在していた。
気づかないうちに、私の手と、背中から出ていた何かであるそれらは、球体を私の胸へと導いた。
球体が近づくにつれて、温もりがその領域を満たしていった。
自分の ionized(存在)とは異なる何かが安らぎを生み出しているのを見て、私は無の境地におちいった。
傷の痛みは、竜巻に吹き飛ばされる葉のように消え去った。
私は目を閉じ、身体に残されたわずかな力で、その球体を抱きしめた。
この液体の暗闇の中でこれを行っている間、私の記憶は覚えていないが、奇妙なことに身体は覚えている何かへの郷愁を感じた。
私の心に、土の中にある種のイメージが浮かんだ。
発芽する瞬間、種がその根を広げていく様が。
——「ありがとう」
その「ありがとう」は奇妙だった。それは私の知らない声から発せられたものだった。
——「助かったわ、本当にありがとう」
新しく、より洗練された細いトーンの声が現れ、感謝の言葉を繰り返した。
目を開けると、少女たちのぼやけた姿が私を取り囲んでいた。その場所の乏しい照明は何も助けにならなかったが、空にそびえ立つ巨大で青みがかった唯一の光だけが別だった。
数秒が経つにつれて私の視界はよりはっきりと焦点を結び始めたが、起き上がろうとしたとき、まるで自分の背中に何かが付着しているかのような重みを感じた。その感覚が私の意識を完全に捕らえた。
努力を重ね、私はどうにか体を起こして座ることができた。その単純な動作だけで深い疲労感が押し寄せ、私の頭は前へと垂れ下がった。
重みが私の意識を奪っていたものの、最終的にそれを完全に奪い去ったのは、自分がいる場所だった。私は岩の上に座っていたのだ。
私の両手は体を支えながら、その表面の冷たさ、硬さ、そしてざらつきを肌で感知していた。
その時、唐突に私の視線は、以前自分がいたあの鉄の味がする漆黒の悪臭を放つ液体を探した。
——「手伝うわ」
心配のこもったトーンで発せられたこれらの言葉を聞いて、妙な感覚が広がった。なぜならここには、このようなフレーズを流暢に話すことができる存在などいないはずだったからだ。
だからこそ私は、声を上げた人物へと意識を向けた。
……
私の視界に入ってきたのは、白く滑らかな手の伸びであり、ここにあるはずのないものだった。
そう考えていると、誰かが私の手首の一つを掴み、立ち上がるまで引き上げてくれるのを感じた。
——「無事なようですね、ハート」
さらに言葉が聞こえ、何より誰かが私が予想もしていなかった名前で私を呼んだ。
私を助けてくれている者たちにしっかりと視線を向けた時、自分自身でもどう表現していいか分からないような表情になった。
私の視線は、彼女たちの顔よりも先に、頭上にあるものへと向かった。
鮮やかな色の花弁が、その根元と縁で漆黒のグラデーションと混ざり合い、わずかな月の光を受けて輝いていた。
——「カルミン、やることに気をつけて」
——「分かってるわ、ニクス。でも私たちもまだ回復している最中なのだから、無理はしないで」
頭頂部に薔薇を持つカルミンと呼ばれる少女は、頭頂部に百合の花をつけた少女をニクスと呼んだ。
そして私の視線は、それぞれの顔へと向けられた。
私の右側にカルミン、そして左側にニクス。
私の目は二つの月のように見開かれた。
それはその瞬間、彼女たちが誰であるかというイメージが私の脳裏に浮かんだからだった。
——「ニクス、とりあえず彼女をあの場所へ運ぼう」
官能的で落ち着いた声で話すカルミンという少女は、初めて彼女を見た時の姿を私に思い起こさせた。
——「私も同じことを言おうとしていたところよ。行きましょう」
ニクスという少女もまた、その劇的な変化と、最初のあの半透明の姿ではもうないということによって、私に強い印象を残した。
一体何が起きたというのだろうか、そして最後に倒れてからの記憶がなぜ私には全くないのだろうか。
