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05-08.暗雲

「やっぱり間違いないんでしょうか」

「うむ……どうやら上層部の中のみで前々から話があったようなんじゃ。既に決議も行われており、賛成多数で可決しておる。メディアでは全く取り上げられておらんかったからの、気づくのが遅すぎたわい」

「軍内部の組織構成の話ですし、特派の特性上、なかなか表に現れない部署ですからそれも理解出来るのですが……」


 北海道にある防衛学園の一室。テーブルを挟んで対面するアカギ教授の表情は晴れない。そしてそれは多分僕も同じで、アカギ教授から聞いた話を未だに信じられないでいた。

 実際にはその情報を飲み込み、理解はしているのだけれど。


 でも、いや、未だに僕は飲み込みきれていない。


 その情報というのは、僕やアカギ教授な開発に取り組んでいた新型試作機2機のクライアントである国際連合軍の特派。その部署が作戦部に取り込まれる事になった、という事だ。


 僕がアカギ教授に開発依頼をした新型試作機。


 特派はもともと高性能量産機50機の開発をアカギ教授に依頼していた。

 しかしその予算を新型試作機に流用してもらえる様に尽力してもらい、それの開発に取り組んできて、ようやく完成する。そこまで漕ぎ着けたところで、そのクライアントである特派の吸収。


 その吸収した作戦部の幹部の座に居座るのが他でも無い、ガーランドだ。


 裏切りを目論むガーランドも国際連合総会の一員ではあるのだけど、奴は作戦部の人間。


 けれど特派は軍内部でも非常に異質な部署で、ヤツのいる作戦部とは全くの別物。だから奴がどれだけ軍での発言力を持っていようとも、開発した試作機を奪われてしまうなどという事は無いと思っていたんだけど。まさか部署ごと飲み込んでしまうとは思わなかった。


 これで新型試作機2機の所属は特派からガーランドの手元に移ったという事になるのだから。


「ワシにもっと発言力があればこんな事には……すまん」


 申し訳無さそうに頭を下げようとする教授を僕は慌てて制する。


「ちょ、アカギ教授は何も悪くないじゃないですか。教授の名前と人脈に甘え続けてきた僕の責任です」

 

 アカギ教授は何一つ悪くない。


 アカギ教授に開発依頼をしたのは僕にはその力がないからで、教授の持つ様々な力を借りていたのは僕だ。僕にその力が有れば、そんな事を言っても仕方がないのはわかってはいるけど、それでもやっぱりアカギ教授が責任を感じるのは違う。

 

 新型試作機を特派からの依頼で開発するにあたって当然その情報はガーランドの耳に入る事はわかっていた。そしてその力を欲するだろうという事も。


 けれど特派という特別な部署での開発であるから手は届かないだろうと思ってた。それでも何かしらの圧力がかからないとは思っておらず、必ず手に入れようと動いてくるだろうと予防線は幾つも貼っておいた。

 けどやつはその全てを力で無効化して、僕やアカギ教授たちが心血注いで開発した試作機を簡単に奪っていってしまった。


「恐らく1号機と2号機欲しさにその手に及んだと思うが……」

「ほぼそう見て良いでしょう。特派は軍に取ってもかなり重要な部署ですし、吸収は容易ではなかったはずです。恐らく僕達の……アカギ教授が手がけるMK(モビルナイト)に早々に着眼していたと思います」


 冷静に、そう口にしてはみたものの僕はどうしたら良いか分からなくなってしまっていた。

 未来の知識を詰め込んだ最強の機動兵器が敵の手に渡ってしまう。

 世界最強クラスの兵器を手に入れたガーランドが起こす行動はひとつだ。恐らくあの日におきたテロも早く起きるに違いない。最近、ヤツ直轄の兵の動きがどうと怪しい。着々と反乱の準備は進行しつつある。


 それに抗う切り札として作っていた試作機がヤツの手に渡ってしまう。正当なルートで、何の苦労も無く。

 恐らく軍部の連中はガーランドが試作機を保有する事を歓迎するだろう。何せ連合軍最強のパイロット〝聖騎士〟だ。そいつが桁違いのスペックを誇る試作機を駆るならば無双の活躍な期待できるだろう。


 でもヤツに与えられる“ダリア”も異次元じみたスペックを有した機体だし、何よりヤツ専用に開発されたMK(モビルナイト)だ。

 ヤツ本人が乗らないにしても、ヤツの手に渡るのはどうしても避けなければいけない。

 現段階での科学の進展具合は著しく、当に1週目の人生のそれを超えつつある。現に当時最強だった“ワルキューレ・ブレイズ”のスペックにも量産型MK(モビルナイト)のスペックが追いつきそうになっている程だ。


 それらを遥かに凌ぐスペックをもつ機体をやつの手に渡すわけには行かない。


 でもどうやって阻止したら……。


 確かにあのMK(モビルナイト)は僕達が開発した。したにはしたが、予算を割いたのは他ならぬ国際連合軍。元からあれは軍の持ち物だ。


 あの時、ガーランドの誘いに乗っていたら。

 そうだ。今からでも間に合うか……いや、そんな事は出来ない。プライドとか、自分の考えを撤回するのが嫌だとかそんなんじゃなく。それこそヤツの元に降ったら身動きが取りづらくなってしまう。


 ブラックテクノロジーを用いた最新MK(モビルナイト)を開発するためにどうしても資金が欲しかったから軍の計画を利用したのがそもそも不味かったのか。こうなる可能性も十分にあったはずだ。

 

 もちろん懸念はあった。でも、全く違う部署だから大丈夫だろうと慢心してしまっていた。


 どうする。どうすれば……。


 その軍の決定事項をどう覆そうか。そう頭をひねるが、答えはとうとう出なかった。

 

 


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