03-04.改修
僕が描いた“ブルーガーネット”の改修用設計図がなんと通ってしまった。
僕の改修案をひどくエディが気に入ってくれたらしく、本人の意見が尊重された形になったという事だと思う。直接彼女が……いや、正確には彼女の気持ちを汲み取ったメイリン准尉が上層部に上手く掛け合った。というのが正しいとは思うけど。
メイリン准尉のプレゼンはきっとエディを思う気持ちが入った良いものだったに違いない。
それで今はその改修作業の終盤に差し掛かった所だ。その改修作業もE.M.Sでさせてもらえる様になったため、連日“ブルーガーネット”の回収整備を続けている。
“ブルーガーネット”の隣には事実上の僕専用機になった“ワルキューレ”と、僕が初めて乗り込んだ機体、“ティンバーウルフ”。その3機がラックに並んでいる景色はなかなかに壮観だ。
僕がこの格納庫に来た時は使い古された“ティンバーウルフ”1機だけだった事を思うとかなり賑やかになった。その内の1機が〝女傑〟の機体だなんてE.M.Sにも箔がつくというモノだ。まぁ常日頃からミーシャさんは“リトルダーナ”内で整備をしているんだけど。
改修整備が始まった頃は車椅子だったエディも今は作業を手伝える様になるまで回復し、トレーニング量も徐々に増やしていけるようになった。
感情をあまり表に出さないエディだけど、やはり“ブルーガーネット”に愛着はあるみたいで、日に日に完成に近づいていく愛機の姿を見るのが楽しい様だ。
リオも整備補助員としてかなり板に着いてきているから、作業も相当に捗った。やはりというか、人の動きをよく見てサポートに徹してくれている。
もともと人を思いやる優しさを持っている女性だから仕事でもそれが活きているんだろうな。彼女といると仕事がすごく捗る。リオと一緒にいる、という精神安定剤的な役割も大きいとは思うけど。
ダリル基地襲撃の際に受けた“ブルーガーネット”の大きな損傷は左肩から下と、右腕上腕部の欠損。それを単に改修するだけでは、次あのような敵と遭遇した場合に同じ事の繰り返しになってしまう懸念があった。
もっとも今回の襲撃は次世代MKが8機。そのような仮想敵を想定しているはずもなく、あのような結果になってしまった。
けれど、それだけの敵と遭遇する可能性があるのであれば、それ相応の装備が必要となる。
という事はそれなりに大胆な予算が下りる可能性があり、大幅な改修が可能という事でもある。もちろんそれはエディの実績あっての事で、彼女ほどのパイロットがあれだけ苦戦したともなれば大幅な戦力アップを図るのは当然だろう。
かと言ってとびきりの特別な装備を物資の調達が難しいと運用に支障が出る可能があるので、そこは慎重にならざるを得ない。
特別な装備とは例えば“ワルキューレ”に装備されているカスタマイザー専用兵器のチェイサーミサイルがそうだ。
弾薬からプログラムに至るまで特別な兵装であるから、代わりが簡単には用意できない。そして試作兵器なので、改修後の“ブルーガーネット”にも転載する事が難しい。
ちなみに僕の専用機にしてしまった“ワルキューレ”のチェイサーミサイルは取り外す事なくそのまま運用する事になった。カスタマイザーじゃないと軌道を変えられないけど、ノーマルなミサイルとしての運用は可能だから。
けどただのミサイルと違って一発あたりの値段が跳ね上がるから使い所は慎重にしないといけないけど。
話は逸れたけど、多数の第4世代MKに対抗出来る第3世代MKの改修が必要になる。
8対1で、とは言わずともエディの技術を用いて4対1という状況で持ち堪えられる装備。それを目指した。……結果、
「すごい、これでほぼ完成かな? まるで別の機体だね……」
最後の作業、別で組み上げていた両腕を取り付け終えたところでリオが感嘆の声を漏らした。毎日一緒に作業はしていたし、図面も何度も見たとは思うけど、やはりこうして目にするとそう言わずにはいられなかったんだろう。
それもそうだと思う。だって僕が設計した新型“ブルーガーネット”はフレームこそ再利用しているけど、機体コンセプト自体が〝今の〟エディに合わせて設計した機体。
従来の“ブルーガーネット”は一撃離脱を目的とした機体コンセプトの元、設計された機体だ。
実弾兵器を機体に多数装備させているため機体の総重量がアップする。
その機体重量をカバーするためにジェネレーター出力を機体各所のスラスターに当てており、短時間での戦闘を余儀なくされる。前回の戦闘でもエネルギーが枯渇して起き上がる事すら叶わないほどだった。
「どう? 新しい“ブルーガーネット”は」
「今までのMKとは全然違うね。“ブルーガーネット”が元になってるなんて誰も思わないんじゃないかな」
僕が設計した初めての機体。それは今ある技術を最大限活用し、僕が持っているブラックテクノロジーを現時点の科学力で可能な限り実現した新機体。
言わば、第3.5世代MKとでもいうべきか。
「このMKではどんな闘い方が出来るの?」
「良かったら解説するよ。エディも一緒に聞きますか?」
「……」
と、リオの傍にいたエディはこくりと頷いた。彼女は整備もたくさん手伝ってくれたけど、この際だから説明を兼ねて解説してもいいかもしれないね。
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