05-13.ともだち
「そんなはずないだろ、僕は……」
そう、僕は最初から友人を頼りにしようと思っていた。けど、それは僕のわがままで、彼女たちを巻き込んで良いものがどうか分からなかったから。
だから僕は彼女たちに話せなかった。物事を都合の良い方向へ導いて、あわよくば僕の計画に協力してもらおうと。
僕は友人達を信頼していたようで、そうじゃなかったんじゃ無いのか。そう思うとすごく心が寂しく感じた。それはきっとシャルやエディたちの立場からしても、いや、立場だったらもっと寂しく感じるんじゃないだろうか。
逆の立場に立ったとして、もしシャルやエディが自分の危険を顧みない行動をしていたとしたら……そうだ、僕は止めるだろうし、僕に出来る事があったらきっと協力したがるに違いない。
シャルは言葉に詰まっている僕の言葉を待っている。けど本当はシャルも僕の気持ちはきっと分かっていると思う。
僕の気持ちはわかる。でも納得は出来ないといったところだろうか。
すると二人のやりとりを見ていたエディが細い声で、でもしっかりと聞こえる声で呟いた。
「……コータもリオも、大事」
視線を上げるとエディと目が合う。アメジスト色の瞳に僕が映り込み、しっかりと僕を見つめている。
「……だから守る。私があなたを守る」
「エディ……でも、エディは……」
彼女はレギュレータの呪縛から解き放たれた。そう、エディはカスタマイザーではなくなった。
薬物により研ぎ澄まされていた戦闘感覚は薄れ、他のパイロットに引けを取らないまでも、力は確実に衰えている。無双の活躍を見せていた当時とは違う。
それを感じていた彼女はメイリンさんの勧めもあり、パイロットを引退しようかと考えていたところだった。
でも、エディは確かに口にする。
「……私、コータを守りたい。……ともだち、だから」
力の衰えは彼女自身が一番よく分かっている筈だ。それでも彼女はそう言った。
僕の、友達の僕に力を貸したいとそう言ってくれた。
「エディ……。ありがとう」
「……」
レギュレータから解き放たれ、人並みの生活を送る事が叶ったであろうエディだけど、その反面、今までのように戦えなくなってきているのを感じているのは他ならないエディ本人だ。
それなのにより強大な敵との戦いに身を投じてくれるという。
ともだちだから。言ってしまえばたったそれだけの理由で。
でも、きっとこれも逆の立場だったら僕もエディに力を貸すだろう。それだけ大切な人なんだから。彼女もまたそう思ってくれている事がすごく嬉しかった。
そしてそれと同じくヨナも、メイリンさんも力を貸してくれると言ってくれた。
「しかし、ガーランドの反乱をどう防ぐ? アカギ教授が開発していた試作機はガーランドの手に落ちてしまったんだろ?」
そう懸念を口にするのはヨナだ。彼の言う通り、切り札にしたかった試作機は手の届かないところに行ってしまった。
僕の持つ知識をふんだんに取り入れた最強の機体。それをうまく使いこなせるパイロットが敵側にいれば……いや、あの機体があればある程度の腕さえあれば十分脅威になりえる。
「じゃあ暗殺でもするか? 奴が居なけりゃ平和になるんだろ」
「いやいやダメだよ。今アイツを討ち取っても、僕達が意味もなく犯罪者になるだけだ。反乱、反逆の事実が無いならこちらの正義を主張する事が出来ない」
「正義ね……人の命がかかってんだから正義も悪もない気がするけどな」
シャルのいう事はもっともだ。もちろん僕だって仲間の命がかかっている以上、先制攻撃をしかけて奴を討ちたい。
でも反逆の事実がなければ僕達の行動に正当性が生まれない。奴が起こした『反乱』という運動の性質上、事実が無いと裁きにくい。
水面下で武力を蓄えているのは間違いないので、シャルが言った通りガーランドの命を奪ってしまえばもしかしたら反乱など起きずに済んでいくかも知れない。
けれどそうなると、国際連合の宝〝聖騎士〟ジョナサン・ガーランドの命。軍や世界に広がる衝撃は多大なものになる。そんな衝撃なんかより大切な人の命の方が重いのは言うまでもないが、それでも建前上は味方であるガーランドを討てば裏切り者のレッテルを張られるのはこちら側だ。
例えそれで生き延びたとしても、生き難くなり、さらに言えば裁きを受けるのは僕ただ。
奴を討つためにはそれ相応の大義が必要だ。
もう奴の行動を抑止する事は出来ない、と思う。そうなれば、取れる行動はひとつだ。
「みんな、聞いてくれ」
僕はみんなに、シャル、エディ、メイリンさん、ヨナ、そしてリオ、大切な仲間に今後の方針を話した。
僕が考えている事の全てを。もしかしてこの戦いが最初で最後の戦いになるかも知れないと、そう思いながら。
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