なぜあの時見た存在たちが、このような姿に至ったのだろうか。
——「ゆっくり行って。彼女はまだうまく動けないし、背中にあれだけのものを背負っているのだから」
カルミンが言った言葉のために、私は頭を動かし、視線をカルミンだけに向けた。
——「分かっているわ、カルミン……はぁ……でも私たちもまだ回復中なのよ」
ニクスは私の耳の近くでそう言っていた。
ニクスはそう言いながらも、苦しそうに息をつきながら自分を急かしていた。
私の足はよろめいていた。少女たちが一歩踏み出すごとに引っぱられるのに応じて動いていたからだ。
——「もう少し……はぁ……我慢して……はぁ……ニクス」
カルミンはカルミンで、落ち着きと官能性を保つために声を振り絞っていた。
時折、目の端で、彼女たちが過度の努力によって見せる歪んだ表情が見えた。
まるで彼女たちにとって、私がガラスの翼を持つ人形であるかのように注意深く扱われていた。
その変化の大きさを目にして、私は茫然としていた。
カルミンの顔は疲労と不快感を示しているにもかかわらず、そこからは官能性だけが漂っていた。
落ち着いていながらも、どこか鋭くエレガントなまなざしが、私に感じ取れる彼女の姿だった。
ワインレッドの情熱的な色の彼女の唇は、私を不思議なほど落ち着かない気持ちにさせた。
その質感は、惹きつけられるような感情を呼び起こさせた。
それは私が寄りかかっていた彼女の身体へと向けられ、それゆえに彼女は何に覆われることもなく、完全に身をさらしているように感じられた。
木から削り出されたギターのように、完全にしなやかな曲線を描くフィギュア(体躯)。
それにより、彼女を初めて見た時のイメージが重ね合わされた。
腰からは棘のあるつるだけが伸び、それが死体たちの骨格や筋肉の中に突き刺さりながらあちこちへ動いていたあの時の姿が。
——「アハアアアア」
どうしてそんなことが可能なのかと自問しながら、ため息が漏れた。
続いて、石につまずきそうになったニクスの荒い息遣いが聞こえた。
今や彼女の身体のあらゆる部分がしっかりとした形をとっているのを見て、私は顔を顰めたが、彼女が私の手を強く握りしめ、彼女の肩の上に私の腕を固定し直した時にその表情は消えた。
ニクスに関して最も私の目を引いたのは、彼女の花弁から落ちる白みがかった花粉のようなもので、落ちきる前にそれが枯れ、酸性の黒い色に変化することだった。
それは風と夜の暗闇の中に消えていった。
その枯れた花粉の色は、ニクスの目尻にある暗いグラデーションと非常に良い対比をなしていた。
同様に、彼女の濃い紫色の瞳は、そのまなざしを鋭く悪意に満ちたものに見せていた。
そう考え、見つめているうちに、ニクスがすべての部分において正確なプロポーションを持つ、洗練されたエレガントな身体を持っていることにも気づかされた。
私がこう考えている間、カルミンがニクスにいくつか言葉をかけ、それが私を自分たちが置かれている状況へと引き戻した。
——「ニクス、気をつけて彼女を下ろして、休ませましょう」
苔が少し生え、突起のある端を持つ、無骨な椅子に似た冷たくざらざらした岩が、私の身体の重みを受け止めた。
——「ええ、カルミン。あなたも気をつけて。私がこれを整理する間、彼女を私たちが来た方向に向かわせて設置して」
ニクスがカルミンに見せたのは、この場所の地面に広がっている枝やつるであり、奇妙なことに自分の身体の一部であるかのようにそれを感じることができた。
ニクスが言った通りにカルミンが私の体を配置し終えた時、ようやく私はそれらのつるがどれほどの規模であるかを実感することができた。
私がおろされた場所から、つるはその場所全体に広がり、あらゆる亀裂や隅を巡り、石の壁を登ったり下りたりしていた。
暗闇のために見ることができないため、私にその場所を理解させていたのは視覚ではなかった。
