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05-12.会議



 リオに全てを打ち明けてから数日。僕はアメリカに居る友人、シャルやエディ、メイリンさんにヨナ、E.M.Sの主要メンバーに全てを話した。


 真実を聞いた彼らはそれぞれ温度差はあれど驚きを隠せない様子で、ある者は冗談だろと笑った。けどそれが本当であると言うと、半信半疑ながらも話を聞き、最後には信じてくれた。

 

 信じてくれた。そう、それは本当に良かったんだけど……。


 僕が気になっていたのは、僕が未来から持ち帰った知識を友人達がどう思うのかという事。


 今まで僕は未来の知識、ブラックテクノロジーを持ちながらその知識をあたかも自分が生み出したものの様に扱ってきた。

 未来の知識を提示するたびに友人達は驚き、感動してくれていた。それが僕が生み出した訳じゃない技術であるというのに。


 もちろんその様な罪悪感を抱くだろうなというのは分かりきっていた事だし、秘密を隠す事で友人を騙す事になってしまうんだという事は想像していた。


 未来の知識。未だ来ていない未来からもたらされた科学者たちの努力の結晶。

 その知識を持つ僕自身がこの戦争が絶えない世界に存在するという危険性を考えれば、その事実を安易に開示するのは非常に危険だというのは分かっていた。

 だからこそ僕はリオや友人、そして自分の心に嘘をついてまでその事実を隠そうと思った。

 結果的にリオに吐露する事によって心強い支えに今はなっているけれど、それでもその時はそれが最善だと思ったから。


 事実を隠す。それをする事により友人を騙す事になってしまったとしても僕は恋人や友人を守りたかった。


「で、なんでお前はそんなに落ち込んでんだ?」


 全てを打ち明けた後、みんなに嘘をついていた事を後ろめたく思い、俯いているとテーブルに肘をついたシャルがそんな事を言った。


「え、だって僕はみんなに嘘を……」

「嘘? お前がいつアタシ達に嘘をついたって言うんだよ」

「え、それは……」

「未来の知識だかなんだか知らないけど、お前がそれをいつ自分が考えた事だって言ったんだ。アタシは少なくとも知らないぞ」


 シャルのルビー色の瞳に映る僕はどんな表情をしていただろうか。シャルのその言葉を受けて僕は何も言い返せないでいた。

 確かに僕は未来の知識の多くを自分で導き出したとは言わない様に気を付けてきた。時にはそのように振る舞った事はあったかも知れないが、それはそうしなければ説明が付かなかった場合や、本当に僕自身のアイデアだった場合にはそうしてきた。でも、

 

「でも、僕はみんなに黙っていたんだ。信頼を失っても仕方がない事だと思ってる」

「何を言う。秘密の一つや二つ誰でも持っているものだ。そうだな、例えば私やエディータ隊長はコータに黙っている事は山ほどあるぞ。ね、隊長」

「……?」


 メイリンさんに話を振られたエディがコテンと首を傾げる。澄んだアメジストの瞳は全く曇っておらず、純粋に何で話を振られたか分かっていない様子だった。けど、会話の内容はしっかり把握しているようで、ポツポツと言葉を紡ぐ。


「……必要な事、だった」

「そうだぞ、コータ。君はリオを守る為に様々な工作をしなければならなかった。それをするにあたって君がタイムリープしてきた事を知る人物が多くいては様々な不都合が生じるだろう」


 けれどやはりエディは会話が苦手なので、言葉が不足している箇所はメイリンさんが補足してくれる。


 僕が持つ知識は非常に便利で有効活用出来る物だ。そして何より金になる。悪用しようと思えばどうにでもなってしまう。

 僕が未来の知識を持っているという事実が何らかの形で漏れて、それが良からぬ者の耳に入れば非常にややこしい事になりかねない。それこそ僕の友人を巻き込む事になってしまう事もあるかも知れない。

 メイリンさんのいう通りに裏工作がしにくくなってしまうという事もあったけど、悪目立ちをする事を避けるために僕はこの事実を隠そうと思ったんだ。


「いや、それはそう、なんですが……しかし

僕は未来で得た物の全てを自分のもののように話してきた。MK(モビルナイト)の整備や操縦も……」


 下を向く僕に再びシャルが話しかける。


「いいか、コータ。それの全部はお前が自分で脳みそに詰め込んで未来から持ってきただけじゃねぇか。どれだけデカい鞄を持っていたって中身が空っぽならそれまでだ」


 シャルは、どんな知識や技術も、全ては僕が未来で努力して得たものなんだから良いだろうと言ってくれた。


 誰かに頼んで与えられた物でも無ければ、自然に身についた物でも無いだろうと。


「要するに、お前がアタシらに引け目を感じる必要は1ミリもねぇって事だ」

「シャル……」

「でもな」


 と、シャルは敢えてそこで言葉を区切ってから言った。多分、強調したい事があるのだろう。その雰囲気を感じて僕は少しだけ身構える。


「ひとりで全部やろうとしていたのは気に食わねぇ。アタシらはそんなに頼りないか?」


 シャルのルビー色の瞳がシュッと細くなり、少し怒りの色が見えた気がした。


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[一言] それはそう、友達で仲間なんだからちゃんと頼らないとね
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