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05-07.人工知能


 ガーランドと面会してしばらく。放課後を迎えた僕はいつも通りにヨナの家業である民間軍事会社E.M.Sの格納庫で作業をしていた。


 現在のE.M.Sには多数の“ティンバーウルフ”などの量産型MK(モビルナイト)やそれに搭乗するパイロット、または機体を整備する整備士など本当に多くの傭兵が所属しており、非常に賑やかだ。

 

 ヨナは僕がエディを連れてきてくれたから繁盛しているんだ、なんて言ってくれているけど、それはエディのネームバリューが破格なだけで僕は何もしていない。

 それにまだ学生の身分でこんなに仕事を回せるヨナの手腕無くしては仕事も何もないんだ、彼の経営者としての素質は底が知れない。


 アカデミーを卒業したら一緒に仕事をしないかと誘われているけど、うん、すごく魅力的な誘いだと思ってる。

 一流のパイロットを目指すリオやシャルがいるからアカデミーには通っているけど、ここままパイロットコースに在籍し続けていけば、エスカレーター式に進路はそのまま国際連合軍に入隊となるだろう。


 正直、僕にとってそれは最善の選択ではない。いや、1周目の人生ではその様な道を歩んだんだけど、あの日の裏切りを企てた首謀者が幹部の位に座しているような組織に加わりたいとは一切思わない。

 何より、正義だと信じ続けてきた国際軍内部でカスタマイザーが生み出されていた事実を知った僕にこの組織に正義を感じる事が出来ないでいた。


 けど何も知らないリオはシャルはきっとこのまま軍に入るだろう。


 彼女たちの進路に口を出すつもりは無いけど、事実はきっといつか話さなきゃいけないな。


「コータ、お疲れ様。まだ何か作業してるの?」


 そんな事を考えながら作業していたからなのか、正面からきたリオの存在に気が付かないままだったらしい。机に向かって手元に視線を落としていた僕は視線を上げて恋人を見上げる。

 

 オレンジ色の作業服に身を包んだリオのほっぺたにはMK(モビルナイト)に用いられる油が付着してしまっているが、そんな汚れも彼女の美しさを演出するスパイス程度にしかならない。

 要は、バイト後で油で汚れていようがリオは可愛くて美人だと、まぁそう言いたいだけ。つまりは惚気だ。


「リオ、お疲れ様。うん、作業っていうか、これ」

「あ、フウスケの調整? あはは、尻尾振ってる。かわいい」


 リオがそう言ったのは、僕が最近、研究の一環で作成している犬型の四足歩行ロボット。名はまだ無い。無いつもりなんだけど、シャルが“フウスケ”と言い初めて、その名前が定着しつつある。


 小型犬程の大きさのフウスケは、本物の犬のモーションをプログラムによりデジタル化し、フウスケにインストールしてある。なので確かに無機質の様な容姿はしているけど、子犬じみた所作がなんとも可愛らしい。リオの最近のお気に入りだ。


 今はフウスケの最終調整をしている段階で、“ワルキューレ・ブレイズ”に搭載されている人工知能を応用したソフトをインストールしたので、簡単な意思疎通が可能。更には学習機能にも秀でており、簡単なしつけも出来る。


 とはいえ本物の犬とは違い粗相(・・)はしないので、しつけというか芸をこなせる程度だ。

 けど主人と認めた人物には従順で、面白い事に好みもある。


 そしてどうやらフウスケは開発者である僕ではなく、その恋人のリオによく懐いていた。


 いずれかは人間の様な会話が出来るくらいのレベルまで持って行けたらとは思ってるけど、それはまだ先になりそう。

 でもこちらの言っている事はしっかりと理解している様なので、MK(モビルナイト)への応用も十分に出来そうだ。現段階で“ワルキューレ・ブレイズ”には使えているわけだし。


 けどプログラムを組んだ本人が言うのも何だけど、こんな風に好みが分かれるなんて想像出来なかったな。全てプログラムで思い通りにならないというのが何とも興味深い……。いやもちろ改善の余地はあるけどさ。このフウスケは開発者の僕のいう事は聞かないわけではないけど、でもリオのいう事の方がよく聞くから。


 今後の経過観察の意味もあって、フウスケはとりあえず完成とした。個人の好みがあるのも含めて興味深いし、何よりフウスケと戯れるリオを眺めるのはなんとも眼福。

 華の学園生活を送ってはいるが、E.M.Sの依頼はもれなく戦地ばかりだ。殺伐とした日々を過ごしているので少しでもリオの癒しになってくれたらそれで良い。


 僕はフウスケの調整を終えるとタブレット端末をバッグにしまい込む。そのタイミングで通信端末が着信を告げる。相手はアカギ教授。新型試作機の開発もいよいよ佳境をむかえており、最近は頻繁に連絡を取り合っているし、僕も北海道に出向いて打ち合わせを繰り返していた。


 打ち合わせには同席しないまでも、その遠征にはリオも幾度も同行した。彼女にとっては小旅行気分でリフレッシュにもなるだろうし、僕も恋人同伴の遠征を楽しみにしていた。


 リオに着信の相手がアカギ教授だと告げると、また北海道へ行けるのかななんて言ってリオがおどける。全く可愛いかよ。もちろん遠征ともなれば一緒に来てもらう心算だけどね。バイト代も結構貯まってるし。


 そんな軽い気持ちで電話に出た僕だったけど、アカギ教授から聞いた話は耳を疑うような内容だった。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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