04-14.出発
カスタマイザー研究所はソメイヨシノ隊の情報部が掴んでいる情報によると、地球にふたつ、宇宙に三つ確認しているそうだ。それらは恐らく国際連合とレイズに所属するものだと思われるが、裏はまだとれていないのだという。
そしてまだ発見出来ていない施設も恐らくいくつかあるだろうということだった。
それらのうちの一つ、“リュウグウ”からもっとも近い位置にある研究所が地球の衛星軌道にあるらしい。
スペースデブリに紛れて今もなおカスタマイザーを生み出し続けていると思われるその施設が今回“ソメイヨシノ”の目標だ。
巧みに存在を隠している施設の所在を特定できるだなんてソメイヨシノ隊の情報部は優秀だと思う。
それに今はその施設がどこに所属しているのか分からなくとも良いと思う。それがカスタマイザー研究所ならば。
だって真相は彼らを保護してしまえばいずれ分かってくることだから。
いつか世間がカスタマイザーという人たちを認知してくれれば、ゆっくりでも少なくなっていくだろう。それはもちろんニウライザによって救われて、という意味だ。
もちろんカスタマイザー研究所等の施設などは存在自体が隠匿されている。なので、まさか看板を掲げているわけもなく、どの組織に属しているのかを探るのは至難の業なのだそうだ。
ニウライザ開発の為に“ソメイヨシノ”に乗り込んだはずの僕がなぜわざわざそんな作戦に同行するのかというと、前述した通りに改良を施した“ライオウ”の実戦データが欲しかったのと、それと、その作戦に僕も参加しようと思ったから。
その施設にあの日、虐殺テロを起こしたガーランドに繋がる。そんな予感がしてならない。
でも、虐殺テロに多数のカスタマイザーが加勢していたのではないかと睨む僕としてはやはり捨ておけなかった。その施設があの日につながっている。そんな気がしたから。
◇
“リュウグウ”から出航した“ソメイヨシノ”はすぐに電磁迷彩を纏って電子機器による索敵などから身を隠した。
“リュウグウ”とカスタマイザー研究所までは本来ならさほど時間のかかる距離ではないが、大きく迂回して宇宙デブリに隠れながらゆっくり接近する。理由は言わずもがな、基地の所在を出現方向から特定させない為、だと思う。
小型宇宙船……例えば“リトルダーナ”程の船で近づくという方法もあるにはあるが、“ソメイヨシノ”は多くのMKを運ぶことができ、なおかつ自身も強力な荷電粒子砲やフォトンキャノンなどを複数装備している。その為、万一の時は自身も戦える非常に強力な戦力になりえる。その上、逃げ足も早いのでメリットが大きい。
基地を出て数日、目標であるカスタマイザー研究所が主砲の射程に入ったところで“ソメイヨシノ”は停泊した。
前情報通りにスペースデブリが多い宙域で、巨大な艦体を誇る“ソメイヨシノ”と同じかそれ以上の大きさのデブリも多数あり、それに溶け込むようにして身を隠す。
頻繁に戦闘が起こる場所ではない為に、ジャミング粒子はあまり撒かれてはいないようだ。
アヤコ先輩はこれを報復だといった。けれどそれは研究所の破壊や制圧などではなく、今回は施設にいるであろう守備隊への攻撃を行う予定だ。
カスタマイザー予備軍の子供たちやそれらの世話をする教員のような立場にいる非戦闘員たちの多くは、自分がいる施設は何のための施設なのか知らずに過ごしているものも多いそうだ。
それらの非戦闘員に危害を加えないように活動してきたらしく、今回も施設に直接手をかけるような事はしないのだそうだ。報復だと言ってそれらにまで危害を加えようとするならば、僕は何がなんでも止めていた。
だってそんなのガーランドとやっている事は何も変わらなくなってしまうから。
けどもし戦果が著しく、可能ならば施設を占拠して保護する事も考えられるけど、そこは戦況次第。
現在“ソメイヨシノ”には僕の“ワルキューレ”も搭載してもらっている。そう、僕は今回のこの作戦に参加しようとしていた。
自ら危険な事をしている自覚はあるし、わざわざ僕が出ていかなくてもと思う。
けど、この作戦が上手くいけば施設を占拠して、敢えてこの表現を使うけど、収容、されている人達を保護できる。
そうする事でカスタマイザーの絶対数は減らす事が出来る。戦士として完成する前にその芽を摘むことが出来るのであれば、その手段を取るべきだと思う。
施設にはレイズの息がかかっている可能性があるというし、何より“ワルキューレ”には身を隠す為のA.F.C.マントがある。
“ライオウ”との模擬戦から時間も経っているので少し改良も施してある。
例えば降下用のパラシュートなどに用いられていた光学迷彩加工。それを施してあるからより敵機に発見されにくくなったし、何より“ワルキューレ”という機体だとわかりづらく出来る。
あの模擬戦以来、“ワルキューレ”にもいくつか手を加えた。
整備や技術開発に時間を割けるようになったのは“リュウグウ”にいた研究員と合流出来た事によってニウライザ開発が一気にすすんだからだ。
そして、そろそろ僕の手も必要無くなる頃。
この作戦がどう転ぶか分からないけど、アメリカに、リオの元に帰れる日も近いかも知れない。
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