14 ミリー
ミリーは、大きな魔法の適性を持った少女。アンドロイドの付与魔法では精神操作が効かない。家族への愛着があれば気付いても気付かない振りが出来るだろう。
14 ミリー
ミリーは腹が立った。こんな少女に心を読まれたような事を言われる筋合いはない、
「何言ってるの。あなた何様。あなただって拐われのでしょう。」
少女は落ち着いて応える。
「拐われたつもりも拐ったつもりもないさ。ただ貧民街の皆さんに来て貰って、灌漑作業や農作業を手伝って貰おうと思って来て貰っただけさ。その中にきみが居た。家族への愛着がないなら私の所で働いて貰っても構わないだろう思ってね。」
ミリーは益々わけが判らない。
「私にあなたのおむつを替えろというの。」
シルビアは怒るわけでもない。
「具体的な指示はその都度出すよ。今は本当に家族への愛着がないのかどうかと思ってね。私は両親と切り離されて寂しかった。きみはそれを感じていないようだ。それさえ確認出来ればそれでいい。きみは私のために働いて貰うよ。」
シルビアは生まれて始めて付与魔法を掛けた。思った通り、ミリーは魔法の素質がある。どっとシルビアの魔力が吸い取られた。その事を予測して、今日はアンドロイド10体しか作ってない。それでも魔力の消費が大きいようだ。シルビアは軽く目眩を感じた。シルビアはミリーを観察した。アンドロイド以上の魔法を所持している。成功だ。ミリーに知識を渡した。これで今回の仕事の指示は出来る筈だ。アンドロイドの指揮も取れるようにした。
「ミリー、今の状況理解出来ている。」
ミリーは眠りから覚めたように、
「はい、私、ミリーは、シルビア様のために働くために、能力を頂きました。私はシルビア様のために働きます。」
魔法付与は精神支配の面もある。ミリーには効きすぎているのだろうか。
「そんな杓子ばらなくてもいいのよ。もっと自然体で行きましょう。」
これで、川からの導水事業、砂漠の灌漑事業、貧民の受け入れがスムーズに行くはずだ。
「ミリー、私、貧民の受け入れの様子見て来るわ。導水事業と灌漑事業の様子見ていてね。」
ミリーに了解を取った。別に了解を取らなくても自然にそうなるのだが、まだミリーとシルビアの連携が上手く出来ていない現在、何に意識を割くべきか言語化した方が適切に行動出来ると判断しただけだ。
貧民達は魔法を付与されて事業に勤しんでいる。死亡率6%が高いかどうか迷う所だ。ミリーは魔法適性が高いのでこの様な付与魔法で精神操作は難しいだろう。精神操作の欺瞞に気付いて反抗するか気付いても納得するかだ。家族への愛着が強ければ、それなりの生活が出来る事に納得するだろうが、家族への愛着がなければ納得しないだろう。その上での判断だ。まだ働き始めたばかりでぎこちないが、それなりに一生懸命働いてくれている。今後も多くの人々を受け入れる。7、8歳の少女がシルビアの所に駆け寄って、
「シルビア様、受け入れて下さり、感謝してます。」
少女の言葉は精神操作されているための言動だろうが、見ている人々には、美しく見えるだろう。心からの言葉である事を願うしかない。一つの欺瞞は大きく広がる。それが欺瞞で無くなる事を願う。
少女が駆け寄って、シルビアに礼を言う。付与魔法の精神操作だ。本心からの礼にならん事を願うばかりだ。