04-16.フォトンフィールド
模擬戦を終えてからのこの3ヶ月間で“ソメイヨシノ”は僕が伝えた技術を次々と実現させていった。
それは“ソメイヨシノ”の後ろにいるであろうナナハラ重工が持つ資金力と宇宙事業で培われた技術力があったからこそ出来た芸当だといえる。いや、まぁ裏にナナハラ重工がいる、とは誰も言ってはいないのだけれど。
如何なる大義を背負って活動をしていようが、“ソメイヨシノ”はやはり世間的にはテロリストと言われてしまうような集団だとは思うから。
その組織と繋がっているだなんて露見したら一大事だからね。だからこそアヤコ先輩は幼少期からナナハラの名前を隠して過ごしていたわけだし。
バックボーンはどうであれ、僕が提示した技術を実現させる力があったという事は僕も驚いた。
もともとカレンさんが独自に設計した第4世代MKのジェネレータを組み上げているんだから、世界的に見ても超高水準の技術を持っていると評価してはいたんだけど。
僕が伝えた技術は“ソメイヨシノ”の第一小隊の機体全てに適応していた。
それの多くは、MKの剣となり盾となるものだ。例えば、そう、今あの“ファントムクロウ”が振り回しているスーパー・バイブレーション・ソード頭文字を取ってS.V.Sと名付けた実体剣だ。
実体剣はフォトンセイバーが普及する前まで採用されてきた近距離戦の主役だった。
しかし刀身すら切り裂いてしまうフォトンセイバーが生み出されるとあっという間にその姿を消した。
合金製、つまり金属である実体剣はフォトン粒子によって容易に焼き切る事が出来るんだから、当然そうなる。
けれどS.V.Sにはフォトンジェネレータを内蔵した。刀身に微細なフォトン粒子を纏せる事によってフォトンセイバーと打ち合っても負ける事は無くなったし、刃の切れ味も向上した。
そして何より名前の由来になっている、超高速振動する刃がある。これによって同じ材質のMKの装甲を容易く切断する事が可能になっている。
そしてこのS.V.Sはフォトンセイバーに比べて消費エネルギーがものすごく少なくて良い。
携帯性や汎用性ではフォトンセイバーに利があるが、節約したエネルギーを他に回せるので“ファントムクロウ”などの量産機にはS.V.Sのような兵器の方が良い場合もある。
ではその節約したエネルギーはどこへ行ったのかというと、各機に持たせる事になったシールドに利用している。
腕にではなく、背部ランドセルのアームに取り付けたそのシールドはインストールしたソフトによって制御されて、独立稼働する。つまり第3の腕をマウントする事により、常に両手が空いた状態に出来るようにした。
そしてそのシールドに内蔵したのがS.V.Sにも採用したフォトンジェネレータだ。
微細なフォトン粒子をシールドに纏わせる事によりより強力な攻撃にも耐えうる頑丈なものになった。
そう、それこそが【フォトンフィールド・ジェネレータ】だ。つまり“ソメイヨシノ”はこの時代では考えられなかった技術、バリアを手に入れたという事になる。
もともと1周目の世界でも盾には内蔵していたものもあったけれど、剣に採用したのは僕のアイデアだ。
そして今回一番変化したのはエース機、“ライオウ”だ。
紙装甲なのは今まで通りだけど、出力の大きいジェネレータを搭載する事によって、他の“ファントムクロウ”に比べて分厚いフォトンフィールド
を張る事が出来る様になり、パイロットの生存率を上げる事に成功した。
そしてウエハラ本人の意向で非採用となったシールドの代わりに採用したのが背部にマウントした20mの刀身を誇る大太刀【マゴロク】だ。
鞘にリニア機構を内蔵させており、納刀状態から素早い抜刀が可能となっているためウエハラの得意とする近距離格闘戦に大いに役立つと思う。
それと“ライオウ”にライフルなどの飛び道具が装備されていなかった理由。それは単にウエハラは射撃が全然下手だっただけ。それでも持つだけは持てよ、と思ったけど、それが無くても十分な戦果を発揮して帰ってくるんだからまぁ大した物ではある。
けどこのまま中距離にいる敵に対応出来ないのは問題なので、投擲可能な武器、チャクラムを折りたたんで大腿部装甲内に潜ませた。
モーショントレースシステムを採用した事により、ウエハラ本人の身体の動きを見事に再現する事が出来るので、命中も容易だったようだ。いや、彼女の運動神経には驚いた。
新しい操縦方法にする事により、モーション以外の操作が出来なくなってしまったけれど、あの怪我をしたヨーコというパイロットにその役目を担ってもらう事になった。
義手の発案者が仲間を殺した僕だと知った時は動揺していたけど、“ソメイヨシノ”のクルーやウエハラの態度から何かを感じたのだろう、それでも最終的には受け入れてくれた。
2人の息を合わせるのは大変かな、なんて思っていたけれど、あの様子なら問題ないだろう。
施設から出撃してきた敵機を圧倒している姿を見ていれば、それもいらぬ心配なんだろうな。そんな事を思いながら後方から戦況を見ていると、敵機の中に一機だけ動きが違う機体を発見した。
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