第2話『蒼の誓い ―Blue Mode―』
夜の街に、まだ焦げた匂いが残っていた。
燃え上がったビルの残骸の中で、冴はひとり立ち尽くしていた。
紅いマフラーの先が風に揺れる。
戦いは終わった――はずだった。
「……静かだね」
誰に言うでもなく呟いたその瞬間、
ビルの影が蠢いた。
低い機械音。
黒い装甲をまとった、別種の怪人が姿を現す。
赤い複眼ではなく、今度は青白く光る光学センサー。
明らかに――前とは違う。
「まだいたんだね。まったく、勘弁してよ」
冴は飴玉をひとつ口に放り込む。
カラン、と軽い音。
彼女の視線が鋭く光を宿した。
怪人が咆哮を上げ、瓦礫を吹き飛ばして突進してくる。
紅のスーツが一瞬、光を帯びる。
だが、その動きはどこか重かった。
前回の戦闘で、スーツの“紅モード”は限界を超えていたのだ。
「くっ……紅じゃ、もう……!」
怪人の腕が冴の腹部をかすめ、壁に叩きつけられる。
紅のバイザーにヒビが走る。
立ち上がろうとした彼女の瞳に、微かに青い光が映った。
――誰かの声が、心の奥で囁いた。
> 「お前は、一人じゃない。五つの色が、五つの力を繋ぐ」
「……五つの、色?」
冴は、震える指で胸の装置に触れた。
紅の光が静かに沈み、代わりに淡い蒼がスーツを包み込んでいく。
ヘルメットのバイザーが青く輝き、マフラーの端が透き通るような蒼へと変化した。
「――バトルモード、蒼!」
風が鳴る。
熱ではなく、冷たい流れが全身を駆け抜ける。
足元に淡い蒼の紋様が広がった。
怪人が再び突撃する。
だが今度は、冴の動きが違う。
重力を無視したような、滑らかなステップ。
一瞬で怪人の背後に回り込み、拳を突き出した。
「必殺――蒼閃牙!」
拳から放たれた青い閃光が、怪人の装甲を貫いた。
一拍遅れて、鋭い衝撃波が街路を切り裂く。
青い光の中、冴はゆっくり飴を咥え直す。
「これが……“蒼の誓い”。」
静かな夜風が、紅と蒼のマフラーを同時に揺らした。
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