つるが広範囲に散らばっている様子を通して、私はそのエリアがどのような場所であるかを感じ、知ることができたのだった。
………………
——「カルミン、終わったわ。立ち上がれる者はみんな準備ができているわ」
——「よし、ニクス。私も私たち一人一人に繋がっているラインの整理が終わったわ」
カルミンがラインについて言及した瞬間、奇妙なことに私の身体が熱くなり始めた。
その熱は私の存在全体を駆け巡り、背中へと向かい始め、そこでそれらのつるはある種の鼓動を伴って動き始めた。
——「ニクス、構えて。パルス(脈動)が来るわ」
どうやらカルミンが最初にそれが何であるかに気づき、最初の警告を発したようだった。
——「了解したわ。みんな、カルミンの言うことを聞いたわね。全員パルスに備えて!」
私が置かれていた状態では、彼女たちがどんなパルスについて話しているのか理解できなかったが, 状況からして答えを知るのに時間はかからなかった。
準備ができなかった少女たちにとって、そのパルスは彼女たち一人一人に甚大な被害をもたらした。
パルスが到達すると、各少女の身体の筋肉が緊張し、まるで木に雷が落ちたかのような激しさで身震いさせた。
カルミンとニクスを見ると、彼女たちは腕で脚を抱え込み、腕と脚の間の空間に顔を埋めるようにして地面に横たわっていた。
彼女たちがどのように備えたかを見ると、パルスが彼女たちの身体に及ぼした影響は比較的小さかった。
しかし彼女たちについて目を引いたのは、パルスが身体に届くことで、四肢や身体の他の部分から葉、花、枝、つる、結晶が生え始め、それらは即座に暗い液体へと変化していったことだった。
……
——「ハート、大丈夫?」
そう尋ねたのは、パルスの終了後に真っ先に立ち上がったカルミンだった。
私の目の前に立ち、よろめきながらも辛うじて立ち上がろうとする彼女の姿を見るだけで、私の心は内側から打ち砕かれるようだった。
同様に、少し前までは彼女の頭にあるものと似た美しい薔薇の蕾であったはずのものが、黒い液体となって彼女の全裸の体を覆っていくのにも目を奪われた。
——「カ……カ……カル……ミン、ハ……ハートの様……様子はど……どう?」
途切れ途切れの声は、まだ立ち上がろうとしながらも無惨に失敗していたニクスからだった。
彼女のしなやかで洗練された姿が、その目にも流れ込んで炭のような影に染め上げていく黒い液体と混ざり合うのを目にして。
——「ニクス、無理をしないで。彼女は今のところ大丈夫だから、今は休んで」
——「そん……そんな……こんなの……間違っ……てるわ」
カルミンの言葉を無視して、ニクスは体を這わせながら私へと近づき始めた。
——「ニクス、無理をしてはいけないと言ったでしょう」
そんなニクスの姿を見て、私は自分の体に施された度重なる実験の後に自分がどうであったかを思い出していた。
ある瞬間、私は地面にあるつるを支えにし、段階的にそれらを硬くして支柱としながら立ち上がった。
これにはカルミンも驚き、慌てて立ち上がって私の腰を支えた。
——「ハート……」
一歩踏み出すごとに、さらに多くの記憶が湧き上がってきた。
自分の体が穿たれ、切り開かれ、あらゆる部位を蹂躙されるのを見ること。人間と自称する者たちの、純粋に利己的な理由によって。
——「ハート、どうしたの? 少し待って……」
カルミンは私を落ち着かせようと私の前に立ち、まさにその時、私の目は赤みがかった色合いを帯び始めた。
開かれたままにされたそれらの傷口から自分の温かい体液が流れ出し、金属の器具でそこをほじくられるのを思い出すこと。
痛みによって体が硬直し、冷たい鉄の台に強く固定されながら、動くこともできない無力感に涙を流すこと。
悲鳴を上げるという選択肢すらない。なぜなら、体を固定されるのと同時に口も塞がれており、切開や操作の瞬間に口から漏れることができるのは、絶望に満ちた押し殺した悲鳴だけだからだ。




