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02-20.新型説明会

「……新型専用機?」


 ヨナとメイリン准尉の元で話を聞いた僕ははてなとクビを傾げた。


「ああ、そうだ。専用機。エディータ先輩の専用機が配備されるらしくてな。今回の依頼はその機体輸送の護衛とその機体の取り扱い研修を受けてもらう」

「え、研修ですか」


 思いもよらぬ言葉を耳にして僕は思わず聞き返してしまった。するとヨナではなくメイリン准尉が代わりに答えてくれた。


「エディータ隊長の新型専用機をこちらのE.M.Sで整備してもらう事になっている。この会社の整備主任はキミだろう、コータ?」

「いやいや、僕はやっとで整備補佐員の資格を取ったばかりですよ? 二級整備士のミーシャさんがいるじゃないですか」


 このまま無資格でバイトをするのも良くないだろうと思い、とりあえず補助員の資格だけは取った。けどこの工場の整備責任者は社長のアルフレッド氏、副主任は“リトルダーナ”に出向しているミーシャさんだ。


「もちろんミーシャにも研修は受けてもらう。彼女には引き続き“リトルダーナ”での任務があるからな。作戦中はミーシャが担うが、帰還後の整備担当は君に任せたい」


 “リトルダーナ”内での整備はロイ軍曹やミーシャさんが、アメリカに帰還した時はこのE.M.Sで整備をするって事か。それはわかった。百歩譲って。けど分からないのは、


「何故E.M.Sなんです? ダリル基地じゃダメなんですか?」

「ダメだ。軍にも色々あるからな。今回の機種はかなり特殊な生い立ちがあってな、様々な事情が入り組んでいる為に外部工場に任せた方がいいと判断した、それに私のワガママでもある」

「ワガママ、ですか?」


 するとメイリン准尉は僕の目をまっすぐ見てこう言った。存分に含みを持たせて。


「エディータ隊長の機体は君に任せたいと思ったのは特殊な兵士(・・・・・)用に開発された機体だからな」

「……」


 特殊な兵士。それはつまりカスタマイザー用に開発された機体という事だ。


 カスタマイザー専用機だという事は当然搭乗者がカスタマイザーである事を知っている人間が整備しないと不都合が起こるだろう。機体の他の箇所はともかく、少なくとも中核部分に触れる人間は有識者である必要があると予測出来る。


「特殊?」


 その特殊という表現が気になったのか、ヨナが片眉を上げる。それに対してメイリン准尉は軽い仕草で返す。


「ああ、エディータ隊長は特別だろ?」

「なるほど、確かにエディータ先輩は特別(スペシャル)だ」


 特殊を特別と言い換えられれば、確かにそうだと納得した様である。

 ミーシャさんはドゥカウスケートがカスタマイザーである事を知らないはず。となれば、僕がその【専用】となっている部分の性質をよく理解して整備をする必要が確かにありそうだ。



 その日の夜、ダリア基地の一室で日頃からドゥカウスケート機に関わりのある整備兵向けに新型専用機の研修説明会が催された。

 

 その新型専用機の特徴としては、彼女が今まで使っていた“ブルーガーネット”に使われていたチタン複合金属製の装甲ではなく、この時代の最先端の素材【ルナティック合金】が使われている。

 軽くて硬い。しかし加工するのは容易な非常に優れた金属だ。けれど精製は月でのみ採掘される希少な鉱石を必要とする為に高価だ。


 この時代で最高の素材であるが、しばらくは最強の座を譲らない非常に優れた金属だ。


 それとジェネレーター出力の向上。

 ドゥカウスケートが得意とする一撃離脱の突撃戦法がより効率よく行えるように全身に潜ませてある各スラスターの出力が上がっている。

 ルナティック合金の採用で機体重量が飛躍的に軽量化された上にスラスターの出力向上。

 相当なスピードが出せる機体になった。もちろん高速移動するのならば、照準なども素早く付けなければならなくなる。パイロットの腕が無ければ容易に扱うのは不可能だろう。


 それとジェネレーター出力向上のもう一つのメリットとしては、フォトンライフルの採用だ。それはつまり第4世代MK(モビルナイト)が生まれたとそういう事になる。

 1周目より確実に早い科学の進展速度だ。


 戦艦級専用の兵器であったフォトンキャノンを小型化し、MK(モビルナイト)用に転用した武器だ。

 構想こそあったが、今までは機体出力では実現出来なかったフォトン兵器を搭載することに成功している。

 フォトンセイバー同様に敵機の装甲を焼き貫く事が出来る。これに対抗するには対フォトンコーティングを施したシールドなどが無いと太刀打ち出来ない。

 出力の兼ね合いで乱射するほどは撃てないが、それでも必殺に値する装備の一つだ。


 と、ここまでいい事づくしだけど当然デメリットもある。


 高出力故にパイロットを選ぶということは既に述べたが、エネルギー効率自体が良くなっている訳ではないので、それの消耗が非常に激しく、行動可能時間がかなり短くなっているという事。

 

 それと、希少な金属であるルナティック合金を使用している為に非常に高価な機種だ。

 もしかしたら敵機は撃破ではなく捕縛を目的としてくるかもしれない程に。


 なのでOSにパイロットの生体データを登録し、ドゥカウスケートにしか起動できないように厳重にロックをかけてしまう。

 そうする事で本当の意味で専用機にするという工夫が施されている。

 万一盗難されても新型を敵に回さなくて済む様に。


 と、ここまでが一般整備兵向けの説明。


「コータ、いいか」

「はい」


 説明会が終わり、整備兵達が散り散りに退室していく中でメイリン准尉に呼び止められた。

 彼女の傍には先程みんなに説明をしていた男性が控えている。僕の他にもダリル基地勤務だと思われる壮年の整備兵が2名呼ばれている。この人たちも恐らく彼女がカスタマイザーである事を知る数少ない人物なんだろう。

 

 これから僕は別室でさらに説明を受ける。

 1周目でもカスタマイザー専用機なんて出会った事がないから底知れない恐ろしさがある。



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