第3話『放課後の影 ―Campus Mode―』
朝の教室に差し込む陽光。
窓際の席に座る冴は、眠たげに机へと顔を伏せていた。
昨日の戦いで身体の奥がまだ重い。
けれど、彼女はそれを誰にも見せない。
「おーい、一色さーん! また徹夜したの?」
声をかけてきたのはクラスメイトの夏目あかり。
明るくて社交的、いつも冴を気にかけてくれる存在だ。
「ううん、ちょっと……夜、眠れなくて」
冴は曖昧に笑った。
――眠れない理由なんて、言えるわけがない。
炎と光、そして蒼の風。
怪人の咆哮が耳の奥でまだこだましていた。
教室の前では、教師が朝の連絡を読み上げている。
「昨日、○○通りでの爆発事故に関しては――」
その言葉に、冴の手がピクリと動いた。
教室がざわつく。
誰も知らない。
あの現場にいた“紅と蒼の影”が、今この教室に座っていることを。
チャイムが鳴る。
授業が始まり、時間が流れる。
黒板に書かれる文字を見つめながら、冴は自分の右手を見下ろした。
――昨夜の蒼い光が、まだ微かに残っている気がした。
昼休み。
屋上のフェンスにもたれて、冴は飴玉をひとつ口に放り込む。
「ふつうの女子高生、か……」
空を見上げて、少し笑った。
その笑顔の奥に、どこか遠い影があった。
風が吹く。
彼女の紅いリボンがふわりと舞い、
まるで遠くのどこかから“呼ばれている”ようだった。
その時――
校舎のスピーカーが不自然にノイズを発した。
> 『……ターゲット、発見。座標、学園区内……』
冴の瞳が一瞬、鋭く光る。
飴玉を「ガリッ」と噛み砕いた。
「――来た、のね」
担いでいる学生カバンが微かに脈動する。
次の戦いの鼓動が、日常のすぐ隣で始まろうとしていた。
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> 次回、第4話『翠の残響 ―Green Mode―』
新たな色、新たな誓い。
冴は仲間と呼ぶには遠く、敵と呼ぶには優しすぎる“存在”と出会う――。




