04-30.2.PLANET DANCE②
撃破した“ルビリア”のパイロット捕縛はレベッカさん達に任せて、尚も奮闘するマリオンさん達の元へ急ぐ。
恐らく、この宙域1番の規模の基地なのだろう。敵部隊も先鋒隊に比べ、二陣の方が圧倒的に量が多く尚且つ練度が高い。
ロゼッタが援護に向かったとはいえマリオンさん達も苦戦を強いられているはずだ。
その宙域に向かうと案の定、マリオンさんが苦戦していた。
彼女はセイバーの扱いに長けたパイロットだけど、さすがに数で攻められ後退を始めていた。
「マリオンさん、援護します!」
『コータさんですか!?』
フライトシステムのユニット、【フライトブースター】の出力そのままにマリオン機と鍔迫り合いをしていた“ルビリア”に膝蹴りを入れる。すると、マリオンさんが吹き飛ばされた“ルビリア”にすかさずフォトンライフルの銃弾を撃ち込む。
「ナイスです」
『貴方こそ、最高のタイミングですわ』
言葉を短く交わし、僕は右腕マニュピレータにフォトンセイバーを、左にはマガジン交換を済ませたフォトンシューターを装備させ、敵陣に突撃をかける。
背中からロゼッタによる援護射撃が行われる。
それは敵機体を狙った射撃でもあり、僕が戦いやすい様に敵の動きを誘導するものでもある。僕より年下だけど、味方の動きをよく見ることが出来る目を彼女は持っていた。
迫る“ルビリア”を一機、二機と捌いていく。
フォトンセイバーによる格闘戦に於いてもなるべくコクピットは避ける。敵パイロットがカスタマイザーであると想定出来るし、戦闘後の捕獲ができる可能性が高いからだ。
『――』
瞬間、あの閃きが頭に過ぎる。
半ば条件反射で機体を操作すると死角になっていた、いや、そうなるように誘導させられていたと言った方が良いかも知れない。
その死角から鋭い斬撃が迫っていた。
それをフォトンセイバーで受け止め、敵の姿を確認すると、他の“ルビリア”にはない一本角があった。恐らく隊長機だ。
『……バケモノめ!』
接触回線で相手パイロットの悪態がインカムから聞こえてきた。少ししわがれた男の声だった。
バケモノ? 僕が?
このパイロットがどういう意味でそう言ったかは分からないけど、少なくともコイツらの親玉、彼らにレギュレータを与えているマッドサイエンティスト達よりは人の心は持っているとは思う。
まぁ、でもその反面、そうかもなとも思う。
だって僕はリオをあの運命から守る為だけに戦っている。
全ての人の命は平等なんだと思いつつも、僕は心のどこかで大切な人の命より重いものは無いと思ってしまっている。僕の命なんて言わずもがな。
僕はそうやって命に優先順位を付けて、そう、すごく最低だけど命を剪定してしまっている。
「……そうかもね」
気がつけば僕はそんな事を呟いていた。本当にそう思う。僕はバケモノだ。
『!? こ、子ども!? 子供が手にした玩具で好き勝手にしやがって!』
子ども……子どもか。
確かに今の僕は15歳。子どもだと言われればそうかも知れない。でも、そんな年の子ども達を施設に収容してレギュレータを投薬する事により戦闘能力を引き上げて戦闘兵器にしているような奴らが言うか。
これからいろんな事を学び、吸収し、自分の考えを持ち成長していくはずの彼らを管理している奴らの言うセリフじゃない。
「だったらどうした」
『善も悪も分からない子供が! 大人の戦いに顔を突っ込むな!!』
ああ、なるほど。そういう事か。
大人を舐めるなと、このパイロットは言った。
戦い、戦争に善も悪も無い。正義の数だけ善があり、悪がある。戦いに良し悪しなんて無い、でも、それでも。
守りたいモノの為に戦って何が悪い。
「子供とか大人とか、戦争に関係ない! 自分の信じる正義をぶつけて来い、男なら!」
『ガキがぁぁッ!!』
そう吠えると隊長機は胸部バルカンを発砲し、機体出力に任せて“ワルキューレ・ブレイズ”のセイバーを弾く。なるほど隊長機らしく他の“ルビリア”とはひと味違う改造がされている様だ。
“ワルキューレ・ブレイズ”の動きを止められただけの事はある。
それにしても〝男なら〟か、我ながら笑ってしまう。だって僕の周りには自分の正義を信じて戦う女性がたくさんいるんだから。
距離を置いた敵機が両肩に装備していたミサイルポッドからそれぞれ3発ずつ、計6発のミサイルを射出した。
威力はありそうだけど速度が遅い。紙一重で躱して突進を仕掛けるか。一瞬そんな事が頭に過ったが瞬時に却下する。
アラスカでの戦いを忘れたか。
安易な判断をしてはならない。まず自分で自分を疑うんだ。
僕は“ワルキューレ・ブレイズ”の右腕に内蔵してある90mmマシンガンで弾幕を張り、数個のミサイルを撃ち落とし、残りの数発は同じく左腕のグレネードを時限式に調整して放つ。
ほんの数秒後に爆発したグレネードに誘爆させる形で残りのミサイルも撃ち落とす。
一瞬驚いた挙動を見せた隊長機。しかし直ぐ様背面スラスターを炊いて距離を置こうとする。けど僕はそれを許さない。フライトブースターの出力を上げて直ぐに距離を詰める。
右腕のセイバーの斬撃を繰り出す。隊長機の肩アーマーから装甲を焼き切る。……はずが、肩アーマーに阻まれる。
「フォトンコーティングかっ」
肩アーマーにフォトンコーティングをしていたらしく、“ワルキューレ・ブレイズ”のセイバーは雷の様な閃光の後に弾かれた。
それで生まれた一瞬の硬直。その隙に隊長機は蹴りを繰り出し、“ワルキューレ・ブレイズ”を蹴り飛ばす。ルナティック合金製の装甲はびくともしないが、衝撃を相殺するには至らず体勢を崩してしまった。
そして、隊長機の姿が一瞬消える。
そう、隊長機は器用に太陽を背にして、その眩い光の中に姿を隠したのだ。
突き刺さる様に強烈な太陽光を受けた“ワルキューレ・ブレイズ”のメイン光学センサーが瞬時に光量調整を行う。それでも何とか敵機の影がほっそりと見える程度。いや、でも大丈夫。これで良い。
光の中の機影が何らかの構えをとる。恐らくスラスター全開で加速してからの突き。
眩しいけど、見えないけど、動きを……感じるんだ。
『――』
次の瞬間、隊長機の突きを紙一重で躱し、“ワルキューレ・ブレイズ”のフォトンセイバーは敵機のコクピットを完全に貫いていた。
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