第6話 『黒の境界 -Black Mode-』
――世界が、音を失った。
冴の周囲に広がるのは、灰と闇が混じり合った空間。
地面は砕け、空には裂け目が走る。
紅、蒼、翠、白……これまで纏ってきた全ての光が、闇に吸い込まれていく。
> 「ここが、“境界”……なの?」
返事はない。
ただ、低く唸るような“声”が響いた。
『――冴。お前は五つの力を得た。その代償が、何か分かっているのか?』
冴の胸の奥に、黒い光が灯る。
それはドライバーグローブの中心――紅蒼翠白の全てが混ざり合い、漆黒に染まった瞬間だった。
> 「……構わない。誰かを守れるなら、私は――」
『違う。お前が守ろうとしているものは、本当に“誰か”か? それとも“自分の正義”だ?』
声の主は、闇の中から姿を現した。
それは――冴自身。
紅い瞳を宿し、黒いスーツに身を包んだ“もう一人の冴”。
「私の、もう一つの心……“黒の冴”」
ふたりの足元に、光と闇の紋章が現れる。
世界が静かに裂ける音。
そして――
> 「バトルモード、黒!」
暗黒の炎が、冴を包む。
五色の残光が消え、代わりに現れたのは漆黒の装甲。
拳には“影”そのもののエネルギーが流れ込み、地面を焦がす。
> 「――これが、最後の色。」
黒の冴が笑う。
「お前にその力を扱えると思うか? 闇を喰らえば、光は消える」
> 「なら、闇ごと抱きしめる!」
冴は走る。
闇の風を切り裂きながら、自身の影と激突する。
拳と拳がぶつかるたび、記憶が弾け飛ぶ――
笑顔、涙、約束、仲間の声。
> 「……全部、私の中にある。忘れたくない――!」
最後の一撃。
冴の拳から放たれた黒光が、世界を貫いた。
静寂。
そして――
白と黒が混じり合い、灰色の光が冴を包む。
ドライバーの声が、静かに告げる。
> 『モード:リバース・コンプリート』
冴の目に、再び“紅”の光が戻る。
その瞳に映るのは、夜明けの街と――
どこか遠くで微笑む仲間たちの姿だった。
「……ありがとう。もう、独りじゃないから」
飴玉を口に放り込み、冴は噛み砕く。
「行こう――新しい戦いへ」




