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04-25.月の博物館


 3人で“ワルキューレ”の改修案を出し合う。

 お互いに理想を提示し、現実に考えて妥協して、しかし譲れない所はやっぱりあって。

 だけど3人が思う理想の“ワルキューレ”像というものは大きな違いは無く滞りなく話し合いは進んだ。


 夜が明けて……という表現はそもそも夜が無い月に居る僕にとっては正しい表現ではないけど、月は月で地球同様に1日を24時間と定めており、それぞれの時間帯の事を朝昼夜等と呼ぶ。


 宇宙に居ようがやはりその様な表現は便利で使われ続けているそうだ。と、アカデミーの授業で習った。


 それは余談だけど、それから僕はまとまった意見を元に“ワルキューレ”の設計を始めた。

 あんなに有意義な話し合いをした後だったので興奮して寝られそうに無かったし、何より有名な設計士であるクララさんに僕の描いた図面を見てほしいと思ったから。


 予めクララさんから貰っていたフライトシステムの概要データを基にして。もとよりこの手のフライトシステムの理屈は1周目の人生で勉強済みなので、然程理解に時間は掛からなかったけれど。なんと言うか、復習みたいな感覚に近い。


 でもやっぱりMK(モビルナイト)の設計は簡単ではなくて、無我夢中で描き上げた設計図を仮眠明けのクララさんに提出すると、なんて仕事が早いんだと驚かれた。けどやっぱり粗が多くて修正箇所は幾つかあって。でも、いつかのカレンさんの様に褒めてくれた。


 もちろん彼女なりの優しさも入っているだろうけど、それでもやっぱり嬉しかった。


 その後、僕も仮眠をし、修正を加えて改めてクララさんに提出した、僕が考案した追加武装の設計図も添えて。


 あまりにも早い仕事で、それにはクララさんもすごく驚いていたけど……いやいや、まさかこんな仕事量を物の数時間でこなせるほどのスキルは持っていない。


 新兵器の構想は前々から温めていた事で、妄想を忘れないようにメモがわりに図面にしていた物をそのまま提出しただけ。

 僕には知識チートがあるからなんとかなっているだけで、やっぱりクララさんやカレンさんのような本物の天才の足元にも及ばないから。


 それで今は改めて取った仮眠から目覚めたところ。搬入作業と“ノト”の補給を終えたロゼッタ達3人に月観光に出かけようと誘われた。

 

 “ソメイヨシノ”で作戦を遂行し、長い航海を終えて長期の休暇になるはずだった彼女らは、本来なら思い思いの場所で休暇を過ごしているはずだ。それを自らの申し出だったとは言え、こうして月まで護衛、又は操舵手として付き添ってくれている。


 その彼女らからの誘いを無碍にする訳にもいかないし、何より僕も月は初めて訪れた場所だ。せっかく来たんだし。そんな甘えも時には必要だろう。


 初めての月。それを出来ればリオも一緒に感じられたら、なんて事が頭に過ぎる。

 

 そうだ。リオの誕生日までにはアメリカに帰れそうだし、何かプレゼントでも在れば。

 誕生日プレゼントが月のものだなんて、少しロマンチックじゃ無いだろうか。そんなにキザな物じゃなければ僕らしくて良いかも知れない。


 1周目の時には叶わなかった、一緒に行うはずだった月の基地での任務。次こそは必ず……。



「おお、マジで足跡じゃん。コレ、当時のままなんだろ? あれ、なんだっけ、人類がなんたら……」

「『それは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。』ですね。初めて月に降り立った宇宙船の船長の言葉だそうですわ」


 直径10m程の円型のショーケースの中に展示されてある当時の足跡を見たレベッカさんが興奮した様にいうと、マリオンさんが少し得意げに過去の偉人の言葉を口にした。


 月の歴史博物館。そこには人類が初めて月に降り立った時の足跡だと言われる地面が崩される事なくそのまま展示してある。


 正確には、ここは史上初めて月面に降り立った場所を中心に建てられた博物館であり、その足跡が着いた地形をそのままショーケースで囲い込むようにして展示してある。


 きちんとした手続きさえすれば、こうして月面旅行を気軽に行えるようになった。でもこの足跡をつけた人たちは、決死の覚悟で宇宙に旅立ったに違いない。


 きっと任務を全うして地球に帰った暁には英雄の様な扱いを受けただろう。それでなければ、その宇宙船の船長の言葉がこうして何百年も語り継がれる事はやっぱり無いと思うから。

 

 『それは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。』


 まさにその通りで、今の僕たちがあるのは未開の地を切り開いた偉人たちがいるからこそ。彼らが一歩一歩確実に前進し続けだからこそ今がある。と、やはり過去に思いを馳せる。

「あれ、コータは何も買わないの?」


 全ての展示を見終わった後に売店でお土産を購入していたロゼッタがくりくりとした瞳で僕を覗き込んできた。


「うん、今はいいかなって」

「そう? また来ようって事?」


 どのお土産も確かに素敵だけど、やっぱりリオの誕生日プレゼントにするにはどれもピンとこなかった。

 その代わりに僕には考えがあった。


 昔の人は月の石をすごく大事に思ったという。

 月の石、そう、それは“ワルキューレ”の装甲に使われているルナティック合金の元になる鉱石も言ってしまえば月の石だ。


 月の石、ルナティック合金に手を加えれば……。


 もし成功したら、うん、それはちょっと、いやかなり面白い。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] アイデアの相乗効果がイノベーション爆発(意味不) それはともかく。主人公が楽しそうで何より。
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