03-10.戦艦
いつものメンバーに整備補助員としてリオを加え、再編成されたエディータ隊が乗り込む艦は前大戦で活躍した“ヴィーナス”を艦隊旗艦とした巡洋艦“ハーリンゲン”。
巡洋艦というだけあって、その性格は非常に戦闘向き。多くの武装と機動性、そして何より高い積載量を有した艦で、運用のしやすさから数隻製造された人気の高い艦だ。
今回の要人護衛にはエディータ隊の他にも他の基地からいくつかの小隊が編成されており、格納庫のMK用固定ハンガーは全て埋まっている。
いつものメンバーだけでなく、他の小隊の人達と一緒の場所で仕事をするのはなんだか新鮮で、緊張感もある。
それぞれのチームから様々な兵が集まって来ているわけだけど、やはりというのか、僕たちエディータ隊の機体はどうも目立つようで、他の隊の人たちからアレやこれやと聞かれて答えるのがすごく大変だった。
僕の“ワルキューレ”は表向きは第4世代のMK。最新鋭の装備であるフォトンライフルなんて見た事がない人ばかりだからその事だけを話すのはまぁ良いんだけど、実のところカスタマイザー専用機であるのだからそこを上手く避けながら説明しなければならないから気を使わないとボロが出てしまいそうになる。
それと思いのほか突っ込まれたのが、僕が設計したエディ専用機“ブルーガーネット・リバイヴ”だった。他のMKに並べたら明らかに異質な外見してるし、それも仕方ないとは思うけど。
両脇のスラスターから伸びる床につきそうな程に長い両腕のマニュピレータは三つ指のクロー・アームだし、ジェネレーターは敵から奪った次世代の物だ。考えてみれば第4世代MKが2機も配備されているってすごいことなんだよね。
そしてそれを駆るパイロットはあの〝女傑〟エディータ・ドゥカウスケート少尉。
僕たちは普段からエディとの距離が近いせいでたまに忘れてしまいそうになるけれど、やはり彼女は軍の中でもかなり有名な士官の1人なんだと実感する。
こうして艦の通路を隊のメンバーで歩いているだけで周りから集まってくる視線には様々な感情が込められて居るのがわかる。
国際連合軍のエースとして尊敬して見る者、エディの美しさに見惚れる者、中には嫉妬のようなネガティブな感情がこもった視線を投げかけてくるやつもいる。
これが有名税ってやつなのかな、有名になったからって得する事もあるだろうけど僕はちょっとごめん被りたい。
エディは慣れたものなのか全然気にしていないみたいだけど。
それとは別に気になる視線が。これは僕にとってものすごく居心地が悪い視線というのか、
「おい、あの整備兵の子、可愛くねぇか」
「めちゃくちゃ可愛い……ってかでもまだ子供だろ」
「年なんて関係ねぇよ、あのエロい身体付き見ろよ。もう完璧にオンナだろ、全然イケるぜ」
と、下衆な視線を僕のリオに向けてくる輩が多数居るのが気に入らない。
確かにリオは可愛くて美人で天使な女神だからついつい見てしまう気持ちは分かる。わかるけどやっていいかは別だ。
もちろん許されない事なので思い切り殺意を込めた視線をそいつらに放っておいた。
「お前声掛けてこいよ」
「お、行っちゃう? 声掛けちゃう?」
「……」(ジロリ)
「「ヒェッ…………!」」
とんでもない事を言い出す人たちだな、そんな事したら絶対許さないんだからな。そんな事を万が一したものなら立場とかそんなもの無視して徹底的に分からせてやるからな。
「……? どうしたの、コータ」
「ううん、何でもないよ」
隣を歩く天使、もといリオににこやかに微笑みかけてから彼女の手を取って、すべすべだけど心地よい冷たさのリオの手の感触を堪能する。
こうやって見せつければリオに近寄ってくる人は少なくなるはず。
「あ……」
するとリオは顔を少し赤く染めて恥ずかしそうにした。けれど繋がれた右手をしっかりと握り返してくれた。
「なんだよ彼氏持ちか。……ってあいつ新型のテストパイロットじゃないか」
「あの年で相当の腕持ってるらしいぜ。あーあ、あれくらいのエリートじゃなきゃあんな可愛い子寄って来ねえのかな。やってらんねぇ」
……て、テストパイロットって僕の事?
本来なら新型機のテストパイロットなんて相当の腕を持った兵士が務めるもののはず。それに間違われているなんてたまったもんじゃないぞ。だからエリートだなんて言われるのか?
どこをどう見ても手練れには見えないでしょ。僕なんか未だ声変わりすらしていない子供だよ、いや、他の人より遅いのは自覚してるけどさ。
でも、周りからそんな目で見られてるのか僕は。確かに僕みたいな子供が新型機のテストパイロットだなんて噂が流れたら視線も集まるか。これは少し身を引き締めなくちゃね。
気合い入れてどうにかなる問題でもないけど、注目されているのは確かだ。
僕自身の行動がE.M.Sやエディの評判にも直結するからしっかりやらなきゃな。
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