海の窓
丘のようにうねる
海の中心
青い川が流れている
ぼんやりとした石が転がっていく
電波塔だった灯台がうすく光り
ようやく汽笛の音は遠ざかる
乾かないまま
風を浴び続ける幟
葉っぱの記憶が細い糸になって
鉄の炎を船底に刻む
壁に窓を描く
海の見える窓
ハンモックが揺れる
波に合わせて
朝が来たら窓を閉める
海は終わらない夜そのもの
星座がはじまる
辿っていく線の悲しいほどの平面
濡れたままの言葉が指先を刺しながら
傷の海の境界は薄れていく
新しい川になる
窓を開ける
海が広がる
朝焼けか夕暮れかわからなくなるほど寝続け
ていたい
あなたの横顔なんて忘れてしまいたい
沈んでいった指輪よりも鮮やかに
巡り合う灯台の光
黄金色の空
髪の毛が金色に輝いて
濡れていたことを思い出す
海水を好きになろうと思う
貼り合わせたベタベタの皮膚も
渇いた汗の結晶を舐めながら
塩辛い言葉の単調にも
飽き飽きする
美しいだけの世界
こんなにも生きるというのに
言葉が蒸発して雲になるたびに
鏡のように霧が広がっていく
いつまでも降りそうな故郷の窓明かり
開いたままのカーテンは埃を被って
影そのものを待つ存在に崩れ落ちる
それ自体が宇宙のように
残響のように海は透けていく
呼び鈴に似た合図はずっとあった
船出のとき
矢印の上に海が淡く
割れていく波紋の後ろ姿に
ありふれた道が二つ分岐する
靴の上に立って
扉の時間を決めるとき




