03-14.追撃
メインスラスターを炊いて、黒いMKとの間を詰める。バズーカを撃ってくるヤツともう一機が一定の距離を保って攻撃してくる。
距離を詰めた分だけ離れていく。なんだかすごくやりづらい。
この“ワルキューレ”はこの時代では最速クラスの速度を出す事が出来る機体だけど、その代償としてエネルギー効率が非常に悪く活動時間が非常に短い。
当時は短時間のみの任務を想定した機体だったけれど、全力稼働で3分しか保たない機体は使い勝手が悪すぎる。
一応、その対策としてエネルギーパックを交換できる様に少し改造した。とは言っても、エネルギーパック自体は大きな物なので帰艦しなければ交換は叶わないんだけど。
380mm弾を一定間隔で放って来ているが、無駄な機動でエネルギーを消費するわけにはいかないので、出力70%に抑えて最低のモーションでかわしていく。
弾速が遅いとは言っても立て続けの回避はそんなに簡単な事ではない。スピードに乗りつつも丁寧にひとつひとつを躱していく。
距離を詰めて得意な近接戦に持ち込みたいところだけど、黒いMKは木々をうまく利用して一定の距離を保とうとしている。後退しながらバズーカをぶっ放してくる辺り、結構難しい芸当をやっている。
第4世代MKを任されているだけあって中々の腕前みたいだ。それとどうしてもバズーカを命中させたいらしい。6発撃ち尽くしたところで新しい弾倉に交換して更に撃ってくる。
当たった時の破壊力はフォトンライフルの比ではないにしてもこれだけ見極められているんだから攻撃を考えた方がいいと思うんだけど。
「やりにくいな。それに連携が取れてる」
あの黒い機体に付き従うように控えている敵“ティンバーウルフ”の動きも良い。黒いMKなマガジン交換する時などは隙が生まれないようにきっちり牽制射撃を行ってくる。
それが終わればまたバズーカ攻撃だ。
不思議と僕はあの機体に執着していたようだ。本来ならそんな意味のわからない衝動に身を任せるのは好きじゃない僕だけど、あの襲撃に参加していたであろう機体を、いや、パイロットを許す事が出来なかった。当然顔は見えないけど、それでも感じた気配。多分だけど間違い無いと思う。
理由はどうであれ、この機体を奪うなんて自己中心的な理由で攻撃してきたアイツらが僕はどうしても許せないらしい。あの戦闘で命を落とした味方兵も大勢いたし、あと少しでエディも死ぬ所だったんだ。
僕は“ワルキューレ”にフォトンライフルを構えさせる。フォアグリップを左腕に握らせ、戦闘モードを射撃モードに移行させる。
コクピット内の360°モニターにレティクルが表示される。素早く照準を合わせて発砲。狙い通りの位置に発射出来たが、敵機が身を翻して回避。射線上の木々が赤い炎を上げて燃え上がった。フォトンライフルのボルトハンドルを引いて排莢、装填。もう一度、発砲。
再びフォトンライフルが吠えて猛烈な勢いでフォトンビーム弾を吐き出した。
青い閃光となったフォトンビームは数瞬で間合いを駆け抜け、黒いMKの頭部を撃ち抜いた。しかし致命傷には至らず、なおも健在だ。入れ違いに敵“ティンバーウルフ”が前進し、援護を行なっている。
「……? コクピットを開けたのか?」
MKの頭部には各センサーがたくさん詰まっている。それを失えば当然コクピットに映像を送る手段がなくなってしまう。
目を失ったMKは残されたサブカメラのみで運用しなければいけなくなる。が、あの黒いMKはなんとコクピットハッチを開いて肉眼で照準をしようとしている!?
正気の沙汰じゃない。この高速移動の最中にそんな事をすればコクピットに剛風が流れ込んで来て操縦どころじゃないはずなのに。
けど確かに黒いMKはバズーカを構え続けている。トリッキーな事をして動揺を誘おうとしているのか、でも確実に足は遅くなったぞ。
僕は操縦桿を押し込んでジェネレータ出力を最大まで押し上げ、頭部60mmバルカンを集中砲火させて敵“ティンバーウルフ”との距離を一気に詰める。
“ティンバーウルフ”はそれをサイドステップで避けながら90mmサブマシンガンで応射。僕はそれをシールドで防ぎながら右腕マニュピレータにフォトンセイバーを装備、青色の光の刃を発生させて横薙ぎにひと振り。
相手はそれを上手くシールドで防いだ。しかし、それこそ僕の狙い。至近距離から頭部60mmバルカンを相手の首元に狙いを定めて撃ち込む。
普段なら牽制程度にしか使えないこの頭部バルカンもこの至近距離から撃ち込めば十分に攻撃力を発揮する。装甲を貫く事は叶わずとも、装甲の繋ぎ目に突き刺されば内部機関の破壊は十分出来る。
この角度からなら、そう、コクピットにだって届くだろう。主人を失った“ティンバーウルフ”はシールドを構えたまま動きを止めた。少し手こずった、けど確かに撃墜出来た。
『――』
その時不意に何かが過った。
何?
そう思った時に目の前が真っ暗になった。
瞬間的にまた対MKチャフを食らったんだと理解したがもう遅い。
あの黒いMKが放ったものか、あの執拗なバズーカ攻撃はこのチャフ弾頭を紛れさせるための布石。コクピットハッチをひらいたのも自機がチャフの影響を受けても照準出来るようにする為の手段だったのか。頭部を失ったのはただの偶然……。
くそ。
暗闇となったコクピットの中で僕は拳を叩きつけた。
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03-13.森林戦の改稿を行いました。
“ブルーガーネット・リバイヴ”のクロー砲。
152mm散弾砲→197mm掌部散弾砲に訂正。
その他、戦闘描写の追加。
以上です。よろしくお願いします。