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05-29.“クレピス” ※シャーロット・ルイス視点



 胴体を切断された“ルビリア”は一機、また一機と僅かな時間差で爆発し炎上した。

 その火炎の向こうに見えた“ルビリア”の動きが僅かに見えた。

 咄嗟に操縦桿の側面のローラーポインターを操作し装備を選択。左腕に内蔵してあるフォトンシールドを展開させると同時に目の前で爆発が起こる。


 大口径のバズーカから吐き出された砲弾かシールドに阻まれて爆発を起こしたらしい。

 凄まじい轟音が戦場に響き、鉄片が周囲に飛び散る。しかし強固なシールドはその衝撃すらも相殺した。

 そしてアタシはすぐさま反撃に移る。シールドを収納すると光の盾が粒子となり空気中に散っていく。それと同時にさらに武装リストから投擲用ダガーを選択。大腿部に格納されているラックから大きなナイフが飛び出した。

 それをマニュアル操作で素早くキャッチ。逆手に持って機体を捻り、十分に遠心力を加え、投擲――。


 ダガーは先ほどバズーカの砲弾が切り裂いた空間を再び飛翔し、寸分違わず“ルビリア”のコクピットに突き刺さる。

 ツインアイから光が失われ、脱力するように膝を突いたところでダガーが爆発し、胸部を中心に吹き飛ばされ、例によって炎上した。


「っ!」

『――警告』


 投擲のモーションが終わる少し前、ほんの僅かなその隙を狙ってフォトンビームの一閃が“エーデルワイス”を襲った。

 アタシは素早い動作でスティックを倒してそれを回避。ビームは機体の右脇腹を掠めて後方にいた“ルビリア”に直撃し、頭部を弾き飛ばした。

 時間にしてほんの一瞬。その瞬間に機体を制御し、回避できた自分自身を褒めてあげたいが、それよりもアタシが思い描いていたように反応したこの機体のポテンシャルに驚いた。


「報告!」

『軽微。右外部装甲に僅かな損傷』


 AIの報告を耳に入れつつ目で戦況を把握する。射線の先に目をやると暗闇色の二つ目の巨人がフォトンライフルを構えてこちらを見つめていた。

 

 国際連合が何年もかけて開発した超高性能機の一角“クレピス”。事前に機体データは登録してあったので360°モニターにも光学で捉えた機体に対して“クレピス”と表示されている。間違いない。


 やや腰を屈めた次の瞬間、全身のバネを使って飛翔した“クレピス”が神速で突撃を仕掛けてくる!


 横薙ぎの斬撃。


 太刀筋を感覚のみで読んでフォトンセイバーで防ぐ。超高速振動する実体剣S.V.Sがフォトン粒子と激しくぶつかりけたたましい音を立てる。

 

『防いだ!? 我が剣を防いだか、テロリスト風情が!』


 機体同士の接触回線で聞こえてきたのは若い男の声。

 通常回線のように綺麗には聞こえないノイズだらけだったけど、“エーデルワイス”はその声帯データを正確に解析し声の主をデータバンクから引き出す。


「ハリー・エドワーズ……ガーランド親衛隊隊長っ」

『私を知っているのか、ならば武装を破棄し投降しろ。試作機とはいえ力量の差は歴然だ。今なら戦争法に乗っ取った捕虜の扱いを――』

「は?」


 高圧的なその言葉にアタシのこめかみがひくつく。力量とか、成績とか関係なくアタシはコイツの態度が気に入らなかった。そう簡単に言えば、


「ムカつくんだよ、その態度が!!」

『愚かな!』


 アタシはスティックを操作し、“クレピス”のS.V.Sを弾き飛ばして間合いを作る。スラスターを噴射して再び接近。フォトンセイバーで一太刀斬撃を繰り出す。しかし“クレピス”、ハリーも相当の手練れだ。その斬撃が繰り出される刹那、すでに回避運動を開始しており、アタシの斬撃は空を切る。


「ち、カスタマイザーか」


 そう、その回避行動こそカスタマイザー特有の予知じみた機動だった。こちらの動きの数瞬先を読んだ的確で無駄のない動き。

 回避行動だけではない。それに伴う反撃もまた予知じみてる。まるでアタシの行動を読んで……いや、知っているかのように的確な攻撃が、


『警告。敵機に高エネルギー反応』

「わかってる!」


 “クレピス”は胸部に内蔵されたフォトンキャノンを即座に発砲。大出力のキャノン砲が迫る。

 モニターに表示された回避を促すコーション表示に目をくれる事なく機体を操る。

 黄色のフォトンキャノンが機体を掠めて過ぎ去る。それと同時に再びスラスター全開で突撃を仕掛ける。背面のスタビライザーが空気を切り裂き風切り音を奏でた。


 間合いを詰めようとしたところで直感が働き踏みとどまる。すると側面からフォトンビーム弾が多数発射され、それを回避する。


 一騎打ちに集中したいところだけど、ここは戦場。そんなに事は上手く運ばない。……くそ、せめて目の前の敵に、集中出来たら。


 相手の機体は“MGシリーズ”の一角、高機動のMK(モビルナイト)“クレピス”。それを駆るパイロットはあの〝聖騎士〟の右腕。いわば国際連合のNo.2の実力を持つパイロットだ。


 いくらこっちが超高性能の試作機を持っていてもそう簡単に勝てる相手じゃない。もちろんアタシそのNo.2が相手だったとしても負けるつもりはないし、負けてないと信じてる。

 でも、せめてタイマンを張れなければ勝機は薄い。それをする為には周りのザコが邪魔だ。


 エディータ先輩の機体は損傷している。それを援護するのがメイリンの役目だ。アタッカーがアタシ一枚では……。


 そう思った時に頼りになるのが、そう、アタシ達の隊長なんだ。

 

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