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05-26.邪魔しないで ※エディータ・ドゥカウスケート視点




 MK(モビルナイト)が格納されている円柱型コンテナの側面装甲の一部がパージされ、暗かった室内に日光が差し込む。

 それと同時に猛烈な風が流れ込み、外部の集音マイクに干渉して耳障りな音を立てた。


『“エーデルワイス”行くぜっ!』


 目の前をファイターモードに変形した“エーデルワイス”が横切り、眼下に広がる大地へ向けて急降下していくのが見えた。


 MK(モビルナイト)形態でもフライトシステムを利用して単独での飛行出来るけれど、ファイターモードの飛行速度は戦闘機並みの速度を叩き出せるらしい。


 戦闘機の操縦が得意なシャルの為の機体と言っても良いくらい彼女のスタイルにマッチしている。

 私もアタッカーとしてシャルに続くべく、機体を空中に投げだして降下を開始する。


 国連軍と交戦を開始しているネオ・レイズ軍の背後に上手く回ることができた。

 陣形を組むネオ・レイズ軍の最後尾に一際大きな戦艦が見える。恐らく、いや、間違いなくあの艦にガーランドがいる。


「……」


 私は愛機の“ブルーガーネット・リバイヴ”の背面スラスターを焚き、更にスピードを上げた。

 

 先鋒を務めるシャルがヘイトを稼ぎ、次鋒の私が懐に飛び込んで掻き回す。中衛のメイリンとコータが私とシャルをそれぞれ援護。最後衛のリオが戦場を俯瞰視する。


 コンテナから飛び出す瞬間、タイミングを見計らった様に複数のフォトンビームが飛来する。警告表示よりやや遅れて回避行動を開始。若干の余裕を残して私の駆る“ブルーガーネット・リバイヴ”は大空を滑空し、降下していく。


 機体を晒した。これでこの作戦に私が参加している事が露見した。国際連合軍を直接相手にしているわけではないにしろ、試作機を強奪したテロリストの一味である事が露見してしまった。

 いかなる様にも言い訳は出来るかも知れないけれど、これで固有機体に乗る私やメイリン、それにコータは今後テロリストとして認知されてしまうかも知れない。


 けれどそれは些細な事だと思う。


 例え表で生きていけなくても、世界は、宇宙はこんなにも広い。私の故郷、リトアーク・キングダムの農村辺りに身を隠せば皆安全に暮らす事は出来る。


 そう、みんなで、静かに幸せに暮らす。


 そんな細やかな夢をこの胸に抱くようになったのはいつ頃からだろうか。

 そんな細やかな暮らしの中にコータが居てくれたらどれだけ幸せなのだろうか。


「……コータ」


 気付けば私は小さく彼の名前を呟いていた。もしかしたら声は出ていなかったかも知れないけど。


 あの日に芽生えたこの感情。コータを想うと胸が苦しくなって切なくなって。それでもどこか幸せで、嬉しくて。そんな不思議な感情。名前なんて分からなかったこの気持ちの正体にとうとう私は気付いてしまった。


 確かに宿ったコータへの想い。この作戦が終わったら必ず伝える、告白、する。

 私がどれだけ彼の事が好きで、愛しているのか。それによって私はどう変わって来たのか。コータが教えてくれたこの想い。


 こんなに嬉しいんだよって、コータに伝えたい。


 でも分かってる。この恋が実らない事なんて。


 コータとリオは恋人同士で、それは周知の事実。これから彼らはもっと親密になって、いずれかは……。


「……」


 それを考えると胸が苦しくなって、張り裂けそうになる。モヤモヤとした気持ちに支配されて……そう、嫉妬が私を支配する。


 でも、それでもいい。私のこの大事な大事な想いをコータに伝えたい。その為に約束したんだ。必ず生きて帰って、それから彼に伝えるんだ。大好きだって、愛を教えてくれてありがとうって伝える。


「……」


 みるみる内に近づく地表。私の接近に気づいた地上戦用にカスタマイズされたルビリアが多数戦闘体制に入る。

 背中を取られているのにも関わらず、やや慌てた程度で素早く陣形を組み直し、迎撃体制に入る。

 練度の高さが窺える動きだ。よく統率されている。


 牽制射撃を躱しながら空中で体勢を立て直し、機体を回転させながら片膝立ちで着地。砂煙が上がり機体を覆い隠す。

 それから“ブルーガーネット・リバイヴ”のツインアイが鋭く光った。


 みんなが、コータが静かに幸せに暮らせる世界を取り戻す。だから、


「……邪魔、しないで」


 モニター越しに敵機を睨みつけた私は低い声で呟き、操縦桿を押し込んだ。

 




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