01-25.戦闘
ライドブースターに乗り、蛇行しながら急降下してくる2機のMK。
器用にライフルを脇に構え、銃口をこちらに向ける。
機種は2機とも同じ……あの特徴的なシルエットは〝ラッター〟だ。
ヘルメットと防毒マスクを連想させる頭部。全体的に丸みを帯びた装甲。剥き出しの動力パイプ。スパイクショルダーを装備した機体を暗いグリーン系に塗装している。
第二世代MKの代表に挙げられる機種のひとつで、主に前大戦中期に活躍した量産型MKの筆頭だ。
モノアイが確実に僕の“ティンバーウルフ”を捉えている。
相手は二手に分かれ、1機が正面から迫る。
空中でマシンガンを構えるが、発砲する前に回避。僕が動くのと同時にマシンガンをフルオートで発砲。
回避成功したが、実弾が地面に当たってアスファルトの滑走路を丸くえぐりとった。
背面スラスターと脚部スラスター共に調子が良い。
回避運動が終わる前に素早く反撃に移る。
腰部ハードポイントに装着させていた90mmサブマシンガンを右腕マニュピレータに装備。すぐさま3連射、セミオートで発砲。タタタン、タタタンという銃声に合わせてマズルフラッシュが瞬く。
空薬莢が地面に転がる頃には一機のライドブースターを撃ち落とす事に成功。
ライドブースターは主人を放り出し、地面をゴロゴロと転がってから爆発した。
バランスを崩し、地面になんとか着地した相手〝ラッター〟との距離を背面スラスター全開で突撃を仕掛ける。マシンガンで致命傷を与えるためだ。
容赦なく90mm弾をフルオートで打ち込む。
頭部、胴体部に集中砲火して一気に制圧する。やがて内部燃料に引火して爆発、炎上した。巻き込まれないように退避。バックステップと左上腕部に装備させてあるシールドで飛散する破片から主に頭部を守る。
1機は正面から攻撃して来たとなれば、もう1機は背後から挟撃するのがセオリーだ。コイツらも正直にそれに乗っ取っている。
ありふれた戦法は読まれやすい。今の僕のように。
しかし、それを選択するだけのメリットはある。相手に作戦がバレたとしても、そのデメリットを上回る程の優位に立てれば結果的には良い。
前後から挟まれたらやはり効果的で、しっかり背後を取られてしまった。
ライドブースターのスピードに乗った〝ラッター〟が光の粒子の剣、【フォトンセイバー】を引き抜いて切り掛かってくる。
それを頭部にある60mmバルカンを乱射して牽制しつつ、僕も背部ランドセルにマウントしていたフォトンセイバーのグリップを装備、それと同時に光の刃を展開し、相手の斬撃を受け止める。
2つの剣がぶつかり合い、けたたましい音が周囲に鳴り響く。光の粒子が飛び散り、ふたつの影が長く伸びる。
一旦は受け止めたが、パワーは均衡する事ない。“ティンバーウルフ”の方が出力が高いとはいえ、ライドブースターに騎乗している相手はスピードに乗っているし、機体重量も重い。おまけに上を取られている。
相手の方が圧倒的に有利だ。フォトンセイバーを弾かれるのも時間の問題。
僕は一瞬だけ鍔迫り合うが、押し返すつもりは一切無く、少しだけ相手の動きを止める事を優先させた。
フォトンセイバーを打ち合った一瞬の時間を使い、至近距離から頭部バルカンを相手の頭部に打ち込むと、被弾した〝ラッター〟の頭部がズタズタになっていく。
やや怯んだ挙動を見せた“ラッター”の隙をついてライドブースターを蹴り飛ばす。
各センサーと足場を失った相手はバランスを崩し、転倒した。
今度は機体が爆発しないようにフォトンセイバーの出力を抑え、一点のみを狙い、突き刺した。
胸部を突かれた〝ラッター〟は間もなく動かなくなった。爆発もしない。
市街地や民間の施設内での戦闘としては50点。1機は炎上させてしまったから。
2機撃墜。初陣にしては出来過ぎだけど、僕としては自身が整備したMKが問題なく稼働してくれた事が何より嬉しかった。
けど安心なんてしない。一瞬で思考を元に戻す。
大胆にもこちらに仕掛けてきたけど先鋒だとしても呆気なさすぎる。戦闘経験の無い僕が無傷で倒せてしまうような相手だ。
陽動か。そんな言葉が僕の脳裏に過ぎる。
サンクーバは港町。街の向こうには海が広がっている。潜水タイプのMKであれば街の占拠は容易だ。
「くそ、まさかっ!」
僕は悪態をつくと、1機のライドブースターを奪い、飛び乗り、サンクーバの街に急行した。
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