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02-06.母艦



 学園都市からリニアトレインで1時間程の距離にある国際連合軍基地。


 高いフェンスで囲われたその基地は、国際連合軍の本拠地とも言えるアメリカ本土の内地にあるという理由からか物理的防御力は低そうに見える。

 ようは簡易な金網風のフェンスで囲われているだけの比較的開けた基地だ。


 強化アスファルトの滑走路に一隻の小型戦艦が鎮座しているのが見える。恐らくあれが僕が乗り込む予定のMK(モビルナイト)用戦闘小型空母“リトルダーナ”だと思う。


 伏せた猟犬を連想させる外見で、前方中央にはMK(モビルナイト)発進用のカタパルト。背部には合計6基の大型スラスターが装備されている。


 主砲は回転台座式の低反動フォトンキャノンが前後に一門づつ。短距離対空ミサイル、自動制御の12.7mm対空機関砲が艦体各所に複数装備されている。以上がカタログの基本装備。これらの武装はほぼ自衛目的のものがほとんどで、艦自体の戦闘能力は他の巡洋艦クラスのものと比べても格段に低い。 

 そもそもこの艦は小隊規模での個別運用に向いているので、最適な運用方法だとはいえる。


 MK(モビルナイト)を最大2機格納可能。


 戦艦用に開発されたフライトシステムを搭載している飛行型の小型空母。

 小型艦用のフライトシステムなのでジェネレーター出力が低い。そのため高高度までの上昇はできないが、低空であれば単独での飛行が可能で、潜水もできる優れものだ。潜水した場合でも航行可能だが、機体が流線的な構造をしていないため、潜水航行を行うと水流が乱れる。よって静音性が非常に低く、高速航行は出来ない。使い方としては潜って身を隠す程度だ。


 確か聞いた話だと居住スペースが壊滅的に狭いんだよね。指揮官用の個室はオリジナルの艦体にはあったと思うけど、下士官、ましてや僕のような雑用係の乗組は格納庫で文字通り雑魚寝だろう。


 と思って携帯エアマットとハンモックを用意してきた。MK(モビルナイト)の整備用ハンガーにでも引っ掛けて寝よう。……寝る暇くらいあるよね?


 アカデミー指定の作業服を着て、大きめのショルダーバッグを引っ提げて基地のゲートに向かう。

 武装した守衛さんにEMSから派遣されてきたというとコンバーチブルの小型SUVで“リトルダーナ”の所まで送って行ってくれた。


 基地の外から見た“リトルダーナ”は小さく見えたけど、近づいてみれば十分大きい。何しろこの中に全高20m近い大きさのMK(モビルナイト)が2機格納出来るんだ。小型戦闘空母とは言ってもそれなりの大きさはある。


 見ると夜戦服姿の女性が1人、艦のふもとで佇んでいた。おそらく守衛室から連絡を受けて出迎えに出てきてくれたんだろう。


 年の頃は20代前半から半ばほどに見える。黒く長い髪を後頭部で結い上げる髪型。切長の瞳。軍人らしい少し肩肘を張った印象の女性だった。襟の階級章を確認すると准尉だ。


 この艦の大きさから察するに副官クラスかな。副官自ら出迎えてくれるなんて。僕は車が停車してから速やかに降りて敬礼をした。


「EMSより整備補助員として派遣されて参りました、コータ・アオイです。よろしくお願いします」

「よく来た。私はエディータ隊副隊長のヤン・メイリンだ。こうして顔を合わせるのは初めてだな、コータ君」


 声と名前で思い出した。サンクーバで話したカスタマイズされた“ティンバーウルフ”に乗っていた人だ。

 

「君のような凄腕のパイロットが来てくれたら次の任務も余裕だな」

「え、いや、自分は整備補助員ですから……」


 僕が少し返答に困っているとメイリン准尉は目を細くする。


「わかってる、冗談だ。さ、出航まで間もない。君の担当部署に案内するから艦に入ってくれ」

「はい、分かりました」

 

 メイリン准尉に案内されて“リトルダーナ”の艦内に入る。凛とした口調で涼やかな声だな、メイリン准尉。

 初見では固い印象を受けたけれど話してみると結構話しやすいかもしれない。あくまでも第一印象だけど。



 四方を金属に囲まれた廊下は大人2人はすれ違うことが出来ない程の広さで窓はないので廊下の各所に照明が点灯している。


 いくつかの耐圧扉を潜りながら僕はメイリン准尉にあれこれと聞かれた。

 彼女は僕がこの歳でなぜ操縦出来たのか興味があるようで、その事を重点的に聞いてきた。

 タイムリープしてきたので、なんて言えるはずはないので、近所にあった操縦シミュレータ完備の塾に通っていたということにした。


 実際にパイロット育成補助のための塾もあるしね。そういう所出身の人間は比較的少なくない。僕が入っていた孤児施設の近所にも何軒かあったはずだ。行ったことはないけど。


 と、ここで僕は狭い廊下の前を歩くメイリン准尉の背中に声をかける。


「あの、准尉殿……」

「どうした」

「隊長に挨拶をしておいた方が良いと思うのですが、今は艦にいらっしゃいますか?」


 僕の問いにメイリン准尉は振り向かず耳だけ傾ける。


「エディータ隊長は少し遅れているのでまだ艦には居ない。来たらすぐに知らせる。……さ、君の持ち場だ」

 

 着任報告をしたかったんだけど今はいないんなら仕方ないか。所属になるんだから話す機会はまだまだあるだろう。

 

 メイリン准尉の案内で何枚目かの耐圧扉を潜った先は格納庫だった。


 うつ伏せの姿勢で吊り下げられたMK(モビルナイト)が上下に2機、並列で整備用固定ラックに拘束されていた。


 その2機はサンクーバで遭遇した機体。


 オリジナルにカスタマイズされた“ティンバーウルフ”と、そしてもう一機は濃紺色のMK(モビルナイト)


 重装強襲用MK(モビルナイト)“ブルーガーネット”


 エディータ・ドゥカウスケートの愛機だ。



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