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03-02.試験開始


 試験内容はMK(モビルナイト)の実機、今回は“ティンバーウルフ”を操縦してMK(モビルナイト)用に作られたコースを時間内に走破する、というものだ。


 イメージとしては歩兵が行うアスレチックを使った訓練のMK(モビルナイト)版みたいな感じだろうか。走って跳んでくぐって登って。人間の体を模した兵器であるから、それに近い動きをMK(モビルナイト)にさせられるかどうかというのを見ていく事になる。


 そしてコースの所々から敵からゴム弾が射出されたり、シューティングターゲットが出るので逆にゴム弾で撃ち抜く。それらに被弾したり、外したりすると減点となる。実戦も想定しているのでこのような試験内容だ。


 戦闘形式の試験は無い。これはライセンス試験であるから、戦闘技術はライセンス取得後に磨いていく事になる。受験者の多くはシミュレータ訓練や各種学園などでそのような訓練も十分に行なっている者がほとんどなので、この時点でそれなりに戦闘も行える者が多いのではあるけれど。


『それでは行くぞ二等兵』

「あ、はい……」


 さっきの人の声が内部スピーカーから聞こえてくる。もういいや二等兵で。


 さっきの人の合図で試験が始まろうとした時、


『おいタチバ伍長! 貴様また勝手に試験官ごっこを始めたのか!』

『ひっ、中尉殿! 申し訳ありません!』

『後輩にいい格好したいのは分かるが他にいくらでもやる事があるだろう。貴様はそんな事をしているから……いや、もういい。伍長の仕事はターゲットドローンの操作だ。位置に着け』

承知しました(イエッサー)!』

「……な、なんだ?」


 試験監視塔の中で何かがあったみたいで“ティンバーウルフ”の内部スピーカーからそんなやりとりが聞こえてくる。え、試験官ごっこって何?

 話から推測するにあのタチバとかいう伍長は本来の試験官ではなかった?

 僕の仮説を肯定するかのように怒鳴っていた方の男性、中尉? が補足してくれた。


『すまんなコータくん。奴は私の目を盗んで試験官の真似事をするのがどうも好きみたいでな。先程のシミュレータ訓練は私が行ったから不備はない。安心してくれ』

「そ、そうですか」


 確かにシミュレータ訓練の時はさっきのぽっちゃり伍長はいなかった。なるほどそういう事か。

 パイロットライセンスを持っていない人が試験官だなんておかしいと思ったよ。

 さっき立ち会ってくれた人が見てくれるなら安心だ。どうしてそんな事したのかは知らないけどそんな〝ごっこ遊び〟に付き合っていられないし。

 自分がライセンス取れなかったから? いや、考えすぎかな。

 

『試験に変更はない。準備が整ったら言ってくれ』

「はい、いつでも構いません」

『よし、カウント5でスタートだ。武運を』



 僕は“ティンバーウルフ”を駆り、様々な障害をクリアしていく。

 市街地に見立てたエリアを駆け抜け、物陰から現れるシューティングターゲットをゴム弾が装填してあるサブマシンガンで撃ち抜き、逆に物陰から現れる移動砲座からの射撃を躱して応射する。


 シミュレータでは既に授業で開始されているが、実機での訓練ではまだこのカリキュラムには到達していない。今でこそこうして操縦が出来ているけど、これは1周目で培ったスキルが活かされているからこんな事が出来るだけ。


 けど多分、リオやシャルは未経験でもきっとやってしまうんだろうな。彼女らはいわゆる天才だと思うから。僕にはない才能だ。


 僕の長所をあえて上げるとするなら努力を積み重ねられる継続力だろうか。地頭も良くないし、体力も無い。けれど1周目の人生で防衛学園の過酷な訓練も特別な理由がない限り続けたし、勉強に勉強を重ねて一級整備士の資格も取得し、主席の成績で卒業して勲章まで与えられた。


 天才との差を埋めるには僕は回数を重ねるしか手段はない。だからこうしてMK(モビルナイト)の操縦も出来るようになったんだから。


 MK(モビルナイト)の半身が水没してしまうような河川に見立てたエリアを抜けるとゴールまではあと少し。しかしここからが中々の難関だ。


 ビルに見立てた障害物の影から小型ヘリコプターサイズのドローンが発進してきて、搭載してある機銃で狙ってくる。


 その撃ち出される弾丸にはセンサーが付いており、被弾判定が容易に行えるようになっている。以前はペイント弾が使用されていたが、後処理の利便性からそのような弾丸が使用されるようになった。回収して再利用も出来るしね。と、ここで予想外の出来事が起こる。

 

 明らかにドローンの数が多い……?

 

 僕は“ティンバーウルフ”の左前腕に装備させたシールドで上半身を守りながら半身になる。被弾面積を縮小させる為に。

 プロペラ音と機影の多さからスズメバチの大群、は言い過ぎにしてもブンブンと飛び回る姿は当たらずとも遠からずといった所か。


 このドローンはあのぽっちゃり伍長が操っているんだったか。とは言っても個々のドローンを操作しているわけじゃなくて機動は全てプログラムによるオートで制御しているはずだ。彼が出来るのはせいぜい発進、撤退の指示。それと、機体数の増減くらいだ。


 受験者する僕の年齢が若いから気に入らないのか? あの伍長に恨まれる理由なんて一切無いんだけど。こんな事して後からバレない訳ないのに。


 多分普通の判断ならシールドを用いて銃弾を凌ぎつつスラスターのダッシュ力を使い、多少の被弾には目を瞑って一気に駆け抜けるのがセオリー。

 けどこのドローン達からの一斉射撃を受ければあっという間に持ち点が無くなってしまう。


 となれば応射するしかないか。うーん。それは出来ればやりたくないんだけどな……。


 というのも、この“ティンバーウルフ”に装備されている銃弾はゴム弾ではあるけど、従来通りの口径が装備されている。手持ちのサブマシンガンは90mm、頭部マシンガンは60mmだ。それが小型ヘリに当たればコントロールを失って墜落するだろう。

 そう、そうなのだ。それらを全て撃墜してしまったとしたら相当な経費がかかるはずだ。

 かと言って応射を躊躇って万一被弾してポイントが無くなるのは不本意だし。数が少なければこんな事を考えることはなかったんだけどね。


 あの伍長、多分後からめちゃくちゃ怒られるんだろうなぁ。


 うん、でも手加減なんてするつもりないけどね。手心を加えてポイントを失いたくないし。


 全弾打ち尽くしたらシールドで叩き落としてやろうか、幸いにタイムはかなり巻いたので余裕があるし。細い息を吐いてから僕は引き金を引いた。






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