04-28.“ワルキューレ・ブレイズ”
「“ワルキューレ・ブレイズ”、ですか」
アークティック社の個室格納庫。
特注の機体や極秘の作業を行うための場所に佇む新生“ワルキューレ”を見上げた僕はそう呟いた。
タブレット端末を携えたクララさんはこの新生“ワルキューレ”にその様な名前を付け直したのだという。そしてブレイズとは、うん、なかなか重みのある名前だ。
ユニコーンを連想させるブレードアンテナなどの頭部のデザインはそのままで、カメラのみツインアイタイプに変更。純白のルナティック合金も元通り。
失っていた四肢は新造されており、脚部の下腿、すね、又はふくらはぎの部分に前後に展開するスラスターを内蔵し、より素早い前後の動きに対応出来るようにした。
前腕部には引き続きフォトンセイバーのジェネレーターを内蔵。それに加えて右腕には90mmの実弾式バルカン、左腕にはグレネードランチャーを内蔵して火力アップを図った。
シールドは“ファントムクロウ”などに用いたサブアーム式を採用。背部ランドセルから伸びるサブアームにマウントさせる事により、防御体勢からでも両腕をフリーにさせる事が出来、より隙が産まれにくい戦い方が選択出来るようになった。
そしてそのシールドには“ソメイヨシノ”で製造されたフォトンフィールドジェネレーターを内蔵させた。これで実弾はもちろん、フォトンビームも防ぐ事が可能。
以前の装備でもフォトンビームは防ぐ事が出来たが、あれはコーティングのみだったので、戦闘中に数発防御するとそれが剥がれてしまう懸念があった。しかしフォトンフィールドジェネレーターの内蔵によりその心配も無くなった。
以前まではまだ試作の段階だったチェイサーミサイルは、ガーランドとの戦いで得たデータを元にして再調整が行われた。
カスタマイザー特有の脳波を検知して作動するように設定してあるチェイサーミサイルが何故僕の意思で作動したのか。
その答えは“ワルキューレ”の戦闘ログに記録されていた。
僕からもそのカスタマイザー特有の脳波が検知されたらしい。厳密には少しだけ違うみたいなんだけど、それは理論上、チェイサーミサイルが作動してもおかしくない数値だったのだとか。
それに関しては驚いた。ああ、いや、カスタマイザー以外からの人間にも数は少ないが、その様な脳波を発する者がいるのは1周目の段階で確認してた。
それにまさか自分が該当するとは思っていなかったから。チェイサーミサイルが作動した時点でもしかしたらとは思っていたけど、立証されるとやはり驚いた。
今まではその脳波を持つ人間を探し出す方法すら分からなかったから、特定する事が難しかった。
でもそれさえ分かれば、自分が実験体になってあの新素材の研究を加速させる事が出来ると思う。
本来なら全てのパイロットが使う事が出来る汎用性の高い兵器の開発が必要だけど、今は僕が使えるという事実があればそれで良い。兵器としての在り方としては邪道かも知れないけど。
それと、僕自身が考案した新兵器【フォトンシューター】。これはMK用拳銃で既にある拳銃に似た兵器。
以前までのMK拳銃は実弾兵器だったけど、これはフォトンビーム弾を発射出来るフォトン兵器。
射程はフォトンライフルに及ばないが、威力はそのままに片手でも扱いやすいように小型化した物。それを大腿部に内蔵されているホルスターに左右に一丁ずつ装備した。そう、二丁拳銃だ。
両手同時の武器操作、習得には時間がかかるかも知れないけど、複数の敵機に囲まれた状態からの打開が狙える様にと考えての事。それと状況次第で実弾も放てるようにMK用拳銃をリアスカートアーマーに装備させた。
けど前述した通りに射程はフォトンライフルに及ばない。そのネガティブな要因を補うのがクララさんが開発し、背面に装着したMK用のフライトシステムだ。
飛行時は翼の様なスタビライザーが展開して大空を飛行する事が出来る。
敵味方の陣形を無視して上空から接近する戦い方が出来るのは非常に大きなアドバンテージになり得るだろう。ただ当然だけど狙撃には注意しなければならない。ただ動き回っていさえすればそうそう当たるものではないけど。
フライトシステムを得たことによって、格段に操縦は難しくなった。
空中での操縦は戦闘機、ファイター系の操縦技術も要する。ファイターの操縦はシャルの得意とするところなので帰ったら思いっきり技術を吸収しよう。
アメリカに帰ったら、か。一体どうやって帰ったものかな。
改造した“ワルキューレ・ブレイズ”と一緒に帰る事にはなると思うんだけど、見た目も変わってしまったこの機体をどう説明したものか。
いや、それはとりあえずはいいや。とにかく今はいち早くリオに会いたい。
僕のこのプレゼントを喜んでくれるだろうか。そんな事を考えるだけで心が弾むくらいに僕はリオとの再会を心待ちにしていたんだ。
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