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04-27.失って、得た物


 ルナティック合金とスタークリスタルを掛け合わせた物質の加工には思ったより苦戦した。けどその苦労は苦痛なはすがなく、磨けば磨く程に透けるような白が美しさを増していった。

 

 そしてコレを渡した時のリオの顔を思い浮かべる。


 あれから3ヶ月。“ハーリンゲン”の格納庫で拳を合わせてからもうそれだけの時間が流れた。

 それだけ、とも思うし、もう、とも思う。


 “ソメイヨシノ”で過ごした時間は1周目の人生では体験出来なかった事で、僕の知らない所で、世界のバランスを必死で取ろうとしていた組織があっただなんて思わなかった。

 

 そしてやはりガーランドはカスタマイザーに関与していた。現場を抑えた訳じゃない、カスタマイザーとガーランドの直接的な共通点を見出した訳じゃない。

 でもレイズ側が保有している可能性がある施設からガーランドが飛び出して来たのは間違いない。

 

 レイズ、カスタマイザー、ガーランド。この三者が繋がっている。そう懸念していたけど、それが確信に変わった。レイズとガーランドが繋がっていたのは、あの日のヤツの言動から分かっていたけど、カスタマイザーとの繋がりは僕の予想でしかなかったから。


 “ソメイヨシノ”のクルー達はどうやらその事実は事前に掴んでいたみたいだった。

 表向きは繋がっていそうもない三者の関係を把握していた“ソメイヨシノ”の情報部の手腕は驚くべき物だ、それに科学力。これも僕の予測を上回る発展具合だった。

 もともと持っていた技術もそうだけど、僕が提示した技術を苦労しつつも、けれども意外とあっさりと実現していってしまった。

 

 その“ソメイヨシノ”と繋がっていたアークティック社。その頭脳とも言える人物、クララさん。彼女とカレンさんが協力すれば技術は更に磨かれるだろう。


 それは何も“ソメイヨシノ”やアークティック社に限定されない。生み出された物は必ず広まり、更に発展していく。そうなれば国際連合で開発されている新型機、“ダリア”や“ライラック”にも影響を与えて完成が大幅に早まる事が予想される。


 となれば、もしかしたらあのテロ自体が1周目の時よりも早く起きる可能性もある。

 

 カスタマイザーを引き連れた軍を編成すると思われるガーランドにとって、ニウライザの完成も脅威であるはずだ。じゃ無ければ製薬会社の主任を暗殺するなんて事はしないはずなんだから。


 月での改修作業が終われば、あとは“リュウグウ”に戻ってニウライザの仕上げをしたら“ソメイヨシノ”での僕の役割は終わる。そうしたら大手を振ってアメリカに帰れる……って、本当にそうなのか? 


 もしかしたら僕は戦没扱いになっていたりするんじゃ無いだろうか。その辺りの扱いのことを気にしていなかったから、今になって心配になってきたぞ。

 リオを陰ながら護衛してくれている諜報員の彼女に僕の扱いがどうなっているのか確認しなきゃな。


 今思えば、アカデミーも除籍扱いになってしまっていたりするのだろうか。そうなると困る。……でも、僕は何に困るのだろうか。


 僕はリオと一緒に自分の操縦技術を磨く為にアカデミーに通おうと思った。それは、当時の僕、つまりタイムリープして来た当時の僕には最低限の操縦技術しかなかったから、パイロット育成の最高峰であると思ったアカデミーに通おうと思ったんだ。

 それにはもちろんリオと一緒の時間を過ごしたいという下心もあったけど、それでやっぱりアカデミーでの授業も魅力的だった。


 だけど、いや、すごく傲慢な言い方になってしまうけれど、果たしてアカデミーで学ぶべき事はあるんだろうかと思ってしまう。


 もちろん僕は自分はあくまで整備士だと思っているし、自惚れるつもりはない。でも僕は物事を客観的に見る事はそんなに不得意じゃないと思ってる。


 もちろんガーランドと手合わせして負けたし、まだまだ僕は発展途上だ。けど、どうしてもアカデミーで学びたいかと言われると言葉に詰まってしまう。


 いや、うん。それでも僕はリオやシャルと同じアカデミーに通うんだろうし、日々の鍛錬も怠らない。けど、今までとは違う目線で学園生活を送る必要があると思ってる。


 僕は月で確かに新型試作機の片鱗を見た。

 それは確かに開発途中だけど、この時代に似つかわしく無い発展した技術の集合体だった。


 それをあのガーランドが見過ごすだろうか。


 自身の力の及ばない部署が指揮する新型試作機製造計画だとしても、自分の息のかかる新型、つまり“ダリア”や“ライラック”などの機体にその技術を盛り込もうとしてくるんじゃないのか。


 あと数年すれば“ダリア”や“ライラック”、新型試作機1号機と2号機が完成する。

 それは1周目の時よりもきっと早い段階で……もしかしたら計画の前倒しなんてする事もあるかも知れない。


 もし今反乱が起きたら。そう考える。


 準備は万端ではない。では無いが不十分かと言えばそうでもない。

 技術の種は撒いた。経緯はどうであれ、目的を同じくする“ソメイヨシノ”がいる。生まれ変わった僕の愛機もある。十分では無いけれど、心強い味方を得る事が出来た。


 明日、新型“ワルキューレ”を貰い受ける。

 リオに渡すプレゼントも用意した、そちらの方の準備は万端だ。





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― 新着の感想 ―
[一言] 遂に飛行型ワルキューレが登場するのか… クスィーガンダムみたいな感じになるのか、はたまたペーネロペーみたいな感じになるのか…
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