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作戦と告白

 1週間後、10周年の日が来た。

 0時になった時、白桃大知は風呂に入っていた。


 リビングでSNSをチェックしてみると……。


『#水樹遥斗くん10周年おめでとう 初めて見た時からずっと遥斗くんに心を奪われています。辛いことがあった日も、ずっと遥斗くんの存在に助けられてます。これからもずっと僕の心の真ん中には水樹遥斗くんがいます。遥斗くん、おめでとうございます。そしていつもありがとうございます! 白桃大知より』


 白桃大知が書いた文章がballoonflowerの公式アカウントに。ハッシュタグをクリックしてみた。


 ずらずらずらずらと並ぶ、俺へのお祝いの言葉。それはSNSでトレンド入りする程に。


 急いで風呂場へ行くと、脱衣所で白桃大知が上半身裸で立ちながらスマホをいじっていた。


「白桃、ありがとう。嬉しすぎる」


 上半身裸の白桃大知の背中に抱きついた。


「ち、ちょっと……服を着てなくて。あの、抱きつくのは……」

「あ、ごめん」


 恥ずかしくなってきて、急いで離れる。


「僕は、遥斗くんとは相方ですけど、一番のファンでもありますから」

「ありがとう。あの、こんなに沢山祝ってもらったけど、お願いがひとつあって……いい?」

「……はい、遥斗くんのお願いなら何でも訊きます」

「白桃……」


 何でも訊きますって……白桃大知を眺めていると、心の奥からじんとした気持ちが込み上げてきた。


「白桃、今からSNSに俺の気持ちを呟くから。SNSで、全力で返事をしてほしい」


 ひとりでリビングに戻り、スマホを手に取り、自分のアカウントを開く。


『ファンの皆様、お祝いの言葉をありがとうございます。今日まで活動を続けて来れたのはファンの皆様と、支えてくださった皆様のお陰です。 #水樹遥斗くん10周年おめでとう のハッシュタグの言葉、全てを大切に心の中にしまい、これからも皆様に喜んでいただけるように精進いたします。本当にありがとう! みんな大好きです』と、書いた。


 それをアップしてから、もうひとつ別の文章を書く。


『相方の白桃へ お祝いの言葉ありがとう。俺も白桃と出会った時から、ずっと白桃大知という存在に助けられてきた。白桃大知を愛してる。これからもずっと隣にいてほしい。嫌か?』


 SNSで呟くと、ファン宛の方よりも、白桃大知宛に書いた言葉の方の反応がすごかった。ファンたちが次々にいいねやコメントを書いていく。


 脱衣所にいたままの白桃大知が返信してきた。


『嫌なわけがないです。もう遥斗くんに誤解されたり、遥斗くんを泣かせることは絶対にしません。だから僕の隣にずっといてください。これからもずっと一緒にいたいです。遥斗くん、僕は遥斗くんを、世界一愛してます』


 嫌か? と質問することにより煽るというか、強めな返信が来るかなとは考えていたけど、想像以上の返信が来た。


『そんなに前から両思いなの…?尊い』

『やっぱりこのふたり、リアルでも付き合ってるんだよ。だからあの記事はウソ』

『なにそれ、もしかして記事のことで遥斗くんが泣いたの?ってか両想いじゃん。ずっとふたりを見守り隊』


 作戦?は成功した。週刊誌に載った直後に比べると数は落ち着いてきたものの、毎日白桃大知が傷つけられることが書かれていた。男女関係はなかったのが真実だ。なら、俺らが出演していたBLドラマのイメージも利用し、ファンたちの視線を俺らに向けてしまえばいい。


「遥斗くん、返事書きました。本当に嫌だなんて、思うはずがありません。今まで一度もないし、これからも……」


 白いTシャツと短パン姿に着替えた白桃大知が目の前に来た。


「心の声が聞こえなくなってから、本当にずっと不安なんだ」

「なんで不安なんか……」

「白桃がため息をついたり、いつもと少しでも違う時は特に。俺、何か嫌なこと言ったかな? 嫌われてないかな?とか。だって、白桃の話、あんまり聞かせてくれないから……」 

「遥斗くんは、僕の話が聞きたいんですか?」

「うん、聞きたい」

「分かりました。僕も話すので、遥斗くんも本音を沢山教えてください。僕は、遥斗くんの全部が知りたいです」

「うん、分かった」


 白桃大知が微笑んだ。

 白桃大知の笑顔は、俺の心を見透かして全てを包んでくれているようで、尊い。


 白桃大知が、世界一愛おしい――。


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