01.1-01.幕間 ※リオン・シロサキ視点
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今回はリオ視点です。
※リオン・シロサキ視点
幼馴染はいつからか〝大切な人〟になっていた。
◇
戦争で両親を失った私、リオン・シロサキは物心付く前から戦争孤児を預かる施設で育てられた。
両親の記憶は一切無く、親とはどんなものなのかすら分からないままに。
けど親代わりの施設の先生は私たち孤児にたっぷりと愛情を注いで育ててくれたので、寂しいなんて感じた事は一度も無かった。
とはいえ、やっぱり両親のことが気にはなる。
私はある日先生に聞いてみたの。
「私の両親はどんな人だったのか」
すると先生は答えてくれた。あなたの両親はMKのパイロットだったそうだ、と。
その頃の私はまだ小さくてMKがどんなものか分からなかった。
けど漠然と『正義の味方』みたいだと思ったような気がする。
幼いながらも私は亡き両親の事を誇らしく思ったのは今もよく覚えている。
それから私の夢はMKのパイロットになる事になった。
MKは兵器。人を守る機械。
私にはどうしても守りたい人がいた。
それは幼馴染のコータ・アオイ。
コータとはいつ出会ったのかも分からないくらい前から一緒にいる。
いつ出会ったか分からないというのは比喩ではなくて、本当の本当に気付いたら一緒にいた。
コータはとてもおとなしい子供だった。
施設の図書館の隅で三角座りをしてずっと本を読んでいるような子。そんなコータに私は惹かれていった。
何か特別なエピソードがあるわけじゃない、ドラマチックな事があったわけじゃない。
まるでコータの引力に引き寄せられるように私はコータの事が好きになっていた。
施設でも学校でも一緒。これからもずっとずっと一緒にいたい。一緒にいられる。そう思って居たのに。
中学3年の進路希望で私とコータの進路は別々になってしまう事になった。
MKのパイロット志望の私はアメリカのUNアカデミー。
コータは整備士を目指す為に日本の防衛学園へ行くと。
どうしてもコータから離れたく無かった私は防衛学園へ進路変更しようとしたんだけど、コータがそれを許してくれなかった。
「パイロットを目指すならアカデミー一択だよ」って。
確かにコータのいう事も分かる。
パイロット志望ならアカデミーの方が施設は充実しているし、教官も素晴らしい人が揃っているらしい。
逆に防衛学園は工学を学ぶにはこれ以上ない環境だし。
お互いに素晴らしい環境で夢を叶えて5年後に再会しよう。
そう約束した。決心したのに。
「リオ、なのか……?」
「え、ちょ、本当に大丈夫「リオっ!!」――っ!?」
今思えば、あの日の放課後からコータの様子が変わったような気がする。
運動が嫌いだったのに朝晩のトレーニングを欠かさなくなった。
そして何より、今まで以上に私と一緒に過ごす時間が増えた。私としてはすごくすごーく嬉しい。
だからコータの変化は私としては大歓迎なのだけど、たまに少し思い詰めた様な顔をする事が増えた。
気がつくと遠くを見つめて考え事をしている事が多くなったし、急に学校を休む事も増えた。今までそんな事は無かったのに。
ある日いきなりシャルを紹介された時はこの世の終わりかと思った。ああ、そういう事ね。って。
彼女を紹介されたかと思った。けどシャルは全然そんなんじゃなかった。
コータの好みとは少し違うかなって思ったけど美人なのは間違い無かったから。
そんな変化の中で一番良かったのが進路。
防衛学園に進むと言っていたコータが私と一緒にアカデミーを目指してくれる事になった。
それを聞いた時は飛び跳ねるほど嬉しかったのを覚えている。
だってアメリカで寮生活をしなければならないし、言葉の壁もある。何よりコータと離れ離れになるのが嫌だった。その事を考えるだけで涙が出てきていたほどに。
それがコータも一緒に渡米してくれる事になって本当に嬉しかった。本当は少し心細かったから。
入学からしばらくして、私とシャルはコータとヨナの出張に便乗して南の島国サンクーバを訪れた。
中学卒業後のバタバタで旅行など出来なかったので、すごくありがたかった。
緑の海と青い空が最高に綺麗だったな。コータと歩いたあの砂浜は絶対に忘れない。
そして次の日、なんとサンクーバにMKを使ったゲリラが現れ、それをコータが撃墜するなんて出来事が起こった。
MKの整備が出来ることに驚いて居たのに、まさか操縦して撃墜までしてしまうなんて夢かと思った。
けど何より、コータが居なくなってしまうんじゃないかという不安がシェルターにいた時の私の心を暗く覆い尽くしていた。
シェルター解放後、コータの顔を見た瞬間に嬉し涙が溢れてきてしまった。
怖かった。大切な人が居なくなってしまうんじゃないかって。
コータを、大切な人を危険に晒してしまった。
守られて、ただ大切な人の無事を祈ることしか出来なかった自分が情けなかった。
何も出来なかった自分が情けなくて、けどコータの気持ちが嬉しくて。
ぐちゃぐちゃになった頭の中で私はこう思った。
「私も大切な人を守りたい」って。
私も大好きな人を守れるくらい強くなりたい。
守られてばかりなんて絶対嫌だ。私もコータを守るんだ。
コータの胸の中で泣きながら私は自分の無力さを呪い、また、静かに思った。
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次回も幕間。シャル視点のお話です。