05-11.朝
「……ん」
「おはよう、リオ」
全てをリオに打ち明けた次の日の朝。
真っ白なシーツが敷かれたベッドで、僕の腕の中で安らかな寝息をたてていたリオが目を覚ました。
綺麗な指で目を擦ってから優しく微笑んで挨拶を返してくれた。
リオの寝顔は美しくて、ずっと眺めていたかったけれど、やっぱり笑顔はもっと素敵だった。いや、もちろんリオならどの表情も美しいんだけど。
僕が微笑み返すとリオは満足したように再び僕の胸に顔を埋める。毛布の中で素肌が触れ合う。リオの吸い付く様な肌が心地よくて、僕はリオを優しく抱きしめ、その感触を確かめるように腰を撫でた。
リオは少しくすぐったそうに身を捩るとお返しとばかりに僕の腰を撫でて、そして僕の首筋に優しくキスをしてくれた。
ああ、ヤバい。昨日の感触が蘇ってきて、その、いろいろとヤバい。
「……あ」
「♪」
リオも何かに気付いたみたいで、少し照れながらも悪戯っぽく微笑み、さらに身体を密着させ、おずおずと手を伸ばす。鼻歌混じりに僕の全てをあっさりと文字通り掌握されてしまった。
リオの滑らかな手のひらに包まれると思わず声が出そうになってしまう。僕はそれを半ば誤魔化す様にきく。
「その、リオ? 昨日も思ったんだけど、えと、その、う、上手くない?」
「え、そ、そうかな?」
昨日、一線を超えた時に思ったんだけど、リオの、その、テクニック(?)がとてつもなく気持ち良かった。
もちろん僕にはそんな経験があるわけじゃ無いから比べようがないんだけど。いや、比べるのもどうかとは思うけど、それでもリオは扱いに慣れていたようにも思う……いや、考えすぎか……。
「あ」
「え、ど、どうしたの」
快感の中にうっすらと芽生えた出どころの分からない嫉妬の念を感じていると、リオが思い出した様に話し始める。あ、うん、手は止めないんだね。
「あ、ううん、なんでもない」
「え、ちょ、気になるよ!」
何か思い当たる節がある様子のリオだけど、すぐに口をつぐんでしまった。
いつもなんでも話してくれる彼女らしく無い言動に僕は焦りを隠せないでいた。
え、この手慣れた感じ……も、もしかして、既に経験が!?
いや、まさかリオが僕以外の男と……?
そんなはずはない! と信じたいけれど、リオは恥ずかしそうに口を噤むばかりで何も話してくれない。そして事もあろうか、かつての出来事を思い出すかの様に頬が次第に紅潮していく。
恥ずかしいから言いたくないというリオにどうしても話してほしいと頼むと、半ば観念したかの様に口を開いた。
「……練習、してたから」
「れ、練習!? ま、まさか他の人と――」
「そ、そんなわけないよ! やり方はファッション誌とかに普通に載ってるし、その、もう経験してる子から聞いたり……それに、何か色々、それっぽい物をコータに見立てて練習したりしてて。色々考えたりしてるうちに私も自分で……って、私話しすぎ!? もうやだ!」
そう言って耳まで真っ赤になったリオは毛布を頭までかぶって隠れてしまった。
うわ、今なんかすごい事を聞いてしまった気がするんだけど……。
つまりは僕と行為に及ぶ事を想像して自分なりに練習してたって……こと?
それが事実なら男冥利に尽きるというか、ものすごく嬉しいし、何より健気なリオが可愛くて仕方がない。
ともあれ、リオのテクニックの秘密が分かって安心した。いや、他の人となんて言ったけど、もちろんリオはそんな事しないだろうし。何より……、
「私が処女だった事はコータが一番よく知ってるでしょ!」
「う、うん、そ、そうだね」
その一言で昨日の感触が再び蘇る。
完全に貫いた感触もあったし、身をもって体験したからよくわかる。
「っ!?」
昨日の行為を振り返っているとなにかを咀嚼するように、何かを吸い込む音と共に脚の付け根に猛烈な快感が広がる。ぬめぬめとして、暖かくて……。ああ、そうか、リオは毛布に潜ってるから……。背筋を走る快感に気を失いそうになりながら、何とか意識を呼び戻す。
「コータだって、なんだか手慣れてなかった?」
「あ、いや、僕だって初めてで……」
「本当かなぁ?」
疑う様な声色が気になって毛布の隙間からリオの様子を伺うと、逆に上目遣いのリオと目が合う。そう、愛おしそうに僕を頬張るリオと……。うわ、なんだこの背徳感。
僕の様子を見て満足したのか、リオはそのまま目を細め、行為を続けてくれて……。
その後、僕達は昨晩に引き続き深く愛し合った。
◇
「……コータ?」
「うん?」
行為が終わり、快楽の余韻に浸っていると腕の中のリオが僕が起きているのか確認するかの様に問いかけてきた。
昨晩もかなり遅い時間まで起きていたから、実際眠ってしまいそうだった僕は夢見心地で応えた。
「これからどうするの?」
全てをリオに打ち明け、僕はリオと一緒に再スタートを切ると誓った。
新型試作機が実質的にガーランドの手に堕ちた今、武力を以てヤツと対峙するのは得策では無い。
僕とリオ、二人の力を合わせたとしてもヤツの力量には遠く及ばない。
ガーランドも今の時点では何も動きが無い様に思うが、実は裏では相当の金が動いており、着々と反乱の準備が進んでいる。
名声、権力、人脈。全ての面でガーランドは僕の上を行く。その中で打開策があるとしたら、やはり切り札だった試作機が絶対不可欠になる。
「でも、試作機はもう……」
「うん。もう僕らの手から離れてしまった。アカギ教授も口は出せない」
となれば、残された手段は多くない。
僕はある決心をリオに打ち明けた。すると彼女はにこりと笑ってその考えに賛同してくれた。「きっとその方が良いよ」と。
その笑顔に、賛同に心が救われる。そうか、これで良かったのかと。自分の考えでこれまで決断してきたけど、こんなにも心が軽くなるのかと。恋人の存在に僕は心底感謝した。
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