10 父親の名誉回復
シルビアは久しぶりに父の事を思い出した。優しくて厳しい父。魔法を愛した父。そして魔法を愛する存在が目の前にいる。シルビアはこの人に救われて良かったと思う。
10 父親の名誉回復
シルビアは、久しぶりに父親の事を思い出した。優しかったが厳しかった。母親がシルビアが6歳の時に亡くなったので、家族は父親だけだ。母親の記憶はほとんどないが、とても美して優しい人だった事は覚えている。父親に、母に会いたかったら鏡を見てご覧と言われ鏡を見たが写っているのはシルビアだった。父はシルビアに母の面影を見たのだろう。父親はシルビアにかなりきつく魔法や教育、芸術や体術を仕込んだ。男爵で宿舎に住んでいるシルビア達には金銭的な余裕があった。付き合いをしない父親は変人と思われて居たようだ。そんな父親が唯一褒める相手がマリエール王女だ。父はマリエール王女の魔法指南をしていた。
「マリエール王女は魔法の才能の塊だ。この幼さで火水土風の基本魔法を習得してみえる。光や闇の魔法にも適性がある。素直で気高い方でこの国一番の魔法使いになる素質がある。」
会った事がないので想像しただけだから現物と会って幻滅した部分はあるが、父親と同じように魔法を愛している事が判って嬉しかった。性格の印象は違うが狡猾で欲深いマリエールが父にそういう印象を植え込む可能性は高い。人間的にどうかと思うが確かにシルビアはマリエールに救われた。
社交会の段取りとしてマリアというアンドロイドが補助に入ってくれる事になった。シルビアは怒られながら社交会の準備を整えていった。招待する側は国王とマリエール王女、社交会ではマリエール王女の海洋開発と貧民救済、シルビアの父親の名誉回復が発表されると招待状に書かれ全ての貴族、王族に送付された。
社交会が始まるとシルビアはマリエールの側から離れられなくなった。社交会の段取りはマリエールの側近がそつなく行う。司会もマリアがやってくれる。心地よい音楽が流れ、海産物や高級なお酒が供される。マリエールはシルビアが見た事のない身事な王女振りを見せ、扇口元を隠しながら、上品な微笑み見せ美少女振りを輝かせ、海産物の魅力を語ったり、難工事や海の魔物と戦う貧民達の勇敢さやシルビアの父親の人となりを語り、窃盗は信じられ無かったが内部告発で王宮魔術師長の仕業で第2王妃、第2王子、伯爵が糸引いていた事が判明した事、唯一残った身内シルビアに今日男爵位が授けられる事を滔々と語る。
国王の入場である。音楽も高らかに司会は国王の入場を告げる。国王は挨拶をして、マリエールとシルビアに前に出るように告げる。2人は前に出た。
「マリエール王女、そなた昨年の夕食のおり、女神エメリアのお告げで海洋開発と貧民対策、砂漠の灌漑をする事になったと言ったな。我は信じられ無かったが、海洋開発と貧民救済を成し遂げた。我も何度も海産物を味わった。類まれな美味だ。まだ砂漠の灌漑は残っているがここで褒美をだそう。勲一等旭日勲章だ。協力が必要な事があれば何なりと申せ。」
会場は歓声が響いた。この勲章は国難を救った英雄に渡されるものだ。この勲章を賜わった者は非常時に国を統帥出来る事になっている。つまり皇太子が立っても立場的にマリエールが上に立つ。国が欲しければやるという事だ。これは今度の夕食が楽しみだ。
マリエールは勲一等旭日勲章を受けた。国が欲しければやるぞ。という意味だ。今度の夕食が楽しみだ。