1 転生
マリエールは暫く寝込んだ。どうやらマリエールは死んで何か転生されたらしいが、マリエールの意識はある。女神エメリアが転生してきたらしい。
1 転生
聖エメリア王国は、国教エメリア教を信仰する宗教国家だ。女神エメリアを信仰して他の神の信仰を止めた。周りの国は他の神々も信仰する多神教だが、エメリア王国は女神エメリアのみを信仰している。これは、数代前の王妃が女神エメリアに祈り命が救われたという偶然のような出来事に始まるが、大きな問題も起こらず、聖エメリア王国は誕生した。
時代は下り、現在第3王女マリエールが寝込んでいる。医師の見立てでは重い風邪のようでもう寝込んで2週間経つ。非常に愛らしい少女で、とても賢く、他国言語も堪能で良く原書を読んでいた。才色兼備の12歳の王女様の事を気遣う声は多い。王国の会議でも、
「また、女神エメリアがきっとお救いになるでしょう。」
というのが挨拶になっていた。
さて当人のマリエールは既に快方に向かっているが、あまりの事にどうしていいのか戸惑っている。自分にはマリエールとしての記憶はあるが自分は女神エメリアだと思っている。さて床上げの日、マリエールは、国王陛下に挨拶に伺う。少しやつれてはいるが凛々しい王女の姿だ。
「国王陛下、ご心配掛けました。病気は全快しました。公務に勉学に頑張りたいと思います。」
マリエールは普通に挨拶出来た。こういう時エメリアは邪魔はしない。国王より
「マリエール、心配しておったぞ。元気そうでなによりだ。一層の活躍期待しておるぞ。」
国王との謁見も無事終わり、マリエールは図書室に足を伸ばした。側近には、入り口で待機するようにいい、図書室に入った。久しぶりの本の匂いだ。マリエールは隣国の物語の原書を読んだ。読めると言っても辞書片手に拾い読みしているようなものだが、今日はすらすら読める。エメリアの声だ。
「ショックかも知れないが、マリエールは既に死んだ。ここにいるのはマリエールに転生した女神エメリアだ。神が転生するというのは例がない事だが、マリエールの姿を借りてやりたい事をやろうと思う。転生とは、死んだものが死者に生まれ変わるものだが、そもそも神は生きてはいないから、きみを生き返らせた部分もあるしきみに取り付いた部分もある。きみは能力の上がった自分を楽しめばいいし、私はきみの身体を使ってこれまでやれなかった事をやる。取り敢えず、この身体はここに置いて、私がやりたい事を説明するために、魂の旅に出るよ。」
すうと、魂が身体から離れた感触がした。マリエールは本を読んでいる。
「心配しなくてもいいよ。私の魂の一部が残っているから、問題ないよ。それよりも魂の旅に付き合ってくれ。」
我々は海に向かった。青い海、青い空、海岸には大きなクラーケンがいる。
「あのクラーケンがいるせいで、海岸から100mに人が住めない。海には様々な幸があるのに人はその幸に会う事はない。理不尽だと思わないか。例えば、半島と半島の間を土魔法で塞ぎ中のクラーケンを退治すれば、海の幸を人々は味わう事が出来る。」
壮大なスケールの話にマリエールはどう返事をすればいいか迷った。
魂が離脱する。海に出た。海岸にクラーケンがいる。クラーケンのせいで人間は海の幸を味わう事が出来ない。対処するべきだとエメリアは言う。