05-35.コンタクト
国際連合軍とネオ・レイズ軍が入り乱れる戦場を僕とシャルは駆け抜ける。あの紅いMK、“ダリア”へ一直線に。
交戦していた国際連合軍の主力量産機“ティンバーウルフ”をフォトンセイバーで両断した“ダリア”が、ガーランドが僕たちの接近に気付き、向き直る。
「……ガーランド!!」
『またしても私の前に立ちはだかるか、“蒼星”!』
国際連合軍で時折使われるチャンネルのひとつが繋がった。やはり回線を開いていたか。太く低いガーランドの声だ。
“ワルキューレ・ブレイズ”の右腕にフォトンジェネレーターを装備。セイバーを展開して全速力で切り掛かる。僕は言葉にならない声を発しながら突撃、それを“ダリア”は正面から受け止める。
蒼と紅。2色のセイバー同士がぶつかり合い雷のような音が戦場に鳴り響く。まばゆい光が互いの装甲を照らして激しく反射した。
「何故だ! 何故反乱を起こした!」
『……?』
「世界は間違いなく平定されつつあった。それなのに何故わざわざ混乱を引き起こす!? お前のその行動で何千という人が死ぬんだぞ!」
『平定? 戦争無くして平和などない。その逆もまた然り。平穏な日々は戦いなくしては手に入らない』
ガーランドの言葉が僕の胸に突き刺さる。そう、そんな事は僕もよくわかっている。
リオと共に過ごせる世界。シャルやエディ、メイリンさんやヨナと楽しく静かに暮らせる世界。それを手に入れる為に、大切な人たちを守る為に僕はMKを駆り、そう、人を殺している。そしてそれは今も変わらない。目の前の宿敵ガーランドを討とうとしている。
だから、ヤツの言っている事はよく分かる。でも、
「だからって――!」
『だからと言ってわざわざ引っ掻き回すような事はするなと? バカな。お前はアメリカで、国際連合で何を見てきた』
「何?」
『平和のためだ、安全のためだと抜かしながら大量の資金を投入し、人を殺すための兵器を量産して、それと同じだけ死体の山を築いてきた。お前も知っているだろう、カスタマイザーという人間兵器の事を』
「人間兵器だと!? 自分で開発しておいてよくそんな事が言える!」
フォトンセイバー同士の鍔迫り合い。“ダリア”が“ワルキューレ・ブレイズ”のフォトンセイバーを弾き、間合いを取る。しかしガーランドはリオの援護射撃を躱して突きを放ってくる。僕はスティックを操作して再びフォトンセイバーで受け止めた。……機体のポテンシャルが違いすぎる。今にも“ワルキューレ・ブレイズ”のメインジェネレーターが焼き付きそうだ。
しかし“ダリア”には余力があるようでガーランドの声は非常に落ち着いている。
『お前ほどの人間がそんな噂を信じるとはな。カスタマイザー……レギュレータなどと言う物を一兵隊の私が作れるはずはないだろう。開発したのはお前たちが所属する国際連合の上層部だぞ。私はそれを利用したにすぎん』
「なに?」
レギュレータを開発したのはガーランドじゃない?
築いてきた実績と地位を利用して独自に開発していたんじゃないのか? 完成したレギュレータを使って大量にカスタマイザーに調整した兵士を戦場に送り込んでいたんじゃないのか?
『あんな物を私の資産のみで開発するなんて事は不可能だ。考えればわかるだろう。レギュレータ開発に国が、連合がいくら費やしたか知っているか? 小国を領土ごと二つ三つ買えるほどの資金だ。それほどお前が所属する国はカスタマイザー育成に力を入れている!』
「そんな事――」
『だからと言ってそのカスタマイザーを使って反乱を起こすのは違うと? 馬鹿な。カスタマイザーにノーマルの人間は勝てない。だから使うまでだ。いや、もう使わなければならない』
使わなければならない。ガーランドはそう言った。
『銃には銃で、MKにはMKを、カスタマイザーにはカスタマイザーを当てがうしかない。新たな兵器には新たな兵器を。そうするしか無い。カスタマイザーはもう今の戦場に必要不可欠なものになってしまった』
そうだ。戦争をするには、大切な物を守る為には力が必要だ。
あの日僕は思い知ったんだ。理想だけでは、言葉だけでは何も守れないという事を。だから僕は欲したんだ。この強敵に対抗するための手段を、5年先を行く超科学を駆使した最強のMKを。ガーランドが何を守りたいのか。それは分からない。分からないが、僕と奴は何が違うというのだろうか。
『守る為には力が要る。そして絶対的な指導者が必要だ。ひとつひとつの所作が、言葉全てが正しい絶対的な指導者が』
「そんなもの、神以外にいるものか!」
『神が必要ならば私はそれになろう』
『この野郎、狂ってやがる!』
新たに出撃してきた親衛隊と戦闘をしていたシャルが“ダリア”に迫る。ガーランドは僕と鍔迫り合いをしている状態。それをシャルが隙と捉えたのか、いや、でも“ダリア”はまだ全力じゃないんだ、だから、
「っ!? シャル、ダメだ!! ぐっ!?」
瞬間、ガーランドは“ダリア”を反転させて“ワルキューレ・ブレイズ”に蹴りを放つ。圧倒的な出力差で蹴り飛ばされた“ワルキューレ・ブレイズ”が宙を舞った。意識が飛びそうになるのを気合いで堪えて何とか着地する。シャルの援護を、そう思った時には、もう遅かった。
「シャル!!」
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