03-13.森林戦
カタパルトからの出撃からややあって、後から射出されたライドブースターを空中でキャッチして素早く飛び乗ると戦闘が起こっている最前線に急行した。
カナダからアラスカに流れ出るユーコン川沿いに大きく広がる森の所々から爆炎と黒煙が上がり、驚いた鳥たちが一斉に飛び立っていく。
あの虐殺テロの時の光景からしてみればまだ可愛い方だけど、いま目の前に広がるのは間違いなく戦場だった。
見える範囲にいる敵機は、正面に5機。両翼からそれぞれ4機ずつ。距離もあり全貌は確認出来ないけど、味方機からの情報を集めると次世代MKが数機混ざっているみたいだった。
3方向に分かれてこちらの戦力を分散させる戦法か。僕たちは味方機が1番手薄な正面へ向かう。
先に出撃したエディの機体が見える。
4つのメインスラスターを利用して驚異的な加速で相手に肉薄、両腕前腕部に内蔵してあるフォトンビームジェネレーターからセイバーを射出させて敵機に襲い掛かる。右腕のフォトンセイバーを受け止められたら左腕のセイバーを利用して叩き切る。
“ブルーガーネット・リバイヴ”の最大の特徴ともいえる両腕の大型クロー・アームは電気駆動モーターと油圧駆動を併用している為に非常に強力な握力を生み出す事が出来る。
MK離れした構造をしているので一癖も二癖もある機体で操作も確かに複雑だ。けど、エディは持ち前の操縦能力を発揮して機体を掌握しきっている。
右腕のクローで敵機を捕縛、身動きを封じたエディは『……捕まえた』と呟いた。
次の瞬間、クロー・アームの支点。人間の掌に位置する部分に増設した197mm口径掌部散弾砲が吠えた。
大口径の砲口から強烈なマズルフラッシュが瞬き、轟音が響き渡った。発砲の勢いで遊底がスライドして空薬莢が排莢された。
腹部を拘束され身動きが取れない状態からゼロ距離で砲撃を食らった敵機は腹部がバラバラと破壊され上半身と下半身が分断され、機能を停止した。
この武装は旧式の“ブルーガーネット”で彼女が好んで使用していた152mm口径散弾砲を新機種でも使えるようにして欲しいとエディからリクエストがあった武装だ。
従来の散弾砲の使い方とは異なる使い方だけど、相手の懐に飛び込む戦法を好むエディは銃口を敵機に押し当てて発砲するスタイルで敵機に大穴を開けられる非常に馴染みの深い武装だったみたいだ。
敵“ティンバーウルフ”やダリル基地で戦闘した強化アーマーをつけた黒い第4世代MKとも互角以上に渡り合っている。
やっぱりエディの腕はすごいな、先日完成したばかりの新型をもう自分のものにしている。
彼女の副官、メイリン准尉も自身のオリジナルカスタムが施された“ティンバーウルフ”を巧みに操りエディの死角に入ろうとする敵を狙って牽制攻撃を仕掛ける。中距離支援に特化した機体を駆使してエディの戦闘の邪魔にならないように、けれどもしっかりとサポートして戦っている。
僕も2人から少し離れた所で配置についた。すると“ブルーガーネット・リバイヴ”との戦闘に備えていたであろう2機が“ワルキューレ”の存在に気づいた
らしく、実弾のマシンガンで牽制しながら近づいて来ていた。
一機は“ティンバーウルフ”、もう一機は、あの黒い次世代MKだ。
『――』
「……前のやつか?」
不意にそんな予感が過った。
前のやつというのはダリル基地に襲撃してきた時に唯一取り逃した一機。機体はまぁ量産型だしどれも同じように見えるからそれで判断するのは難しい。けど確かにそんな予感がした。
エディ達が戦闘をするエリアからやや離れた所に展開するその機体は、脇に巨大なバズーカを携えている。380mm口径ハイパーバズーカ。弾速こそ遅いが、一撃の破壊力は必殺の威力を誇る兵器だ。
いくつかのタイプの弾頭を選択可能で、対MK戦では散弾、対艦戦闘の際は榴弾が用いられる事が多い。
いくらこの時代最強の装甲ルナティック合金だとは言っても無敵ではない。散弾に関しては敵機との距離と当たり所、榴弾に関しては直撃すれば致命的なダメージを負う。
あの黒いMKとの距離はまだあるが、敵機はバズーカを腰に構えて発砲の姿勢を取った。
この距離で散弾はまず有り得ない。当たっても弾き返せる。となれば破壊力がある榴弾か。弾丸の先端が装甲に触れた瞬間に爆発してルナティック合金の鎧を吹き飛ばす威力のある弾丸だ。
強靭な装甲を誇る“ワルキューレ”に対しての戦法だろうけど、
「当たらなければ、どうという事はない!」
一発、二発と発射された弾丸と十分に距離を開けて回避する事が出来た。僕が躱した弾は背後に広がる森の地面に当たって木々を吹き飛ばして炎上した。
あの手のバズーカはマガジンから装弾出来るタイプ。単発式ながら、スムーズな装弾が可能である程度のスピードで連射が可能だ。
だけど、どれだけ狙ったとしてもこの“ワルキューレ”のスピードを捉えられるもんか。
僕は相変わらず正面からバズーカの連射を試みてくる黒いMKとの間をメインスラスターの推進力で一気に詰める。
前回取り逃したやつだ。今度は逃がさない。
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