04-19.次の目的地は
「……これは、ひどいやられ様だな」
それがドッグにやってきたカレンさんの第一声だった。それには僕も同意見。いや、僕自身が無傷だったのが信じられない。
“リュウグウ”に帰還した僕たちは基地内部にある整備ドッグで無残にも大破した“ワルキューレ”を前にしていた。
順調かと思われた作戦だったけど、突如現れたイレギュラーのせいで戦場は大混乱に陥った。
けど、なんとか僕がそのイレギュラー、ガーランドと戦闘をしている隙に味方をウエハラ達が回収していた様で、こちら側の人的被害は幸運にも無かった。
撃墜された第一小隊のマリオンさんや、二曹のお姉さんのレベッカさんも無事保護された。
あの状態でこちらに人的被害が無かったのは奇跡、とまではいかないまでも幸運だったと言わざるを得ない。
整備用ハンガーに固定された“ワルキューレ”はもはやスクラップ寸前。
強固なはずのルナティック合金製の装甲はバキバキに割れて内部フレームが露出してしまっている。
両腕、左脚が欠損しており、残るは右脚のみ。フォトンビームにも耐えうるシールドも、敵の装甲を焼き貫くフォトンライフルも失った。戦闘中にマントも失ってしまったからガーランドに“ワルキューレ”の姿も見られてしまった。
それに関しては問題では無い。と思う。そもそもガーランドがあの場にいる事自体が問題なのだから、ヤツもその事については言及出来ない、と思う。
「これは修理に時間がかかりそうだな」
カレンさんはそう言うけど、修理なんて次元じゃない。いやもちろん修理は出来るだろうけど。
“ワルキューレ”の最大の特徴であるルナティック合金製の装甲の大半を失ってしまった。
貴重な素材であるのだけど、調達が不可能というわけではない。けど簡単なものでもないし、何よりツテがない。“ソメイヨシノ”を守る為に負った傷だから、とアヤコ先輩は修理費を負担してくれるとは言ってくれたけど、物資の調達自体が難しかった。
“ワルキューレ”は直す。それは良い、それはそれとして問題なのはガーランドだ。
まずあの出来損ないの“ラッター”を駆っていたのは間違い無くガーランドだった。
あの程度の機体でふた世代も上の機種である“ワルキューレ”と肩を並べ……いや、妙な強がりはやめよう。“ワルキューレ”を圧倒していた。
敗因は言わずもがな僕の技量不足。もう、それは仕方ない。ここ数ヶ月はずっとそれを痛感し続けているのだから、もうこれ以上反省したって仕方ない。それはそれとして僕は天才では無いのだから時間をかけて努力し続けるしかない。
けど、天才であるガーランドに単純な努力だけで勝てるだなんて思っていない。
その天才も才能にかまけて努力をしていないはずはないのだ。そうでなければ〝聖騎士〟などと言われ、その、慕われもしないはずなんだ。
才能でも技能でも勝てないなら僕に残されているのは、知識と奇策だ。
実際にガーランドと戦って分かった実力差。それを突きつけられて落ち込むほど僕の守りたいものは軽くない。必ず奴を超えて心を折るか、それとも次こそは勝つ。
その為に今すぐ出来る事は、一つだ。
今回の作戦でガーランドがカスタマイザーと繋がっている事が分かった。そう、僕は奴の尻尾を掴んだんだ
カスタマイザーを追えばいつかはガーランドに遭遇する。次にガーランドにあった時に今回の様に負けない様にする為に僕がしなければならない事は、
「カレンさん、僕は月へ行きます」
「つ、月へ? 何故だ」
「“ワルキューレ”はアークティックで製造されました、そこで“ワルキューレ”を設計した人とあって強化したいんです。それにカレンさんも同行して欲しいのですが」
「私もか? ニウライザの方も軌道に乗りつつあるから、数日程度現場を離れても構わないとは思うが……何故私と?」
「僕には直接アークティック社と繋がりはありませんから。コネクションを持ってる人が居てくれれば話は早いでしょ?」
「う、まぁ、そうだ。いや、君は大したヤツだよ。敵わないな」
僕がそういうとカレンさんは「降参だよ」というジェスチャーをした。
うん、そうだよね。世間的にはテロリストに分類される“ソメイヨシノ”が国際連合に機体提供しているアークティック社と繋がっているだなんて露見したら洒落にならないから。
“ソメイヨシノ”に配備されている“ティンバーウルフ”はどうみても正規品だし、補充に用いている部品類もクルスデネリで遭遇したようなジャンク屋から流れ着いたものではない事くらい分かる。
というか、そう睨んでは居たけど、実際にそうだと言われるとアークティック社ってめちゃくちゃヤバい企業だよね、テロリストと裏で繋がっているだなんて。
“ソメイヨシノ”から“ワルキューレ”とそのパイロットの僕がセットになって訪れたら普通だったら驚かれるし違和感があるだろうけど、“ソメイヨシノ”と繋がっているような企業だ。大体のことは飲み込めるだろうし、要らぬ詮索はしないだろう。
それと、チェイサーミサイル。
カスタマイザー専用兵器だったはずなのに、何故僕の言う事を聞いたのか。それが気になった。それの真相を開発者に聞いてみなければならない。
それに、アークティック社ではアカギ教授に開発依頼した試作機の開発が進んでいるはずだから。
ガーランドに対抗するための最強のMKが。
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