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04.1-02.幕間

 数話、甘々になるかも知れません。

 どうかお付き合い頂けると幸いです。よろしくお願いします。

 

 リオだ、本当にリオだ。

 地球に降下してからリオに会いたいと念じた。すると僕を呼ぶリオの声が聞こえた気がして、そんな予感を頼りにグランドキャニオンまでやって来た。いや、まさか本当にいるなんて。


 リオを“ワルキューレ・ブレイズ”の右手マニュピレータに乗せて、慎重にコクピットまで運ぶ。

 やがて開いたままのコクピットハッチからリオが飛び込んできた。そのまま僕はシートに押し倒されてしまう。それでも構わずリオは僕の胸に顔を埋める。


「コータ! コータ!」


 ふわりと漂うリオの香り。


 ああ、懐かしい。帰ってきたんだ。


 やっと会えた。込み上げるものを感じながら僕はリオの華奢で、けれど柔らかい肩を優しく抱きしめる。

 

「ただいま、リオ」

「コータ、ごめん、ごめんね」


 僕の腕の中でリオは何度もそう言った。顔は見えないけど、声が震えてる。どうして謝るんだろう。謝らなければいけないのは僕なのに。


 僕はリオの肩を抱いて片方の手で背中を摩りながらその理由を聞く。


「どうしてリオが謝るの。居なくなったのは僕の方だよ、謝らなきゃいけないのは僕だ」

「ちが、違うの、私、わたし……」


 感情が次々に溢れ出してきて上手く声に出来ないリオを抱く腕に少しだけ力を込めて抱き締める。リオが話せないなら今は無理に言わなくてもいい。僕は子供をなだめる時の様にリオの背中や肩を摩り、シルクの様に滑らかな黒髪をゆっくり撫でる。

 そうしている内に肩の震えは次第に収まっていった。


 こんな事が前にもあったような。と思い出すけど、ああ、違う。あの時は逆だったっけ。

 そう、あれは僕がタイムリープしてきた直後の事。リオと対面して思わず泣いてしまった時にリオが僕にしてくれた事があった。


 あれから一年と少し。リオと過ごした時間はあっという間で、逆にリオと離れていた期間はすごく長く感じた。


 きっとリオは僕が居なくなった事に何らかの責任を感じていたんだろう。“ハーリンゲン”に乗っていた、あの時現場に居合わせたのに……なんて風に思ったりしているのかも知れない。いや、きっとそう。


 この数ヶ月間、きっと彼女はこうして自分を責め続けていたに違いない。

 それを思うとどんな言葉も薄っぺらくなってしまいそうで。僕はリオが泣き止むまで抱き締めてあげる事しか出来なかった。少しでもリオが落ち着けるように。


 大丈夫、リオは悪くない。

 僕の気持ちがリオに伝わる様に祈りながら。


「……落ち着いた?」

「うん、ありがとう。それと、おかえり」

「うん、ただいま……って」

「だ、ダメ、今は離れられないよ」


 しばらくしてようやく落ち着いたみたいだし、久しぶりに顔を見て話せると思って抱擁を解こうとすると、そう言ってリオが僕を離してくれなかった。

 いや、これはこれで嬉しいんだけど、なんでなんだろう。


「……な、泣いちゃったから」

「え」

「顔がぐちゃぐちゃだから! 泣いちゃったから!」

「えええ」


 そう言って顔を隠す様にして僕から離れようとしない。いや、いっその事このままくっついて過ごすのもありかな、なんて思ってしまう。


 僕は少し可笑しくなって思わず笑いが漏れてしまう。そんな僕にリオは少しだけ膨れてみせる。でも声は弾んでいるから多分リオも可笑しくて仕方ないのかも知れない。


 僕はリオを抱き締めたまま、片手で彼女の手を取る。いつも少し冷たい気持ちの良いすべすべの手だけど、この寒空に晒されて冷え切ってしまった手を僕の体温で温める。するとリオは「あったかい……」と言って目を細めた。


 しばらくして暖かさを取り戻したリオのその手に、僕は用意してきた物を渡す。

 するとリオは驚いた様に顔をあげる。確かに涙は流しているけど、うん、いつも通りにすごく可愛い。

 

 そして自分の指にはめられた指輪(・・)を驚いた表情で見る。見開かれて、涙で濡れた長いまつ毛と翡翠色の瞳がとても綺麗だった。


「……こ、これ」

「誕生日プレゼント。誕生日おめでとう、リオ」

「……っ……」


 するとリオは目から大粒の涙を流して指輪がはめられた右手を左手で包む様に抱きしめた。これは……うん、喜んでくれてるかな。けど、どうしても不安でつい聞いてしまう。


「その、指輪とか少し重いかなとか、その……「コータ!」……っ!?」


 俯くリオの顔を覗き込む様にした次の瞬間、とてつもない快感に襲われる。

 唇にふわふわしてとても柔らかくて、そして吸い付いてくる感覚が広がっていく。そしてすぐに鼻口がリオの香りでいっぱいになって胸が幸福感で満ちていく。

 シートに腰掛けた僕に馬乗りになった状態のままリオは情熱的に、でも辿々しく僕の唇を奪う。


「ん……ちゅ……コータ、コータ……んちゅ……」


 リオのキスは激しくて、でもすごく優しくて。

 

 その柔らかい唇で僕の唇をついばみ、僕の口内に侵入してきたリオの舌が僕の唾液を掻き出して、そして細い喉をこくこくと動かして、飲み下していく。

 いつものリオじゃないみたいだ。でも、リオが僕を求めてくれている事が伝わってきて、僕もリオを求めてしまう。


 僕もリオのその可愛い舌に僕の舌を絡ませた。さっきまであんなに積極的だったのに責められたリオは少し恥ずかしそうに、でもおずおずと僕の舌に自身の舌を絡ませてきてくれた。それがとても可愛くて、僕はリオを抱き締める。


 初めてのキスはすごく情熱的で、会えなかった時の穴を埋める様に僕たちはお互いを求め合った。

 

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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