05-30.2号機 ※リオン・シロサキ視点
お待たせ致しました。最新話です。よろしくお願いします。
『コータか!』
『空から援護する、シャルは“クレピス”を!』
『分かった、頼むぜ』
シャルとの通信をそのままに、中距離から援護していたコータは、フライトシステムで空中を飛翔させていた“ワルキューレ・ブレイズ”の高度を落として更に敵軍との距離を詰めた。
ガーランドがいる母艦を守るように配置されたMK部隊の中核、ハリー・エドワーズ元大尉が率いる親衛隊の中心、“クレピス”。それを討とうとエディとシャル、それにメイリンさんが協力し合って活路を見出した。
とうとう“クレピス”との直接対決が出来る。そう思っていたけど、やはりというのかその親衛隊と交戦している間に、隊列をくずしたネオ・レイズ軍のMK部隊が次々とこの地点に集合している。
彼女たちが倒した何倍もの敵機が私たちの元へ集まりつつある。
敵機の正確な数は把握出来ていないが、囲まれたら終わり。私たちに時間は無い。
コータが駆る“ワルキューレ・ブレイズ”が青白い尾を引き空を翔けてシャルの援護に向かう。コータの動きに合わせてシャルも“クレピス”を牽制。体勢を立て直して応戦する。
それに伴って敵が陣形を組もうと大きく動き始める。コータ達の後方から戦場を俯瞰視出来る位置に陣取っているだけあって、私の目には戦場の全てが、とまでは行かないまでもそれの多くを捉えることが出来ていた。
フライトシステムで“シャムロック”を上空に浮遊させた私は機体に実弾狙撃銃THK-09対物ライフルを装備させて狙撃体勢に入る。
「コータ、4時方向にシューター2枚」
『っ、了解』
そう報告するのと同時にコータの9時方向、つまりその報告とは真逆にいた“ルビリア”に照準し発砲。乾いた破裂音が空に響き、硝煙が上がる。
THK-09対物ライフルから吐き出された弾丸は空気を切り裂き、寸分違わず目標の“ルビリア”の胸部を貫き、衝撃を殺せなかった“ルビリア”は後方に大きく吹っ飛んだ。
「反対はやった。1枚と……もう1枚」
『ありがとうっ……』
「……? どうしたの?」
インカムから聞こえてくるコータの声色が少しいつもと違う事に気づいた私は狙撃モードに以降するとコクピット上部から降りてくる狙撃用スコープを覗き込んだまま問う。戦闘に直接は関係のない質問だったかもしれないが、口から出た理由まではわからなかった。
『ううん、ありがとう』
「コータの背中は私が守るから」
でもコータはそんな風に返すと再びシャルの援護に走る。
以前コータからこんな事を言われた事がある。狙撃に集中している時の私は驚くほど低い声になっているって。今もきっとそうなっていたのかも知れない。すごく集中していたから。
『――』
「……なに?」
脳裏を過ぎる予感に思考を引き戻される。思わずスコープから目を離してしまった。
これは、なんだろう。いつもの瞬間的な閃きじゃない。まるで何かを教えてくれるかの様な……そう、それは誰かが私にこれから起こる事を教えてくれるかのような……。
予感に誘われた私は360°モニターに視線を向けると、敵陣の遥か後方に見える山の中腹に何かを見つけた。いや、それは姿など見えないのだけど。ズームアップされていないその箇所の映像には青々とした広葉樹の山が映っているだけ。
それでも私には明確に見えていた。
「……いる」
私は感じたままに山の斜面のある箇所をズームアップさせる。一見なんの変哲もない木々が立ち並ぶ豊かな山肌だった……でも、一箇所だけ。本当に一箇所だけ不自然に感じるところがあった。
そう、ただの違和感。見た限りではなんの変哲もない。青々と茂る木々。
でも、その違和感を捨て置くだなんて出来なかった。
「PK-LINK、コンタクト」
『了解、ready』
私がAIにそう告げると女性を模した合成音声がそう応える。360°モニターに【PK-LINK contact】と表示されて暗転。そしてすぐに正常な画面に切り替わる。
「……っ」
念動力者である私の意識とこの子、“シャムロック”とのシステムがジョイントされて官能的ともいえる感覚が全身に駆け巡る。
機械と一つになるような不思議な感覚。その感覚を手に入れたからなのか、胸が、そう、胸が熱い。
今なら出来る。全部私の思い通りに動く。
「スポッタービット射出」
『了解』
AIがそう応えるとすぐに“シャムロック”の周りにジョウゴ型のビットが6つ射出され、浮遊した。
それらの全てには高性能の各センサーが内蔵されており、目標に接近して観測を行う事ができる。
それらに内蔵されているセンサーと自分が繋がっている感覚。目が、耳が、五感全てが増幅された様な感覚。戦場全てを把握したような全能感が襲ってくるが、それを理性で押しのけて私はAIに、いや、我が手足に告げる。
「行けっ、ビット達」
私の命令で6つの使い魔達は光学迷彩を纏って観測に向かった。その様はまるで訓練された猟犬の様でとても愛おしく思えた。
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