04-01.作業開始
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本日より新章スタートします。よろしくお願いします。
“ソメイヨシノ”に搭乗してカレンさんのラボでニウライザの研究を始めて数日。
当初は僕に対する疑念のようなものを向けていたカレンさんの部下の研究員たちだったけど、この数日間の僕の仕事ぶりから何かを感じ取ってくれたのか、少しずつではあるけど打ち解けてきてくれた。
仲良しこよしなんてするつもりもないけど、ギスギスしたような環境でお互いに良い仕事が出来るはずもないので、良い傾向だとは言える。
カレンさんの部下である彼らはすごく優秀で、手も早い。これなら思っていたよりも早い段階でニウライザの精製方法を確立出来るかもしれない。
製薬会社でニウライザの精製を行えなくなってしまった今、せっかく体内にあるレギュレータの中和をし始めていたエディに処方されたニウライザも底をついてしまう。
経過を観察させてもらっていたけど、効果はしっかりと現れていたから継続した投薬が必要になるから、なるべく早くに少量ずつでも作って、送ってあげたい。
“ソメイヨシノ”の艦内で精製されたニウライザをどうエディに渡すのか。
それは僕が書いた手紙をリオに届けてもらった手段と同じ要領で行う予定だ。
僕は“ソメイヨシノ”の艦長であるアヤコ先輩にあるお願い事をした。それは僕が“ソメイヨシノ”に残ってニウライザの研究を行う為の条件の一つとして提示させてもらったもの。
いくつか条件はあるけど、その中のひとつにリオの護衛というのがある。
僕が少なくとも半年間の間、リオのそばから離れる事になってしまったんだけど、その期間の間のリオの護衛を依頼した。
ソメイヨシノ隊を指揮する上層部は、世界中の様々なところに諜報員を放っているらしいので、その力を貸してもらって表立ってではなく影からリオを守ってもらうように頼んだんだ。
その諜報員に依頼して、僕の手書きの手紙をリオに渡してもらう手筈になっていたんだけど、どうやら上手く渡してくれたらしく、リオもなんとか状況を把握してくれたみたいだ。
とはいっても、もちろんリオに寂しい思いをなるべくさせたくはないし、なにより僕自身がいち早くリオの元に帰りたいと思っている。
その為に早くニウライザの精製を急がなければ。
その点に関しては心強い味方が着いていてくれる。そう、アカギ教授だ。
やはりというのか、アヤコ先輩とアカギ教授は知り合いで教授と教え子の関係だった。
アカギ教授に事情を話して協力を得た訳だけれど、まさかアヤコ先輩とそのように繋がるだなんてアカギ教授が思うはずもなく、物凄く驚いてらっしゃったな。当人の僕も相当に驚いた訳なんだけど。
けれど、あの製薬会社の主任が暗殺された件もあるので、表に立っていらっしゃるアカギ教授に動いてもらうのも危険だと判断して、表立っての研究は控えてもらうようお願いした。
まさか万が一の事があってはダメだから。
〝裏〟の存在である“ソメイヨシノ”で研究を進めつつ、アカギ教授にはご助言を頂くと言った方法をとった。
アカギ教授も僕に色々聞きたいこともあるみたいだし、今もこうして暗号化通信装置を使って彼の相談に乗っているところだ。
アカギ教授との通信を切ると僕の後ろにいたカレンさんと研究員達が目を白黒させていた。不思議に思ってたので、どうしたのか尋ねる。
するとカレンさんが声を振るわせながら言う。
「き、君のような少年があの著名なアカギ教授に助言しているのに驚いてね……。いや、君は並々ならぬ知識を持っているとわかってはいたんだがな。まさかあのアカギ教授すらも君に頼ってくるだなんて驚いてしまったんだ」
う、まぁ確かにそう言われたら不思議かも知れない。
何せ僕には彼らよりも5年も多くの知識がある。それは多くの場合に大きなアドバンテージになり得るし、特にここ数年、MKなどの兵器の成長は著しい。
ただでさえ目まぐるしく進歩していくテクノロジーなのにも拘らず、僕が持ち込んだブラックテクノロジーが流出して、“ワルキューレ”のチェイサーミサイルのような当時の科学力を上回る兵器が生まれてきている。
けど僕が驚いたのは、“ソメイヨシノ”に配備されている第4世代MKだ。
ダリル基地やアラスカで僕たちを襲った黒い機体。特殊部隊が被るヘルメットを思わせるバイザー付きの頭部、マッシブな追加装甲を全身に纏わせた屈強なボディ。それを漆黒色に塗装した、未来の知識を持った僕のですら知らないMK……。
機体名“ファントムクロウ”を独自に持つテクノロジーのみで生み出したカレンさんの手腕は本当に驚くべきものだった。
ダリル基地で回収したジェネレーターを“ブルーガーネット・リバイヴ”に転載する時に気がついたんだけど、それは間違いなく僕の知るこの時、この時代には未だ生まれていなかったはずの技術が詰まっていた。
たまたま僕には未来の知識があったから弄れたものの、それがなければ整備すらうまく出来ないだろう。ロイ軍曹やミーシャさんにはその辺りの申し送りはしっかりしておいたから良かった。
そんな世界水準を上回る兵器を生み出せるような力を持ったカレンさんが、僕の元にやってきた。少し申し訳無さそうだけどなんだろう?
「アカギ教授にすら助言してしまう君に私からも相談をさせて欲しいんだ」
と。
話を聞くと、どうやらカレンさんはその世界水準を上回る機体“ファントムクロウ”にすら満足がいっていない様子だった。
なんでも今の彼女らの任務であるカスタマイザーの保護だけれど、その任務の特性上、敵味方関係なく戦死者や負傷者が多数出てしまうんだとか。
それは……そうかも知れない。
カスタマイザーを相手にするだけで一般的な腕前を持つパイロットが無傷で済むはずもないし、この“ファントムクロウ”を用いたとしても、カスタマイザーが誇る圧倒的な技量に対応するのは難しいと思う。
あのエディ相手に、次世代機8機投入してようやく圧倒する事は出来たけれど同世代MKである“ワルキューレ”に対してはなす術なく撃破されてしまった訳だし。
国際連合軍に敵対する組織であるソメイヨシノ隊にMK技術的なアドバイスをするのはどうかと一瞬思ったけど、カスタマイザーを保護してニウライザで救い出す事ができるようになるはず。
ソメイヨシノ隊が、カレンさんが持つ技術をさらに伸ばせば、保護活動も効率的になるんじゃないのか。
そう考えた僕はカレンさんから話を聞いてみようと思い至った。
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