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02-28.夜明け

 あの事件から一晩が経った。


 ダリル基地では各所から火の手が上がり、近隣の基地から応援に訪れた消防用MK(モビルナイト)による消火活動が続いていた。


 あの海賊共が操っていたMK(モビルナイト)の残骸が横たわる滑走路。そのMK(モビルナイト)周辺には検証をしようと様々な部署の作業員が集まって来ていた。


 そこから十分に離れた所に赤十字マークの救護用のテントが多数組み立てられており、中では負傷兵の手当てなどが行われている。


 僕もそのうちのひとつに入って、ある理由があって簡易ベッドに横になっていた。

 僕は最後の1機を取り逃してしまったものの、怪我もなくなんとか生き延びる事が出来た。最後の1機に仕掛けようとしたその瞬間に、恐らく敵歩兵が放ったであろうチャフの影響を受けて光学センサーが一時的にダウンしてしまった。

 正常に作動した時にはもう遥か空の彼方だった。

 

 それはそれとして結果的に敵機の多くを撃墜する事に成功して、基地の防衛に一役買ったとはいえ、僕はドゥカウスケートにと用意された新型機に自分のパーソナルデータを書き込んで自分専用機にしてしまった。


 まぁ書き込んでしまったデータに関してはアークティック社の担当者に頑張ってもらって書き換えてもらうにしても、相当にまずい事をしでかしたと今となっては反省している。

 非常事態ではあったし、それなりの成果を上げる事が出来たので少しくらいは言い訳出来そうかな?


 とりあえずメイリン准尉がどれだけ働きかけてくれるかに掛かっているから、大いに期待しよう。

 だって責任は私が取るって言ってたし。准尉という階級がどれだけの責任を負えるのか僕は知らないけど、精一杯に頑張って欲しい。


 とは言っても、とりあえずは状況が落ち着くまでの間はお咎めなしだとは思う。

 多分、僕が“ワルキューレ”を乗り回していたのを知っているのはメイリン准尉や隣で寝息を立てているドゥカウスケート以外には数人いる程度だろうし。


 今僕の隣のベッドには治療を終えたドゥカウスケートが横になっている。


 “ブルーガーネット”で出撃したドゥカウスケートは奮闘し2機の敵MK(モビルナイト)を撃墜した。

 国際連合きってのエースがたったの2機……なんて思う兵も居るかも知れないけど、次世代MK(モビルナイト)8機に囲まれて2機撃墜したってものすごい事だと思う。


 いや僕は運良く5機撃墜出来たけど、それは“ワルキューレ”も次世代型のMK(モビルナイト)だから出来た事だ。僕の操縦の腕はドゥカウスケートの足元にも及ばないから、彼女が“ワルキューレ”に乗っていたのならもっと戦果を上げたに違いない。


 “ブルーガーネット”は大破してしまったし、本人も腹部に大きな裂傷を負ってしまったけど、それでもこうして生きて帰ってきただけでも褒められるべきだと思う。

 身を挺して基地を守ろうとしたのは彼女なのだから。もちろん彼女と一緒に出撃して散っていった兵士達にも敬意を払わなければならないだろう。


 今は落ち着いた様子で寝息を立てるドゥカウスケートだけど、一時はかなり危ない状況だった。


 というのも、戦闘中にメイリン准尉がドゥカウスケートを救出してくれた際に僕の気を散らさないようにドゥカウスケートは無事だと言う風に言ってくれていたんだ。

 

 でも本当は腹部に戦闘の衝撃で破損したモニターのガラスの破片が突き刺さり重傷を負っていたそうだ。

 緊急発進だった為パイロットスーツを着ていなかったのが災いした形になってしまった。でも全てのスーツに防弾機能がある訳では無いけどね。


 大きな血管を傷つけていたらしく、大量の出血があったため、輸血が必要だったんだけど、基地がこのような状況で更には一刻を争う。という事で偶然にも血液型が同じだった僕の血液を彼女に輸血する事になった。


 僕の中に流れる血が彼女の命を繋いでいる……なんて少し大袈裟だけど、やっぱり不思議な感じはする。


 だってまさか、1周目の時の虐殺テロに加勢していた因縁の相手の命を繋ぐ手伝いをする事になるだなんて考えもしなかった。もしかしたらドゥカウスケートと戦争していたかも知れないんだから、いや、僕はそのつもりだった。


 今となっては彼女の中にある【レギュレータ】を中和さえできれば、無益な争いなんてしなくても良い事は分かっているし。


 とりあえずは一安心、かな。


 そう思ったら少し眠くなってきた。

 徹夜してしまったし、体中の血液が少なくなったからなのかどうなのか分からないけれど瞼がすごく重い。


 ドゥカウスケートも目を覚さないし、軍医や看護兵も他の負傷者の診察や手当てで忙しいのかこのテントにはいないみたいだから静かだし。

 

 折りたたみ式の簡易ベッドは決して寝心地が良くはなかったけれど、静かに目を閉じた。


 

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