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03.1-03.幕間 ※アヤコ・イチノセ視点


 MK(モビルナイト)や巨大宇宙戦艦の開発、製造、販売、それに伴う業務を一手に担う会社ナナハラ重工の社長令嬢として私、アヤコ・ナナハラは産まれた。


 父や母は本社のある東京に住んでいたが、私はナナハラ重工の発祥の地である広島で育った。


 両親と一緒に暮らせなくて寂しかったのかというとそうではなくて、私にとって両親とはお盆と年末年始に会う存在。それが当たり前になっていたし、身の回りの世話をしてくれる家政婦さん達がいたから寂しさは感じなかった。


 5歳くらいの頃、突然私は数人の家政婦さんと一緒に沖縄にある離島に引っ越す事になって、今まで名乗っていたナナハラではなく、母の旧姓であるイチノセを名乗る様にと言われた。


 その時は何が何だか分からなかったけれど、今なら分かる。


 その時すでに政界進出を目論んでいた父は移り変わる世界情勢の中で渦巻く不穏な動きに気づいていたんだと思う。


 宇宙開発事業で大金を得たレイズが独立へと乗り出すのでは無いかと。独立運動の先にあるのは戦争。

MK(モビルナイト)製造事業従事者だからこそ、そんな社会の流れを掴んだのかも知れない。

 

 国と国の付き合いだけでは戦争は回避できないと、国益を、国民の安全を、多彩なしがらみがある国家間のやりとりのみでは戦争はいずれ始まると。


 それを陰でコントロールする為の組織、どの国にも属さない組織が必要であると考えたんだと思う。


 それから私はナナハラの名を伏せて、イチノセとしての生活が始まった。


 と、幼かった私が父の意思を理解するはずもなく、突然移り住んだ沖縄の海をみてポケーとしていた時、私に声をかけてくれて一緒に遊んでくれたのが、近所に住む同い年の少女、アスカだった。


 私は広島弁、アスカは沖縄弁。お互い何を言ってるのか最初はわからなかったけれど、木登りや釣り、水泳には言葉なんて要らなかった。

 

 私が沖縄に移住して10年、水面下で力を貯めていたレイズがとうとう独立運動を開始する。世界大戦の開幕だった。

 

 お互い成長して15歳になっていた私たち。アスカは志願兵として日本軍に、私は北海道にある防衛学園に入学する事になった。

 沖縄の兵士学園でも独学で自分を磨く事は出来たけれど、やはりアカギ教授がいる防衛学園は魅力的だった。


 防衛学園に通いながらも私は極秘裏に父が製造を目論んでいた戦艦“ソメイヨシノ”の開発に携わっていた。


 そう、私はアカギ教授の技術を吸収して、それを“ソメイヨシノ”の設計に組み込んでいった。幸いにも私には戦艦設計の才が備わっていたようで開発は順調。そのおかげで“ソメイヨシノ”は他の戦艦に追従を許さない程の高性能艦に仕上がった。


 無事“ソメイヨシノ”が完成した時、私は防衛学園の教官をしていた。有能な兵を育成しつつ、目ぼしい学生を極秘傭兵組織として活動を開始する予定だった“ソメイヨシノ”に引き込む為に。


 その頃からアカギ教授はレギュレータの、カスタマイザーという強化された兵士の研究にも尽力されており、私もその研究に加わっていた。

 あのガーランド……当時は大佐がカスタマイザーの育成に関わっているという情報を掴んだから。そんな情報部から流れてきた話があまりにもショックだった。


 カスタマイザーは、ひとりいるだけで戦場が覆る様な存在。殺戮のために作られた兵器。

 

 “ソメイヨシノ”の艦長になった私は上層部の方針もあって、世界中にいる諜報員から情報を集めて、カスタマイザーの所在を突き止め、彼らの保護に乗り出した。

 彼らの体内にあるレギュレータを排除する方法がわからない以上はそうするしかなかった。


 しかし圧倒的な戦闘力を誇るカスタマイザーを捕獲するのは容易では無かった。

 

 時には敵施設に潜入して拉致じみたこともやってきた。でも彼らと出会うのは戦場が殆どで、カスタマイザーではない敵も、味方も次々に死んでいった。


 そして連れてきたカスタマイザーは薬品で眠らせて栄養を点滴で与え続けるしかない。眠らせないとレギュレータ切れを起こして暴れ出してしまうから。

 人体に無害な薬品で眠らせているとは言っても、果たしてこれは人道的な行為なのだろうかと……いや、答えは出ている。


 保護するまでに人が死に、保護してからもこんな事では……。

 

 でもこのカスタマイザーを戦場に戻したらもっと多くの人の命を奪うんだ。それが悲しみや憎しみを産んで新たな争いを生む。そうだ。だからこれでいい。こうするしか無いんだ。

 

 ただ生かされているとしか思えない彼らを見て、私はそう自分に言い聞かせた。


 そうしないと自分を嫌いになってしまいそうだったから。


 保護した彼らを通常の生活に戻す為の手段を見つけなければいけない。そして何より保護の方法が思いつかなかった。


 カスタマイザーを保護するために人が死んでいく。どう考えてもおかしい。被害を最小限に抑えなければ。


 そうだ、ただ戦うだけじゃダメだ。


 敵を上回る機動力を以て相手を圧倒しなければいけない。


 カスタマイザーにされてしまった人を救うためにそれ以外の人を殺してしまう様な戦い方ではダメだ。


 そう悩んでいた時に出会ったのが、レイズでMK(モビルナイト)開発をしていたカレンだった。

 

 

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